2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 古本知奈美(神戸大学)

神戸大学
古本知奈美
私は、昆虫の形態が多様化した要因に迫る研究がしたいと考えています。昆虫の形態の進化要因について、その機能や系統的要因、適応的要因が明らかにされてきた研究は多くみられます。一方で、至近的要因を明らかにした研究は少なく、進化過程を考察するためには、昆虫の形態に関与する形態形成過程や遺伝的基盤の解明をすることが急務だと考えています。
そこで、修士学生から進化発生学を勉強し始めました。2025年の2月に修士論文を提出するまでの過程で感じたのは、日本には進化発生学を重要視している研究が少ないのではないかということでした。私の所感ですが、細胞動態や分子レベルの発生過程の記載が足らないまま、形態に関わる適応的要因と遺伝的基盤だけが明らかにされつつある研究が多くみられると感じています。もちろん研究は日進月歩なので、解明できるところから漸次的に解決していくことが重要だと思いますが、広く発生過程を解明し、種間比較するような研究が増えると、より深い議論ができると考えています。そのような現状において、進化発生学に着目し、遺伝子から分子、発生、系統まで多くの分野の若手研究者が参加するような本集会は、とても魅力的に感じます。
私は体調不良で1日目しか参加できなかったのですが、本研究会の良い点は2つあると考えています。1つ目は、若手研究者の人脈が広がった点です。本研究会は、学部生からポスドク、研究者の方まで多くの年齢層の方が参加されていました。その中でも、自分の年齢と近い方と議論する機会が多かったことがとてもありがたかったです。1日目のポスター発表やコーヒーブレイクでは、距離が近い中で複数人と研究についてディスカッションすることで、自分の研究の立ち位置や、発生学の視点から見た研究の欠点を指摘して頂き、とても勉強になりました。そのような距離感でお話しできたからか、研究会が終わっても連絡を取り合う同年代の友人ができたことがとても嬉しかったです。今後も同年代の研究に関わる方々と切磋琢磨しようと思える良い機会でした。2つ目は、進化発生学について今一度よく考える機会を得たことです。研究というのは、基本的に一人で計画し、実験し、結果をまとめるため、視野が狭くなりがちだと考えています。しかし、多くの研究に携わる人と話すと、研究のモチベーションから、自分の分野の認識まで、思っているよりも大きな違いがあると感じます。私は、次世代シーケンサーなどの技術革新を経て、遺伝子発現解析が重要だと考えている方が多いのだと考えていました。しかし、slackでの議論を読んでいると、「発生システムはどのように進化してきたか」のチャンネルでは、発生過程の中でも細胞動態に注目したいという意見が出たようで、とても共感しました。また、他チャンネルの新奇形質の定義についても、適応的意義や形態の機能における類似性にまで議論が及んでおり、多くの分野の研究者が集まって議論することで、分野の重要な単語の定義を再検討することの重要性を感じました。このような問いは、専門的な研究を突き詰めるほど盲点になる部分だと感じているので、研究会のslackでの議論が落ち着いてからも、継続的に考える必要性を強く感じました。
研究者の交流会として、また、学問の再検討をする機会としても、またこのような会があれば参加させて頂きたいです。とても良い会を開いて頂き、ありがとうございました。
2025.03.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 宇佐美優奈(埼玉県立大学)

埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科
宇佐美優奈
この度,岡田節人基金海外派遣助成をいただき,アメリカ アリゾナ州フェニックスで開催されたOrthopaedic Research Society (ORS)が主催するORS2025 Annual Meeting(米国整形外科研究会議 年次総会 2025 )に参加しました.
本学会は,臨床の整形外科医師や理学療法士などの医療従事者と,筋骨格系の基礎研究分野の エンジニア,分子生物学の研究者が一同に会する領域横断的な学会です.北米で開催される整形外科分野における基礎研究を扱う学会としては最大規模で,参加者は3,000人超に上ります.会期は5日間にわたり,ポスター並びに口述発表が行われました.参加者の研究対象は筋,腱,軟骨,骨といった筋骨格系が中心であり,患者データを用いた臨床病態研究や,マウスやゼブラフィッシュを用いた基礎研究まで多岐に渡ります.
 私自身,学部3年生の時に初めて国際学会に参加したのが本学会であり,個人的に非常に思い入れの強い学会です.修士課程1年目の頃から毎年ポスター発表を行なってきましたが,今年度は初めての口述発表となりました.参加前はこれまで参加してきた学会で最も緊張しておりました.しかし,いざ学会が始まると,修士課程で留学した際にお世話になった研究者や,これまで参加してきた国際学会で仲良くなった同世代の研究者との再会で会話も弾み,毎日が非常に楽しい時間となりました.今回の私の発表は,マウスモデルを用いた腱発達過程におけるメカノバイオロジー機構の関与に関する研究内容でした.私自身の研究に強く関わる腱発生のキーとなる転写因子を同定した研究者や,胎児期の筋腱分化プロセスを明らかにした研究グループも本学会を主戦場としています.今年も実際にお会いし,私が行なった発表について直接ご意見を伺えたことは,今後研究を継続していく上で非常に有意義であったと感じております.実験は思うように進まないことも多く,研究室に籠りながら継続する中でようやくまとまりつつある成果に対し,普段論文でよく目にする著名な研究者の方から“Existing !”や“Amazing!”というような欧米のカルチャーらしい言葉をかけていただけたことは,お世辞とはいえ何より嬉しいものでした.
今回自身が発表した Tendon Mechanobiology のセッションにおいては,in vivoのみならず,in vitro, ex vivoの最新技術を用いた研究成果も発表されておりました.現在の私の研究では,in vivoデータをメインで構成しており,今後の向けin vivoでは検証しきれない点について細胞培養の実験系も検討していたタイミングであったため,生体外培養の実験をすでに進めている研究者から最新の知見を直接聞けたことは,次のステップへのヒントとなりました.発表後,運よくそのグループのPIに声をかけることができ,今後の共同研究に向けたコミュニケーションをとることができました.

結びになりますが,今回の発表に際し,渡航をご支援いただきました日本発生生物学会関係者の皆様に深く感謝申し上げます.
2025.03.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 池田貴史(京都産業大学)

