2019.05.19

The 52nd annual meeting of the JSDB by Tzu-Chuen Lin

Tzu-Chuen, Lin
(Dept. of Anat. & Cell Biol., NTU, Taipei, Taiwan)
52th annual meeting of Japanese Society of Developmental Biology (JSDB) is scheduled to hold in Osaka International House through May 14-17, 2019. The place it held was very kindly for scholars to have chances to choose other living places in Osaka, because it is close to two stations, Osaka Metro Tanimachi Line Shitennoji-mae Yuhigaoka station and Kintetsu Railway Osaka Uehommachi station. JSDB cooperates with Asia-Pacific Developmental Biology Network (APDBN), so there are many Asia-Pacific Areas experts, scholars, or students in this area of developmental biology participating in the meeting. Apart from Asia, lots of scholars from all around the world such as the united states, Canada, and Europe also have academic publications.
I am now a graduate student from graduate institute of anatomy and cell biology, National Taiwan University. This time, I took part in the poster presentation. The topic of my poster is about the expression patterns of neuronal intermediate filament α-internexin in the developing pineal gland of Hoplobatrachus rugulosus. The result of our study showed that photoreceptor marker, recoverin and XAP1, could be observed in the development of both retina and pineal gland of frog. The expression of recoverin decreased slightly following the developmental pineal gland, while the expression of XAP1 increased a little from our observations. Whereas, the α-internexin-like protein, ina.S and nif.S, could be detected only in few photoreceptor-like cells at the early stage pineal gland. In conclusion, we suggested that XAP1 is a good marker for studying the photoreceptor cells in the developing pineal gland of frog.
This May, I participated in the 52th annual symposium held by JSDB in Osaka and it is quite different from other meetings I have joined in Taiwan. It is also my first time to go abroad to take part in an international meeting. It really means to me. Through this event, I learned a lot from many outstanding scholars who work hard in various developmental fields all over the world and this widened my views. Finally, I really appreciate that JSDB can keep using APDBN as the platform continuously invited scholars from related fields in Taiwan or even worldwide to participate in the annual meeting in Japan. It will make a significant contribution to the long-term development of academic exchange between Taiwan and Japan.
2019.04.17

2018合同大会 若手最優秀賞 ミーティング見聞録 佐奈喜祐哉(京都大学)

佐奈喜祐哉(京都大学生命科学研究科)
2018年度 若手最優秀賞の副賞として助成金を頂き,2018年12月から2019年2月まで共同研究のためフランス・パリにあるキュリー研究所に出向しましたのでご報告します.
 キュリー研究所はノーベル賞受賞者のマリーキュリーが立ち上げた研究所で,来年で創立100周年を迎えます(同ノーベル賞受賞者で,夫のピエールキュリーは研究所創設前に交通事故で亡くなっています).ご存知の通り,キュリー夫人は放射能の研究で1度目のノーベル賞を受賞しています.このノーベル賞がきっかけとなり研究所が設立され,当初研究所の目的は放射能研究がメインだったそうです.その後,放射線ががん治療に有効であることが発見され研究所のミッションは徐々にがん治療に移っていきます.現在では,キュリー研究所のミッションはがん研究,およびがん治療に大きなウエイトを持ち,病院部門と研究部門が設置されています.病院部門はがんの専門病院として知られ,特に小児がんの治療実績が有名なようです.私が出向したのは研究部門の一つである発生/がん生物学に特化した部門です.Webページを見てみると,ここには10のラボがあるのですが必ずしもがんと関連のない基礎研究をメインとしているラボが多いようです.個体発生で見られる細胞増殖や細胞分化を理解することで,将来的にがんをコントロールすることに役立てば良いというのが理念だそうですが,各々の研究プロジェクトにがん治療を明示的に出すことはなく,その必要もないそうです.つまり,研究所の目的に沿うために研究をするというよりは,それぞれの研究室もしくは研究者が自由に研究を進め,生命の理解を深めることが一番重要なようです.がんの理解や治療を目指している研究所にも関わらず,がん研究に集中しななくても良い,無理矢理でもがんに関連させる必要がないというスタンスに感動しました.基礎研究によって人類の持つ知識のすそ野を広げることで,将来的にはがん治療などの応用につながるという考えが研究を進める側でも,資金を提供する側でも,当たり前に受け入れられているようです.
研究所の至る所でキュリー夫人を見かけ,写真のようなおしゃれなポートレートや銅像などあらゆる形態で登場する.どのキュリー夫人も笑みはなく,しっかり研究を進めろと言っているような気がする.

 また現所属とキュリー研究所での大きな違いは,セミナーの多さです.研究所やユニットでは毎週2?3つのセミナーや小規模な学会が開催されていたので,その気になれば1週間丸々セミナー漬けにすることも可能です.それぞれのセミナーの内容は,基礎研究から,がんの臨床まで様々なものが開かれていました.滞在中一番面白かったセミナーは"Evolution and Cancer"と銘打たれたもので,がんのクローン進化と薬剤耐性を関連づけた話や,どの動物種ではがんが起こるのか/起こらないのかを論じるトークなど,ここに書ききれないほどバラエティ豊かな視点からがんを理解する場になっていました.総じて感じたことは,普通の研究所では自然と抱いてしまう基礎研究とがん治療のギャップを埋めるように,もしくはそもそもそのようなギャップを抱かせない環境を作るよう研究所自体が運営されているのかも知れません.ともあれ,一つの研究所,一つの研究室で基礎研究と応用研究が自然に融合している姿を目の当たりにして,がんの基礎研究に興味のある私としては贅沢な場に身を置けたと感謝するしかありません.
右奥のガラス張りの建物が所属するキュリー研究所のユニット.右手前は別の生物系研究所,左は化学系の学校で奥は地学/海洋学の学校.キュリーのあるパリ5区では,ちょっと歩くと頻繁に何かのラボを見かけます.伝統的なヨーロッパ建築だな,と思って建物の中を見るとウエスタンブロットをしていたりして面白いです.