京都産業大学タンパク質動態研究所
池田貴史
“Embryology heaven”訪遊記

“This is the embryology heaven.” Eddy de Robertisが閉会のあいさつで述べた一言が、帰国してしばらく経った今でも耳に響く。たしかに、このシンポジウムは発生学者にとっての楽園そのものだった。
 今回私が参加したのは、2024年9月16日から19日の4日間にわたってドイツ・フライブルクで開かれたFreiburg Spemann-Mangold Centennial Symposium。2024年はフライブルク大学のHans SpemannとHilde MangoldによるSpemann-Mangoldオーガナイザーの発見から100周年という記念すべき年であり、それを祝うための特別シンポジウムである。学部生時代の実習で平良眞規先生のご指導を得てアフリカツメガエル胚を用いたオーガナイザー移植を体験し、発生学にはまるきっかけをもった私としては一も二もなくという感じで参加を申し込んだ。最近では発生学への入り口がオーガナイザーという方は少数派かもしれないが、苦労して精密な手作業を習得し、刻々と変わってゆくオーガナイザーの活性(そのせいで美しい二次軸を誘導するのはなかなかむずかしい)を目の当たりにしたことは、いまなお鮮やかな記憶として脳裏に刻まれている。
日本から14時間のフライトでフランクフルトに降り立ち、そこからさらに2時間半の特急に乗ってたどりついたフライブルクは、ドイツ南西に広がる黒い森(シュヴァルツヴァルト)のそばに位置する大学都市である。市街地の規模は小さく、街はずれのシュロスベルク(フライブルク城跡)にのぼると全体が見渡せてしまう(図1)。旧市街の中心には16世紀に完成したフライブルク大聖堂がそびえ、その周りには果物や野菜を売る露店が並ぶのどかさである。今回のシンポジウム会場となったフライブルク大学の大講堂は、ちょうどSpemannが当地に赴任した頃に建設されたといい、たしかな風格を感じさせる建物であった。
シンポジウムの形式は、世界中から招かれた40人のPIが30分ずつ自由に話すというもので、オーガナイザー因子探索と変異体スクリーニングの華やかなりし1990年代から活躍してきた研究者たちが一堂に会し、思い出話をまじえつつオーガナイザーの研究史から現在進行中の研究、さらには今後の発生学が向かうべき方向性にいたるまで多種多様な話題を提供するという豪華なシンポジウムであった。普段の学会でいうPlenary lectureを一度にまとめて40回聞いた感覚である。未発表データも多く含まれていたので個々の内容に踏み込んで書けないのが残念であるが、オーガナイザーの研究史に関する発表内容はCells & Developmentの特集号(Spemann and Mangold centennial special issue. Part I: historical perspective)として公表されているので、関心のある方には一読をお勧めしたい。特に興味深かったのはSpemannがどのようにしてオーガナイザーという概念を着想したかについてのThomas Holsteinの考察で、どうやらSpemannは、ヒドラにおいて類似の実験がEthel Browneにより行われていたことを知っていたという(Holstein, Cells Dev., 2024)。オーガナイザーはMangoldの神技的な移植実験に基づいてSpemannが忽然と持ち出してきた概念であるかのような印象を持っていたが、彼らといえども巨人の肩の上に立って考えていたことを少しの安堵をもって聞いた。
そのほか、いろいろな人が繰り返し語っていたのが、どれだけ多くの概念が原口背唇部の移植というシンプルな実験から着想され(誘導、神経発生、自己組織化…)、それがどれだけ発生のメカニズム解明につながったか、ということで、確かにこれはいくら強調しても強調しすぎることはない点だろう。彼らの時代、発生学研究に用いることができる手法は観察と移植くらいしかなかったわけだが、それに対して現代はあまりにも多くの実験が可能である。今回のシンポジウムでも、細胞移植や胚操作といった古典的手法に誇りをもってこだわる人がいる一方で、オミクス的手法を全面的に採用し、物量作戦で突き進んでいる人も多かった。この100年の間に実験手法の選択肢は大きく広がったが、さて、それらをどのように使えば、移植という一つの手法だけで達成されたオーガナイザーの発見と同じくらいのインパクトをもつ研究ができるのか?と深く考えさせられた。
そのことはさておくとして、本シンポジウムを通じて何より印象的だったのは、たぶんこの人たちは本当に発生学(というか、発生現象そのもの)が大好きで、いままでずっと楽しみながら研究をしてきたのだろうな、ということがじかに伝わってくる発表が多かったことである。発表のスタイルも多種多様で、手描きのスライドで自身のノーベル賞研究を淡々と紹介し、質問を受けずに悠然と壇を降りたChristiane Nüsslein-Volhard、クロマチンが開いてHox遺伝子の転写が順番に始まるさまを洋服のボタンを外す動作にたとえ、一着のコートだけが映ったスライドで何分間もしゃべり続けたDenis Duboule、初期発生研究のオピニオンリーダーとして、今後の発生学が向かうべき方向性を圧倒的な説得力をもって示したAlexander Schierなど、論文を読むだけではわからない大学者(巨匠)たちの強烈な個性を目の当たりにすることができた。
とはいえ巨匠の芸に酔うばかりでは満足できないのが駆け出し研究者の性で、2日目の夜には、以前から進めてきた「左右軸形成におけるNodalシグナルの作用機序」についての研究に関するフラッシュトークとポスター発表に挑んだ。100枚近いポスターが極めて狭い会場に立ちならぶなか、2時間半にわたって多くの方々に発表を聴いて頂けた。ビールやワインを手に、時間を忘れていろいろな国の研究者たちと議論する、国際学会ならではの雰囲気を存分に楽しむことができたと思う。また、翌朝早くにポスター会場をのぞいたところ、Alexander Schierがわたしのポスターの前で立ち止まっていたので、ひとしきり研究内容を聞いてもらえたのは幸運であった。有名な研究者ほどいろいろなポスターで声がかかって自分のポスターになかなか呼び込めないものだが、彼らに話を聞いてもらうチャンスをつかむためには、発表時間外でも会場に張り込んでおくことが重要と実感した。
 こうした極めて充実したプログラムの合間に、Spemannゆかりの地や博物館をめぐるツアーや、現地で知り合った若手研究者たちと居酒屋を訪れたり、招待講演者として参加されていた浅島先生、上野先生、武田先生のお三方を囲んで飲み会が開かれたりといろいろなお楽しみもあった(図2)。また、閉会後に武田先生とともにCentre for Organismal Studies (COS) Heidelbergを訪れ、メダカ胚発生の研究で著名なJochen Wittbrodtの研究室でセミナーをさせて頂けたのも貴重な経験であった。

最後に、本シンポジウムへの参加には、学会からのTravel award grantに加えて岡田節人基金からのご支援を頂いた。歴史的円安に研究費不足と、なにかにつけて悩みの多い浮き世をしばらく離れて天国に遊ぶことができたのは、ひとえに故岡田節人博士と日本発生生物学会の関係者の皆様のおかげと深く感謝申し上げる。
図1:シュロスベルクから望むフライブルク市街。中央右に立つ尖塔がフライブルク大聖堂。
図2:フライブルク大学博物館でSpemannとMangoldの特別展を見学。
2025.02.28

第2回日本発生生物学会フロンティア賞 公募要領

趣旨:日本発生生物学会は独創性の高い研究で今後の発生生物学をリードする若手研究者を表彰します。

表彰の名称:JSDB Frontiers Prize(正式名称は英文)、日本発生生物学会フロンティア賞(国内向け)

表彰対象者:日本発生生物学会員
※第77回日本細胞生物学会・第58回日本発生生物学会合同大会若手賞への申込は、妨げない。

応募方法:表彰されることを希望する会員本人が以下の書類(英語または日本語)を作成し、jsdbadmin@jsdb.jpまでメールで提出ください。

JSDB Frontiers Prize表彰候補者略歴書 (WORD28KBPDF109KB)

・独創的な研究に至った背景と経緯、研究のセールスポイント、今後の研究展望を自由形式で記述してください。
・略歴、これまでの研究経歴、業績、を様式に沿って記入ください。
・必須ではありませんが、サポートレター(同僚、共同研究者、スーパーバイザ等からの応募者の独創性を示すシンボリックな話も歓迎)を提出ください。
*なお未発表データについては審査に際してconfidentialに扱います。

審査方法:提出書類に基づいて審査委員会で書面審査により候補者を絞った上でオンラインでの面接審査を行います。
審査委員はGender、年齢、所属機関などの多様性を広く確保し、理事を含む11名の会員が担当します。第2回審査委員は以下の会員が担当します。
熱田勇士(九州大、第1回受賞)、入江直樹(総研大)、川口茜(遺伝研、第1回受賞)、日下部りえ(関西大学)、見學美根子(京都大)、中村輝(熊本大)、林利憲(広島大・副幹事長)、平島剛志(MBI, 第1回受賞)、藤森俊彦(基生研・教育担当理事)、三井優輔(京大、第1回受賞)、和田洋(筑波大)
オブザーバー:高橋淑子(京都大・会長)

なお、受賞者には次回の審査委員を担当していただきます。審査委員は1年ごとに半分入れ替えます。次回の審査委員は、第2回審査委員会から提案し理事会において決定されます。メンター、利害関係者はその審査に加わりません。

審査基準:一個人に対し、表彰は1回に限ります。毎年最大で3名程度を表彰します。

受賞講演:受賞講演として大会期間中の指定されたセッションにおいて英語で発表してもらいます。受賞者は必ず受賞講演のセッションに参加、講演ください。なお、大会期間中の一般演題での発表もできますので、積極的に一般演題の登録もお願いします。

本賞:賞状
副賞と招待Gift and invitation:受賞者は、日本発生生物学会が他国の発生生物学関連団体と開催する発生生物学合同大会を含む海外で開催される国際学会等に参加・発表する旅費のサポート(サポート期限は受賞決定から3年以内、上限は30万円)を受けられます。
さらに、受賞者は日本発生生物学会が発行する国際誌であるDevelopment, Growth & Differentiationにこれまでの研究や今後の発生生物学の新展開について記事の執筆をDGD編集幹事より招待されます。