 2ヶ月間フランスで過ごしてみると,日本とフランスでは研究室/研究所の運営方法にいくつか違いがあることに気づきました.日本の大学や研究所では,同じフロアにいくつか研究室が入っていると思いますが,同じフロアの研究室に関連性は特にないかと思います.そのため,隣のラボの人と実験中に頻繁に顔をあわせることは少なく,飲み会や学会などでちょっと見かけるくらいなのではないかと思います.一方,キュリー研究所では同じフロアに同じモデル生物を使うラボをまとめていて,新しいPIをリクルートする際にも今の研究所との親和性が大きな評価ポイントになっているそうです.同じモデル生物でまとめられるからこそ,フロア内に共通の設備を設置し,実験中に他のラボの人と顔をあわせるタイミングが頻繁にありました.例えば,私はショウジョウバエのラボに所属していて,ハエの実験では麻酔台と実体顕微鏡のセットが必ず必要になります.キュリー研究所では,このセットが十数台設置されたFly roomがあり,そのフロアのラボ全員がこのハエ部屋に集まり実験をしています.また,DNAやタンパク質の泳動ゾーンも一角にまとめられていて共通設備として使われていました.この運営方法は非常に合理的で,一つ一つのラボが同じ設備を持つと生じてしまう設備利用の機会ロスが極端に少なくなっています.さらに別の利点としては,他のラボの人でも誰がどんな研究をしているのかなどの会話に発展しやすくディスカッションが生まれやすい,また実験のちょっとしたコツなどもすぐ教えてもらえるので,しょうもない実験のミスでプロジェクトが停滞することを防げているのかも知れません.日本の大学でも共通機器がありますが,ものを共通にするだけでなく,その機械を使う人,同じような実験をしている人が集まる場所や環境を作ることで,金銭的にもプロジェクト的にも効率的に回るよう配慮されているのかも知れません.
 逆にフランスの運営方法の欠点としては,行える実験操作が制限されてしまうことがありました.私の場合,無菌操作をしたかったのですが通常のハエラボではクリーンベンチがないため,実験が完全にストップしてしまいました.一つ下の階には細胞培養をしているラボがあったのですが,細胞培養をしているという資格がないと入れない部屋に設置されているためクリーンベンチだけを借りるということはできませんでした.新しいクリーンベンチを購入しようにも,ベンチを置く場所が所内のどこにもないという,困った事態に遭遇しました.日本の出身ラボでは,幅広く研究を進められるような環境だったので,使いたい機材が利用できず研究が止まるようなことはなく,もしラボに機材がなくても隣のラボにお願いして借りることができました(大変お世話になりました).フランスでは研究所内を合理的に運営するあまり,余裕というかスキがなくプロジェクトを発展させる機会を失っているのかもしれないと感じました.
最後になりますが,今回の渡航を通して,とても多くの方にお世話になっていると気づきました.指導教員の井垣達吏博士,細胞生物学会/発生生物学会の皆様,共同研究を受け入れてくださったピエールレオポルド博士に感謝いたします.滞在中,PIのピエールに関する印象深かったエピソードは,私が少しお金のかかる実験をしてもいいかと聞いたときに,「お前のやりたいことを好きなだけやれば良い,そのためにラボがある」と言われたことでした.かなり放牧主義ですが,自由に研究を進められて,かつポイントポイントでアドバイスをくれる.熟練PIとはこういうものかと印象深かったです.また,細胞生物学会/発生生物学会を運営された先生方に深く感謝し,今後ますますのご発展をお祈りします.将来,発表する立場ではなく運営に携われるようになれればと思いながら,フランスで研究を進めていきたいと思います.
2018.10.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 仝 由悦(東京大学)

東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
動物発生学研究室 修士課程2年
仝 由悦
この度、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成を頂きまして、10月10日―10月13日にドイツで開催された日独合同若手ミーティングに参加致しました。テュービンゲンにてDay 0ワークショップが行われ、続いてウルムで行われたGfe School 2018 に参加しました。

テュービンゲンはドイツ南部に位置し、人口約8万人のうち3万人程を学生が占める古くからの大学都市です。昔ながらの建物が多く現存し、伝統的な街並みが広がっています。Day0 workshopは、テュービンゲンにあるマックス・プランク研究所で行われました。Patrick Muller先生の研究室にお邪魔し、3つのグループに分かれてローテーションしながら、ゼブラフィッシュ飼育施設の見学、ライトシート顕微鏡による撮影、FRAP解析などを体験しました。

 ゼブラフィッシュ飼育施設は、建物の別館一つを占める大規模なものでした。かつてDevelopment誌1冊を占めた、歴史的なゼブラフィッシュ大規模スクリーニングが行われた場所で、まさにこの部屋でその研究が行われたのだと想像すると、感動に似た不思議な気持ちでした。また、自動フィーディング・マシーンを導入した新施設も案内して頂きました。魚の水槽に張られたバーコードを機械が読み取り、成魚と幼魚で餌のやり分けもできるそうです。魚が元気にしているかどうか毎日チェックすることが義務付けられているとのことで、高度にシステム化されていながらも実験動物を大事にする気持ちを改めて確認させられました。確かに、どの水槽の魚も元気に泳いでいて、その生き生きとした姿は心に残りました。