第2回JSDB Frontiers Prizeの公募スケジュールは以下の通りです。

募集期間:2025年3月1日から15日
(第77回日本細胞生物学会・第58回日本発生生物学会合同大会の演題登録期間とは違いますのでご注意ください)
書類審査期間:2025年3月16日から30日 (面接候補者への通知は4月15日まで)
面接審査期間:2025年5月1日から30日の間 (オンライン面接後、理事会で決定)
受賞者決定・公開:2025年7月1日
受賞講演:2025年7月17日(木)11:55-12:55
2025.01.06

日本発生生物学会 若手企画シンポジウム 募集要項(2025年1月更新)

日本発生生物学会が主催していた夏季シンポジウムと秋季シンポジウムをリニューアルし、若手会員の研究交流を支援することを目的に、若手会員によるシンポジウムの企画を支援することとなりました。つきましては、リニューアルされた若手企画シンポジウムを以下の要領で募集いた致します。

1件あたり、300,000円を支援額の上限とします。また、年間の採択数は最大 3件程度を想定していますが、試行段階ですので、今後変更の可能性があります。
概要:
「若手企画シンポジウム」とは、若手会員(学生・ポスドク・助教・若手 PI など)が企画する発生生物学会が主催するシンポジウムであり、開催場所(岡崎市)が提供されます。旅費及び会議費として最大30万円の経費が認められます。事務局は、会場運営の補助に加え、オンライン会議ツールを用いた配信、参加・演題登録のとりまとめ、要旨集の作成、HPの作成も支援します。オンライン会議のみの場合も、これらの支援が受けられます。
企画したシンポジウムは、会員であれば、どなたでも参加申し込みを可能とすることが条件となります。
※シンポジウム主催者が日本発生生物学会であることをHPや印刷物・配布物に明記すること。
※他団体(他学会・大学・研究機関・財団など)への協賛・協力・後援の依頼・募集は、妨げないが、申請前に事務局に相談すること。
申請者:
日本発生生物学会の若手会員(学生・ポスドク・助教・若手 PI など)
*若手会員が交流を深め、研究が発展することを目的としていますので、講演者には、他学会の若手会員や著名な研究者等を含めても構いません。
*申請者(代表者)は、事務局との連絡を行う1名のことです(共同で企画される方に非学会員が含まれていても構いません)。
申請方法:
申請書ダウンロード(2ページ):Word(29KB)PDF(95KB)

遅くとも開催予定日の 3 ヶ月前までに、申請書を日本発生生物学会事務局(jsdbadmin@jsdb.jp)まで提出してください。
審査方法:
教育委員会および執行部で審査を行います。採否及び経費配分額は、申請書受付後1ヶ月以内に、申請者に E-mail にて通知します。
運営組織:https://www.jsdb.jp/about_organization.html
実施報告書の提出:
報告書ダウンロード(2ページ):Word(16KB)PDF(84KB)
申請者は、シンポジウム終了後1ヶ月以内に、実施報告書を日本発生生物学会事務局(jsdbadmin@jsdb.jp)まで提出してください。
2024.06.08

第1回(2024年度)JSDB Frontiers Prize 受賞者の報告

本年新たに設立されましたJSDB Frontiers Prizeの第1回(2024年度)受賞者が決定しましたので、報告いたします。

熱田勇士(九州大学理学研究院 講師)
「Attempts to Generate Vertebrate from Non-limb Fibroblasts」
川口 茜(国立遺伝学研究所 助教)
「Unravelling complex developmental questions : Past achievements and future perspective/脊椎動物の転写制御とゲノムの進化が多面的な表現型を付与する意義の研究」
平島剛志(シンガポール国立大学メカノバイオロジー研究所 主任研究員)
「Mechano-chemical coupling on self-organized tissue morophogenesis and pattern formation/多細胞組織の自律的な形態やパターン形成に関するメカノバイオロジーの研究」
三井優輔(京都大学医生物学研究所 助教)
「Understanding how Wnt regulates planar Cell polarity.」
※あいうえお順

受賞記念講演を第57回大会の下記日時で開催いたします。(発表は英語で行われます)

日時:2024年6月21日(金)13:30-14:30
場所:Room B(みやこめっせ)
プログラム:
13:30-13:45 熱田 勇士(九州大学理学研究院 講師)
13:45-14:00 川口茜(国立遺伝学研究所 助教)
14:00-14:15 平島剛志(シンガポール国立大学メカノバイオロジー研究所 主任研究員)
14:15-14:30 三井優輔(京都大学, 医生物学研究所 助教 )

※お弁当(数量限定)を配布いたします。
※表彰式は懇親会で行います。また、時間の都合により質疑・議論は当日の懇親会でお願いします。
2024.01.18

Wnt研究会2023 参加報告書 田宮寛之(京都府立医科大学)

京都府立医科大学
田宮寛之
笹井先生の思い出が詰まった理研CDB のC棟でWnt研究会に参加させていただいて

この度は旅費支援をいただき, まことにありがとうございました. 関西医科大学の田宮寛之です. AMED遺伝子再生・AMED-PRIMEなどの支援のもと, 哺乳類体内時計中枢の機能的なオルガノイドの作製に取り組んでおります. 私はもともと理研CDBの上田泰己先生の研究室で体内時計研究をはじめましたが, その後紆余曲折を経て京大永樂先生・京都府立医大八木田先生の研究室で体内時計中枢オルガノイドの開発に従事し, 今月より関西医科大学にPIとして着任しております. 私が世界ではじめて誘導に成功した機能的な体内時計中枢 (視交叉上核: SCN) のオルガノイドでは, SCNの内部構造が再現され, SCNでしか観察できない細胞時計の同期持続振動が観察され, 移植による行動リズム回復もみられております(Tamiya (Corresponding author) in preparation), 特願2023-087986) さらに, 成体視床下部のわずか0.7%に過ぎないSCNが20%以上誘導されており, 時計中枢はどのように分化してくるのかの観察のために時系列のscRNA Seqの解析をおこなったところ, Wntシグナルの重要性が示唆されました. そこで今回は, 今後Wntの研究を進めるにあたり専門の発生学者の方々のお話をしたいと思い, Wnt研究会へ参加させていただきました. 発表させていただいたタイトルは“脳オルガノイド作製技術を用いた体内時計中枢分化シグナルの探索”です.
CDBに在籍しながら発生生物学会には長らく参加したことがなかった私でしたが, 懇親会からアットホームな雰囲気の中迎えていただき, 研究会もレベルの高い発表ばかりでした. 議論も非常に活発で, Wntそのものに加えて発生学についても非常に勉強させていただきました. 自分の発表におきましても, 発生学者の先生方らしい本物の発生の再現を求める質問が相次ぎ, 大変刺激になりました. 余談ですが, 私が脳オルガノイド研究を始めるきっかけは, 今回の会場である理研CDBでお会いした故笹井芳樹先生でした. 笹井先生とはじめてお会いしたC棟1階オーディトリウムで発表させていただくことができ, とても嬉しく思いました. 昼食会場のC棟1階のサロンも, 当時は笹井先生寄贈のピアノがありました. 私は実験がうまく行かない夜によく弾いていましたし, 振り返ると笹井先生がいて, 笹井先生は即興演奏を始められた. そんな思い出の場所です.
ぜひ今後ともよりよい体内時計中枢オルガノイドの開発に従事するとともに, 初期の体内時計発生におけるWntの役割を解明してまいりたいと思います. 今後とも引き続きどうぞよろしくお願いいたします.
2024.01.17

Wnt研究会2023 参加報告書 鈴木美奈子(NIBB/総研大)