 ライトシート撮影とFRAP解析では、実際に顕微鏡の操作を体験し、それぞれ自作の3D画像構成ソフト、FRAP解析ソフトについて教えて頂きました。特にFRAPは教科書や論文で馴染みの手法でしたが、今回初めて実際の実験をやりました。ゼブラフィッシュ初期胚を模した、こちらも自作のプレートに蛍光試薬をマウントして、FRAPをかけました。実験の道具から解析ソフトまで、必要なものは何でも自作する精神に、以前に聞いた南極観測隊・医療隊員の先生のご講演が思い出されました。南極で学んだ最も大事なことは、足りないモノは何でも自分で作ってしまえばいい、という内容のお話でした。「○○が無ければ、作ればいい。」研究にこそ、この精神が大事だと実感しました。

 Gfe School 2018は、テュービンゲンから電車で2時間ほど離れたウルム郊外にあるSchloss Reisensburgで行われました。Schloss Reisensburgはウルム大学付属の古城で、参加者60人程の合宿形式で、アットホームな雰囲気の中で密度の濃い議論が繰り広げられました。

"Imaging and Modeling Development"をテーマに、3日間に渡り数多くの研究が紹介されました。イメージングの手法や使い方、モデリングとの華麗な合わせ技など、参考になるお話がたくさんありました。メダカやゼブラフィッシュの側線の特徴的なパターンが形成される過程の解明、多数のサンプルを1時間足らずで一気に観察できる手法、目的の組織に到達後もせわしなく動き続ける始原生殖細胞の挙動など、興味深い発表を上げるとキリがありません。また、これまで馴染みの薄かったヒドラやトリボリウムといった生物を扱った研究も印象的でした。一日目と二日目の最後にはポスター発表が行われ、いつも日付が変わる時間まで熱い議論が続きました。私はGfe Schoolの二日目に、"Live-imaging and 3D analysis of zebrafish somite morphogenesis"というタイトルでポスター発表を行いました。色々な方から、細胞レベルの挙動や分化から組織レベルのエネルギー消費や代謝まで、様々な観点からの意見を頂けて、とても勉強になりました。専門の内外問わずどのような話にもついてこられる知識の広さとディスカッション力に圧倒されるとともに、全身でサイエンスと向き合い、楽しむ姿勢にエネルギーをもらったような気がしました。

ワークショップ・ミーティングを通して、新たな学問や手法について知ったり、ドイツの研究者の方々との交流を通してドイツの文化や研究を体感したり、貴重な経験となりました。今回得られた数々の発見や気づきは今後研究の道に向かって進んでいく中で必ず生きてくると思います。来年の発生生物学会では同様な日独若手ミーティングが開かれるそうで、今回知り合った方々と再開するのが楽しみです。

最後になりましたが、このような貴重な機会を頂き、ミーティングを主宰された上野先生、Cantas先生、森本先生、発生生物学会の皆様そして岡田先生に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
2018.10.25

岡田節人基金 海外派遣報告書 間瀬俊(理化学研究所BDR)

理化学研究所生命機能科学研究センター
博士後期課程4回生
間瀬 俊
この度は岡田節人基金若手研究者海外派遣助成に採択いただき、2018年10月10~13日にドイツで行われた「日独合同若手ミーティング(JSDB-GfE young scientist exchange program)」に参加して参りました。このミーティングは、日本発生生物学会(JSDB)とドイツ発生生物学会(GfE)が今年新たに始動させたもので、互いの国の大学院生や若手研究者が交流する場を設け、将来にわたって日独の研究交流の場を充実させることを目指す、記念すべき第一回目の会でした。今年は日本から11名の若手が渡独し、来年2019年5月には、かわってドイツの大学院生・若手研究者を日本に招き、大阪で行われる日本発生生物学会の会期の前後に同様の合同若手ミーティングを行う予定だそうです。これから始まる、日独の学生が互いに相手国を行き来しながら研究交流をする、素晴らしい試みの第一歩に参加することができ、大変光栄な思いです。

今回の旅程は、ドイツ南部のチュービンゲンにあるMax-Planck Instituteで1-dayワークショップに参加し、次いでミュンヘン近くのGunzburgで行われる日独合同若手ミーティングに3日間参加するというものでした。

はじめに、フランクフルト空港での入国審査であった小話をします。入国審査官に目的地を聞かれ、チュービンゲンに行くのだと伝えると「To study?」と聞かれました。そんな感じだと答えましたが、ふと、このような質問をされるような、学術都市として広く認知されている場所が日本にもあるだろうかと思案しました。聞くところによるとチュービンゲンの人口9万人のうち3万人が学生で、先の大戦の戦禍を免れた伝統ある学術都市だそうです。近代的な研究都市である日本の「つくば」ともだいぶ趣が違いました。ドイツの学術の歴史の一端に触れた瞬間でした。

チュービンゲンのホテルに一泊したあと、日本からの参加者と顔合わせをしながら朝食をとり、1-dayワークショップへ向かいました。このワークショップはMax-Planck InstituteのPatrick Mullerグループリーダーのラボの皆さんの厚意で提供された研究体験コースで、3つのイベントを体験しました(ライトシート顕微鏡の体験、FRAP(光褪色後蛍光回復)の体験、ゼブラフィッシュの自動飼育施設見学)。これらの体験は全てPatrickのラボの大学院生が指南役となり教えてくれました。
 はじめにライトシート顕微鏡を使ってゼブラフィッシュの個体全体を高速でライブイメージングする手技を習い、サンプリングから撮影までを体験させてもらいました。サンプルの定位のために蛍光ビーズ入りのアガロースにサンプルを包埋し、自作したソフトウェアを使って4Dイメージを作成する流れを実際に教わり、私自身の研究にも応用できる着想を得ました。
 次にFRAP法で蛍光物質の拡散係数を求める実験を体験しました。使用したZeissの顕微鏡ソフトウェアにはFRAP実験用のモジュールが入っていますが、それは使わずに画像だけ取得し、Patrickラボで自作したソフトウェア(PyFRAP)を使用して詳細な解析をします(Blasle et al., Nat Commun., 2018)。メーカー提供のものに頼らず、必要なものは自作していく姿勢が伺えました。
 最後に歴史あるゼブラフィッシュの飼育施設を見学しました。このキャンパスには1980年代半ばに作られた、当時世界最大のゼブラフィッシュの飼育施設があります。この施設は1995年のノーベル 生理学・医学賞の受賞者の一人であるChristiane Nusslein-Volhardが主導して設立しました。ここで行われた大規模な変異体スクリーニングの成果は、1996年12月のDevelopment誌 Vol.123 に25本の論文を同時掲載するという偉業につながった歴史を知ることができました。今では施設規模がやや縮小されているものの、給餌のオートメーション化が進められており、餌の種類や量、タイミングなどをプログラムできるようになっていました。現在でもこの施設を有効に活用して新しい研究を進めている、過去から未来へ繋がる時代の流れを感じ取ることができました。
 夜はPatrickとPostdocのKatherine、上野直人先生、近藤滋先生、Canvas Alev先生、森本充先生と日本人参加者の一行で、木の香りのする素敵な居酒屋でディナーをいただきました。食べきれないほどたくさんのソーセージや名前のわからない料理たち(色は基本的に黄色か茶色)の乗った大皿を囲み、1Lのビールジョッキを片手に参加者それぞれの生い立ちの話から、「AIを作った人間が、その中身が理解できてないって何やねん」という学者らしい(?)話まで、「食事が終わってからも席を占拠してだらだらと話し続けるのがドイツの伝統だ」という嘘かホントかわからないジョークを聞きながら、楽しい夜が更けていきました。

翌朝はチュービンゲンのダウンタウンを現地ガイドに案内してもらいました。学術都市として発展してきた町の歴史を聞きながら、ハイライトは高台のホーエンチュービンゲン城内にある博物館で、チュービンゲン大学の生化学者であるJohannes Friedrich Miescherが1869年に豚の胃から核酸を初めて精製して命名(ヌクレイン)したことにまつわる展示を見学しました。自作された豊富な実験器具・測量機器を目の当たりにして、クラフトマンシップというか、厳格に目の前のことに打ち込む気質を感じ取りました。

午後は鉄道でミュンヘン近くのGunzburgに移動し、日独合同若手ミーティングの会場である古城Reisensburgへ行きました。聞けばこの古城はウルム大学が1997年より所有していて、学会や会議の場として使用しているそうです。歴史ある石造りの古城の構内で3日間、現代科学の研究発表を聴くという貴重な体験をすることができたことに感動しています。
 今回のミーティングのテーマは「発生現象のイメージングとモデル化」でした。私はNotch1受容体の細胞内イメージングに取り組んでいますが、今回30あった口頭発表の中には、いくつかNotchシグナルを介したパターン形成のモデル化に取り組んでいるものがあり、改めて生命科学の多様な研究対象が有機的につながりあっていることを実感できました。
 この会期中には60人ほどの全参加者が同じ食堂に集い3度の食事を取るため、「毎日5人と新しく知り合い会話を楽しむこと」という目標をGfEのオーガナイザーから与えられたこともあり、たくさんの大学院生やPostdocと交流し、彼らの人柄や大学院での研究環境、将来展望などを聞くことができました。日本とは異なり、ドイツはアカデミアとインダストリーの間の行き来が盛んであるため、彼らが柔軟に(楽観的に?)将来の進路を考えていることや、ドイツのどこの大学に行っても一定水準の予算があるため独創的な研究を進めていくことができることなどを聞き、ドイツの研究環境の強みやしなやかさを認識しました。日本の科学界に散見される、捨て身タックルに見えなくもない一点豪華主義的な「選択と集中」が、他国のシステムの良いところを吸収して改善されていけばいいなと思いました。

今回のミーティングに参加した目的の1つであった、共同研究先を見つけることは叶いませんでしたが、初めのワークショップで画像取得・解析手法に学びが得られたことや、ドイツの活気溢れる若手研究者と個人的なつながりを持ち、ドイツの研究社会への理解が得られたことは大きな収穫でした。ここで得られた学びや気づきは、今後の私の進路で出くわす国際交流の場で必ず生きてくると自負します。

末筆となりますが、このような素晴らしい機会と助成を提供して下さいました上野直人先生をはじめとする日本発生生物学会の関係者の皆様、移動の列車の中で地政学の面白さや日本の科学界について語ってくださったCanvas Alev先生、そしてこのミーティングの参加を後押ししてたくさんの面倒を見てくださった森本充先生に深い感謝の意を表します。有り難うございました。
2018.10.25

岡田節人基金 海外派遣報告書 羽田優花(東京大学)