基礎生物学研究所/総合研究大学院大学
鈴木美奈子
2023年12月9日に開催されたWnt研究会に参加させて頂きました。

私は最近自身の研究をまとめる段階に入っており、より多くのWntの専門家の方々からのコメント、アドバイス等を頂きたく参加を決めました。実際に全員がWntに関連した研究に取り組んでいるため、普段の年会では中々得られないような細かいアドバイスから、厳しい指摘まで、様々な価値ある意見を頂くことができ、今後の研究活動に非常に役立つ事を確信しています。また、発表についてもWntに関して、初期発生から老化等、幅広い研究の話を聞くことができ、非常に勉強になり、今後の研究へのヒントを掴むことができたと思います。さらに、同年代の方々の刺激的な発表を聞き、研究に対するモチベーションがより高まったと感じています。

この様な研究会へのオンサイトでの参加は初めての経験で、休憩時間には多くの学生や先生方とたくさんディスカッションをすることができ、自身のネットワークを拡大するとともに、オンラインや通常の年会のような大規模な学会では体験できない研究者間の密なコミュニケーションを体験することができました。今回得た学びを元に、さらなる研究の発展に繋げたいと思います。

最後に、この様な機会を提供していただいた関係者の皆さま、そして今回参加費用を支援して下さった発生生物学会に感謝申し上げます。
2024.01.17

Wnt研究会2023 参加報告書 京田竜弥(広島大学)

広島大学大学院 統合生命科学研究科
京田竜弥(D1)
私がWnt研究会に参加させていただいた目的は、自身の研究に深く関係するWntについての知識をより深めるためでした。組織再生におけるWntの機能解析を行っている私にとって、「Wnt」をテーマにしている本研究会は強く惹かれるものでした。また、現在所属している研究室ではWntを主テーマとして研究している学生が私一人であったため、Wntを専門とする研究者の方々と交流し、今行われている研究や解析法などについて直接学びたいという気持ちもあり、本研究会に参加させていただくことを決めました。
本研究会は一日間でしたが、私は多くのことを学び、非常に充実した時間を過ごすことができました。当日は40名の学生や若手研究者、先生方が参加し、19演題もの発表が行われました。Wntなどの分泌因子を中心として様々な点に焦点を当てた研究がなされており、自身の研究対象以外の動物における基礎知識や、それらとWntの関係など非常に多くのことを学ばせていただきました。どの発表でも活発な議論が行われ、その内容も今後自身が研究を行う上で非常に有益なものばかりでした。さらに、Wntに対する視点を当て方や考察など、専門家の先生の考え方も直接お話を聞くことができ、非常に刺激を受けた一日でした。
今回Wnt研究会に参加させていただくことでWntを研究している方々と直接交流し、お話を聞くことができたのは貴重な体験でした。最後に、本研究会のオーガナイザーである三井優輔先生と菊池浩二先生、および日本発生生物学会の皆様に感謝申し上げます。また、本研究会に参加するにあたり日本発生生物学会および熊本大学発生医学研究所から旅費支援を頂くことができ、学生の身として非常に助かりました。重ねて御礼申し上げます。
2024.01.17

Wnt研究会2023 参加報告書 東真理奈(大阪大学)

大阪大学
東真里奈(D2)
この度は、旅費支援にご採択いただき誠にありがとうございました。12月9日に神戸理研BDRで開催されました「Wnt研究会2023」に参加し、口頭発表をさせていただきました。

私はWntについては初心者でどの演題も新鮮な気持ちで拝聴いたしました。
Wntシグナルは生物学的なプロセスにおいて極めて重要な役割を果たすシグナル伝達経路の一つで細胞表面の受容体を介して細胞内へシグナルを伝達し、細胞の運命決定や発生、組織の維持や病気の発症にまで関与しています。さらにWntの発現の勾配は発生の過程において細胞の運命を決定し、特に脳発生ではシグナルの強度の微妙な違いによって領域が決定していくというお話はとても興味深かったです。

細胞競合や組織のパターン形成など生物にとって重要で基本的な機能以外にも様々な領域に関与していることが今回の研究会を通して知ることができました。Wntシグナル研究はさらに発展していくと期待される分野であり、今後の進捗がとても楽しみです。

今回このような機会を開催し運営してくださった皆様に感謝申し上げます。