東京大学大学院 医学系研究科
分子細胞生物学専攻(代謝生理化学分野)
博士課程1年 羽田優花
<はじめに>
今回私は、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成をいただき、10月10日のワークショップと、10月11日~13日の第12回GfE Schoolから成る日独合同若手ミーティングに参加した。初めてのヨーロッパ、初めてのドイツだったので出発前から心躍る思いと緊張感があった。異なる都市間の移動に不安もあったが、森本先生をはじめ他の先生方や参加者のおかげで複雑な路線を間違えることもなく行動することができた。今回、Max PlanckでのワークショップとGfEミーティングを含む全日程の中でTubingenとGunzburgとMunchenの3都市を回った。どの都市でも何百年も前に建てられた石造りの建物が一部改築されて未だに市民の生活の場として使われていることに驚いた。GfEミーティングの会場もUlm大学が所有する古城であり、大広間の絵画や見張り台からの景色を見てタイムスリップしたような心地を覚えた。

<ワークショップ>
Max PlanckのPatric Muller先生の研究室を訪問した。参加した日本人約10名が3組に分かれ、コンフォーカル顕微鏡を用いたFRAPのイメージングの体験、Light sheet顕微鏡を用いたゼブラフィッシュ胚の4Dイメージングの体験、ゼブラフィッシュの飼育場の見学をし、その後Pythonを用いたプログラミングを体験した。私にとっては見たこともない顕微鏡装置や施設ばかりで非常に刺激的であった。また、日の光が差し込み開放感あふれる研究棟内の美しさにも感動した。

<GfE School>
イメージングと数理モデリングというテーマで開催され、全体の参加人数は60名弱であった。30のトーク発表と22のポスター発表があり、1日目と2日目は朝の9時から夜の8時半までトークセッション、その後日付を超えるか超えないかくらいまでポスターセッションという、パワフルで密なスケジュールだった。

3Dまたは4Dでのイメージングが可能で、かつ、遺伝学的手法が使えるゼブラフィッシュやショウジョウバエをモデル生物とした研究や培養細胞を用いた研究が多くみられた。ニワトリ胚を用いたイメージングの話も聞けるかと思っていたが、ほとんどなかったのは意外で、少し残念だった。
私は胚操作後も生きたまま観察が可能な鳥類胚を用いて心臓発生についての研究をしており、羊膜と由来が同じ領域から心臓に寄与する新規細胞系譜に着目した解析についてポスターで発表した。細胞追跡のためにイメージングを試みているが、ニワトリ胚の大きさが大きすぎることもあって細胞1つ1つに着目した動きまでは観察できておらず、他の発表者のデータと比べて解像度の違いにため息が出た。また、私は分化過程の解析には主にシングルセルトランスクリプトーム解析を用いているが、この手法を用いた発表がほとんどなかったので、あまりなじみがないであろう人たちが私の研究についてどのような意見を持つのか、不安と興味があった。全体的には好意的な意見をいただくことができたが、今回初めて話した人からの新鮮な意見をきいて、初心に立ち返り本当に面白いと思う現象は何かを考えると、まだ見ていないこと、見るべきことが多くあることに気付かされた。
日独問わずイメージングを行っている研究者の発表では、目的をぼんやりした大きなものではなくて、ある具体的な現象の理解に定めたうえで、画像から得られた情報を深く追求することで論理を提唱していく姿勢が印象的で、非常に美しい論理展開が繰り広げられていた。私自身の研究でも、1つの現象についてとことん観察することで見えてくることがまだ多くあるような気がした。

ドイツ側からのGfEミーティング参加者はドイツの研究機関に所属している人はもちろん、チェコ、スイスなどの近隣国やカナダの研究機関に所属している人もいた。チェコから来た方の参加動機を尋ねたところ「近藤滋先生の話を聞くため」とのことだった。これまで日本とのジョイントミーティングは滅多になく、実際に話を聞くことができるのは貴重な機会だからと言っていたが、私はわざわざ国を超えてまで参加するのかと驚いてしまった。一方、別の参加者から、「ヨーロッパ諸国では頻繁にジョイントミーティングが開催されるが、アジア諸国はどうか」と聞かれた。私自身はアジア諸国のミーティングに参加した経験がなく、たとえアジアであっても日本国内ではない学会に参加することには少しハードルを感じてしまう。しかし、もしかしたらヨーロッパの人たちにとってヨーロッパ内でのミーティングに参加することはごく自然なことなのかもしれないと思った。自分の視野の狭さを思い知るとともに、彼らの情報収集能力と勉学への熱意、また、英語を母国語のように操る、密な情報交換の現場に圧倒される思いがした。

<謝辞>
このような貴重な体験をさせていただいき、本ミーティングを企画してくださった発生生物学会の先生方や関係者の皆様、そして故岡田節人先生に心より感謝申し上げます。来年の京都・大阪での日独合同ミーティングの成功も祈っております。
2018.07.19

The 51th annual meeting of the Japan Developmental Biology Society by CHEN-MING HAO

CHEN-MING, HAO
This year's Japanese Society of Developmental Biology, JSDB) is scheduled to hold its 51th Annual Conference and Asia Pacific Development in Funabori, Edogawa Ward, Tokyo from June 5th to 8th (Figure 1&2). Meeting place located at the center of community activities, it is very close to the Toei Shinjuku Line Funabori station, and it is convenient for scholars from other places. Japanese Developmental Biology Society cooperates with Asia-Pacific Developmental Biology Academic Network Conference, Many Asia-Pacific Areas experts, scholars, or graduate students in the area of developmental biology are happy to participate in the study. Apart from Taiwan, a lot of countries such as the united states, Australia, South Korea and Singapore also have academic publications.
For me, Chen-Ming, Hao, as a graduate student from National Taiwan University, I took part in the poster session (Figure 3&4). The subject of my poster is about the the expression pattern of neuronal intermediate filamentα-internexin in the chicken developing pineal gland. The results demonstrated that the expression of chkINA was detected in early stage of pineal gland and decreased following the development of pineal gland. We found that some chkINA immunopositive photoreceptor-like cells were also Visinin immunopositive. chkINA and Visinin co-exist in photoreceptor-like cells was demonstrated in the chicken pineal gland by confocal images. We conclude that chkINA could be a useful photoreceptor-like cells marker to be applied for the study of chicken pineal gland.
This year, I participated in the 51th Annual Symposium held by the Japan Developmental Biology Society and felt that the integration of academia and the international community invited scholars from all over the world are outstanding in the field of developmental biology. This shows the degree of academic internationalization in Japan. From this event, I believe that through this opportunity for students to attend international academic seminars, they can learn to study in many different fields about scholars' attitudes and intentions for academic research. Finally thanks to the Japan Society for Developmental Biology and can continue to use Asia Pacific Developmental Biology Network as the platform continuously invited scholars from related fields in Taiwan to participate in the organization in Japan. It will make a significant contribution to the long-term development of academic exchange between Taiwan and Japan.
This year's Japanese Society of Developmental Biology, JSDB) is scheduled to hold its 51th Annual Conference and Asia Pacific Development in Funabori, Edogawa Ward, Tokyo from June 5th to 8th (Figure 1&2). Meeting place located at the center of community activities, it is very close to the Toei Shinjuku Line Funabori station, and it is convenient for scholars from other places. Japanese Developmental Biology Society cooperates with Asia-Pacific Developmental Biology Academic Network Conference, Many Asia-Pacific Areas experts, scholars, or graduate students in the area of developmental biology are happy to participate in the study. Apart from Taiwan, a lot of countries such as the united states, Australia, South Korea and Singapore also have academic publications.
For me, Chen-Ming, Hao, as a graduate student from National Taiwan University, I took part in the poster session (Figure 3&4). The subject of my poster is about the the expression pattern of neuronal intermediate filamentα-internexin in the chicken developing pineal gland. The results demonstrated that the expression of chkINA was detected in early stage of pineal gland and decreased following the development of pineal gland. We found that some chkINA immunopositive photoreceptor-like cells were also Visinin immunopositive. chkINA and Visinin co-exist in photoreceptor-like cells was demonstrated in the chicken pineal gland by confocal images. We conclude that chkINA could be a useful photoreceptor-like cells marker to be applied for the study of chicken pineal gland.
This year, I participated in the 51th Annual Symposium held by the Japan Developmental Biology Society and felt that the integration of academia and the international community invited scholars from all over the world are outstanding in the field of developmental biology. This shows the degree of academic internationalization in Japan. From this event, I believe that through this opportunity for students to attend international academic seminars, they can learn to study in many different fields about scholars' attitudes and intentions for academic research. Finally thanks to the Japan Society for Developmental Biology and can continue to use Asia Pacific Developmental Biology Network as the platform continuously invited scholars from related fields in Taiwan to participate in the organization in Japan. It will make a significant contribution to the long-term development of academic exchange between Taiwan and Japan.
2017.10.06

夏季シンポジウム2017 参加報告書 宇佐美文子(基生研)

基礎生物学研究所
宇佐美文子
今年、夏季シンポジウムに初めて参加し、学会とは違った雰囲気に驚きました。参加者は学生と教授がほぼ同数で、会場も人数に合ったサイズで学生と先生方の距離が非常に近かったです。そのためか、普段の学会よりも密な議論が学生間でも、学生と教授の間でも行われていたように思います。

他の学生の発表を聞き、研究の幅を感じたとともに、彼らの研究のクオリティ、発表のクオリティに驚き、自分ももっと頑張らなければと思いました。最近、友人のほとんどがアカデミックの世界を諦め、企業へ就職することを決めており、私は「アカデミックの世界に残りたい」という気持ちと、「本当にやっていけるのか」という不安を抱いていました。ですが、今回の夏季シンポジウムで、私と同じように高校の時に「研究者になりたい」と思ってここまで来たという子にも出会い、意見交換できたことで気持ち的に大きく前に進めました。そして、これまでの自分を振り返り、初めて発生生物学を学んだ時のわくわく感を思い出し、自分はまだ研究者になることを諦めるほど努力していないということにも気づきました。これは、この会で得た最大の収穫であったと思います。

また、年齢が違っていても言いたいことを言い合う先生方の仲の良さを間近に感じ、その関係を羨ましく思いました。厳しい世界をともに生き抜いて来た仲間だからこその関係であると思います。私もそういう仲間を作っていきたい、いつか先生方の輪にも入れたらいいなと強く思います。

来年の発生学会で、今回出会えた仲間と再び会えるように、成長した姿が見せられるように頑張ろうと思います。

最後に、この会を主催していただいた黒川先生、アドバイザーの先生方、三崎臨海実験所の皆さま、陰ながらいつも支えてくださる桃津さん、日本発生生物学会の皆さまに心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
2017.10.04

夏季シンポジウム2017 参加報告書 植本俊明(東北大学)

東北大学大学院 生命科学研究科
博士後期課程1 年
植本俊明
今回、日本発生生物学会の旅費支援をいただき、東京大学付属の三崎臨海実験所で行われた夏季シンポジウムに参加しました。シンポジウムには幅広い分野の研究者が参加し、3 日間という短い期間でしたが、非常に濃い時間を過ごすことができました。

 今回のシンポジウムでは口頭発表に30 分間の発表時間が設けられ、普段の学会とは異なる発表時間に緊張しましたが、研究背景の説明をしっかり行えたことで、発表後の質疑応答では充実した議論をすることができたと思います。また、様々な分野の研究者に自分の研究を聞いてもらい、多角的な視点からの意見をいただくことで、広い視野を持って研究に取り組むことの重要性を実感しました。

 他の参加者の研究発表についても、発表時間が十分に確保されていたおかげで研究背景をしっかりと聞くことができ、分野が異なっていても多くの議論を交わすことができました。今回のシンポジウムでは、修士からポスドクまでの研究者が発表を行い、自分に近い世代が取り組んでいる研究を聞くことで、私自身も研究を頑張ろうという気持ちになりました。また、お互いの研究を紹介し合うことが話をするきっかけとなり、このシンポジウムを通じて多くの分野の研究者との繋がりを作ることができました。懇親会では、参加者がみな打ち解けた雰囲気になり、先生方からは研究の苦労話や、これからの研究の進め方などの助言をいただきました。

 全日程を終えると、今回のシンポジウムに参加したことは、非常に良い経験であったと感じています。シンポジウムの開催を知った時には、内容や雰囲気がわからず、参加を躊躇っていましたが、将来のためにきっと役に立つと考え、参加を決めました。実際に参加してみると、会の雰囲気はとても楽しく、そして研究が大好きな人達が集まっているのだと感じました。シンポジウムへの参加を迷っている方には、ぜひ参加をお勧めいたします。

最後に、このような機会を設けていただいた運営側の方々に深く感謝申し上げます。
2017.10.04

夏季シンポジウム2017 参加報告書 江川史朗(東北大学)

東北大学 生命科学研究科 田村研D3
江川史朗
単刀直入ですが、今回のシンポジウムは成功だったというのが、私を含め参加者全体の感想だと感じました。しかしながら、将来に向けた課題をホストと参加者で議論した結果、会の内容や雰囲気が参加してみるまで分からないことや、それに伴う参加への心理的ハードルが不本意に増幅されてしまっていることが、コンセンサスとして挙がっていました。よって、微力ながら将来参加を検討される方にとって何か役に立ちそうな情報を書かせていただきます。

(1)参加者の背景
私は、恐竜で"普通の生物学"をやることを試みています。私は幼い頃より恐竜の運動器官(主に手足など)の機能美に惹かれていたのですが、大学院を選ぶ段になって、石よりも生物が好きだった為に地質系の研究室に進学した場合の未来をどうも上手く思い描けないでいました。そんな時、発生生物学者が恐竜の研究を行っていたり、恐竜の研究者が発生生物学へ進出したりするニュースを耳にしました。これを好機と感じて発生生物学教室の門を叩き、形態進化の興味に基づいて発生生物学的研究を行っております。メインの手法は鳥類と"爬虫類"胚を使った非常に古典的な"切った貼った"の実験発生学です。

(2)参加してみた感想
普段は組織レベルでしか研究を行わない・議論の中心が進化になってしまう私にとっては、その生物学的に解像度の高い議論に刺激を受けるなど、発生生物学の"本流"に触れることで自身の考えを相対化できました。また、懇親会でも先生方は気さくにご歓談下さり、研究をする際の目の付け所など若い研究者が欲する話を惜しまずに話してくださいました(その後、腕相撲もしました)。加えて、同年代の研究者とも少し込み入った話ができたことやコネクションを作れたことも今後の研究生活を大幅に発展・強化してくれるものと感じております。このあたりの事柄が何よりの報酬だと感じております。

最後に、貴重な機会を用意してくださった運営側の皆様に深く感謝申し上げます。
2017.07.21

岡田節人基金 海外派遣報告書 東島沙弥佳(大阪市立大学)

大阪市立大学大学院 医学研究科
器官構築形態学(第2解剖)
助教 東島 沙弥佳
成果の概要 
 今回私は岡田節人基金より若手研究者海外派遣助成を頂き、第18回国際発生生物学会 大会 (The 18th International Congress of Developmental Biology) に参加すべくシンガポールへ赴きました。私は "Tail reduction process during human embryonic development" と題し、ヒト胚発生過程では一度形成された尾部が体節数の急激かつ著しい減少を伴って退縮することについて、ポスターで報告しました。関空から6時間ほどで到着した開催地、シンガポール。飛行機から降りるなり全身を包む熱帯らしい蒸した空気に、東南アジアを色濃く感じます。2017年6月18日から6月22日の5日間、600人を越す参加者がシンガポール国立大学に集いました。この蒸し暑い国で、わんさと集まった発生の研究者とアツい議論でも交わせるだろうかと、早朝のシンガポール、寝不足の頭で考えながら私の学会は始まりました。今回の学会に参加し得られた重要な成果は、自身の研究がもつ意義の再認識と、論文化に向けてのモチベーションを再獲得できたことです。
 ...と、このように真面目に、型通りな報告文を書くことは容易い。参加した学会を誉め称えるのも容易い。だがしかし、それではおもしろくないし正直でない部分もある。せっかく貴重な助成を頂いて参加をした訳だから、ここでは思ったところや感じたところをできるだけ正直に報告しようと思う。その方が、後進に役立つ情報となることだろう。

第18回国際発生生物学会大会について
 本大会は4年に1度開催される国際大会で、演題を申し込んだ頃は、同頻度で開催されるオリンピックよろしく、さぞ盛大でおもしろい学会なのだろうと妄想を膨らませていた。でも会期が近付いてくると段々、気になる点が目立つようになってきた。たとえば、プログラムを見てみると、口頭発表がやたら少ない。会期が5日間もあるというのに、口頭発表は全部で80題ほどである。ほとんど欧米からの招待演者なのではないかという考えがふと頭をよぎる。口頭発表がこれほど少ないということは、その分ポスターが滅茶苦茶多いのではないか。...まさか有名どころからのご指導トークと、有象無象のポスター発表という構図なのか、と、考えているうちに日が過ぎた。会期がさらに迫る。プログラムによると昼飯時(12時-14時)と夕飯時 (19時-21時) がポスターセッションにあてられているようだが偶数奇数のコアタイムについては不明。さらに、かなりタイトなポスター貼り替え時間が記されている。一体どうなることやら、よくわからないまま学会当日を迎えた。 
 結果的に、私の事前予想はある程度的中していた。口頭発表の大半は欧米からの招待演者で占められており、有名な先生のご講演を拝聴するという印象が強かった。だがこれは開催頻度による問題で、もしかしたら本学会自体、4年に1度のお祭り感覚なのかもしれない。しかし個人的には、もう少し若手の口頭発表数を確保するべく、口頭発表用の会場をあと2つは増やしても良かったのではないかと感じている。無論この手の議論には賛否両論あり、予算の問題もあるのは理解しているが、私個人としてはそう思った。特別残念に思ったのは、ポスター発表についてである。オンラインでのアブストチェックに手間取る(学会関連誌に掲載されていたようだが、自身の大学では購読しておらず、結局チェックできなかった)のみならず、実際のポスター会場には屏風のごとく設置されたポスターボード。90度くらいの角度を隔てて隣り合う、私と次番のポスター。発表時間には奇数偶数の別は無い。...なんだか嫌な予感は的中し、隣人の盛況度合いによっては割を食う人がでる、あるいは人気者同士で潰し合う(どっちのポスターも見にくい)という構図が其処此処で見られた。
 ここまでネガティブな印象ばかり書き連ねたが、ポジティブな印象を持った点も勿論ある。興味深かったのは、日本発生生物学会と国際発生生物学会のトレンドの違いである。本大会には、ヒトの先天異常や疾病を念頭に置いた研究成果発表が一定数見られた。こうした傾向には勿論、大きなグラントを獲得するための目論みも見え隠れするのであるが、
グラントの件はさておき、医学や栄養学、農学など理学以外の諸分野との連携それ自体は日本発生生物学会にも今後取り入れられればよいなと感じた。動物学や進化学、分子や再生など理学諸分野との連携は勿論密であるに限る。だがそれだけでなく、もっと広い視野を持ち、人と交流し連携し議論し、自身の研究や学会の今後の発展性を考えていくことの重要性を改めて感じた。

自身の発表内容、発表の様子と得られた成果
 私はこれまで、「ヒトはどのようにしてしっぽを失くしたのか」の解明に向け、ヒトを含む短尾有羊膜類における尾部形態形成過程について研究を進めてきた。ヒトのしっぽは出生時には完全に消失しているが、胚発生過程では他の有尾有羊膜類と同様に尾部が形成される。成体における形態変異はすべからく、発生過程の変異から創出されるため、ヒト胚発生過程における尾部退縮過程と機構の解明は、ヒト上科の進化過程における尾部短縮を復元する上で欠かせない知見である。実際のヒト胚子標本において、尾部体節数の推移を調べたところ、尾部体節数はカーネギー発生段階16で最多に達し、その後約5個分減少することが明らかとなった。その後尾部体節数には大きな増減が見られないことから、この尾部体節数の急激な減少が、ヒト胚子期に生じる尾部短縮と大きく関連していることが明白となったので、これを発表した。
 私の発表は会期中最初のポスターセッションにあたっていた。持ち時間は2時間だ。そのうち半分は自分の発表をし、残り半分で他のポスターを見て回ろう、と最初は考えていた。ところが始まってみると、大量の人間がポスタースペースに流入してきて、一気に辺り一面大混雑状態に陥った。私のポスターにも、大量の人々がやってきた。長篠の鉄砲三段撃ちのごとく、数人への対応を終えるとその後ろにまた別の数人が控えていて、とにかく人が途切れない。このような事態は初めてであった。結局2時間丸ごと自分の発表に用い、大体50人の人々と交流した。数は多いものの来訪者の興味がある点、指摘点というのはおおよそ似通っており、本研究で使用したヒト胚標本について、ならびに今回報告した尾部体節数の急激な減少に寄与し得る細胞挙動や分子メカニズムについての議論が中心だった。しかし中には、本成果が論文化されているか否か、どこに投稿するのか、論文化までどの程度時間がかかりそうなのか、といったような研究の進行状況に探りを入れる来訪者も一定数おり、自身の研究の意義の大きさを実感できたと共に、可能な限り迅速に論文化へ向け動かねばならないという焦燥感を改めて痛感できた。数多くの来訪者からの指摘も、論文を書くにあたり注意すべき点を如実に洗い出してくれた。
 今回、自身の成果発表では論文化へ向けた具体的なステップや対策が見えてきた。また、今後自身が関わって行くであろう学会運営の方法についても考える機会を多く得た。総合すると、本学会にはプラスマイナス両方の思いを抱いているが、私にとっては非常に興味深く、楽しく、実り多い出張をさせて頂けたと思っている。

謝辞
 このような貴重な機会を得ることができたのも、岡田節人基金からの支援があったからこそと思います。末文ながら深謝申し上げます。