2023.04.13
DGD編集主幹就任にあたって
本年1月より平良前編集主幹を引き継ぎ3ヶ月が過ぎました。この間、投稿論文のハンドリングをしながらScholarOneシステムに慣れることや、特集号(Special issue)の状況把握、表紙デザインの刷新に関するステアリングコミッティでの議論などを行なってきました。この3ヶ月間に感じたことなどを含めて編集主幹の就任挨拶とさせていただきたいと思います。
私が学会長を務めていた2015-2019年には仲村春和先生が編集主幹を務められ、その後、2020-2022年に平良眞規先生、本年2023年1月から私が引き継ぐことになり、学会側から学会誌としてのDGDを見ていた立場から、逆にDGDの立場から学会との関係を考える立場へと大きく変わりました。学会理事会の前に行われるDGD編集委員会で活動状況は表面的には把握していたものの、実際に編集主幹が行なっていた業務や学会との連携やその距離感については、編集主幹となって初めて感じること、改めて感じることが多くありました。いままでもDGDの日本の発生生物学研究を国際的に発信する媒体としての意義を十分認識していましたが、DGDはEmbryologiaの時代を含めて1959年から60余年の歴史をもつ日本の発生生物学を牽引してきた学術雑誌であることの重み、同時に編集主幹としての責任を改めて感じています。創刊当時の研究者の思いや、その後DGDに論文を投稿し研究成果を発表してきた多くの研究者によって支えられてきたDGDを少しでも発展させられるように努力したいと思いを強くした次第です。
すでにDGDは時代の変化とともに大きな進化を遂げています。平良前編集主幹のときに行ったエディターシステムの導入により、専門性をもったエディターが論文のハンドリングを行うようになり、細胞生物学、進化学など広い境界領域も対象として拡大しつつある発生生物学の潮流に対応しつつあります。加えて、論文カテゴリーの多様化、発生生物学の基盤となるリソースや今後導入が必要とされる技術をテーマとした特集号の発刊などの取り組みは2021年のインパクトファクター(IF=3.0)へとつながっており、平良前編集主幹のご尽力に感謝いたします。
一方、この流れを加速し学術誌としてさらに発展させるためには多くの課題があります。それは、一定の質をもった投稿論文を持続的にまた十分な数を確保することの困難さです。いうまでもなく、学術誌にとって論文の科学的な質はその評価の要であり、日本発生生物学会が自信と誇りをもって質の高い論文を世に出すことはDGD、ひいては学会、日本の発生生物学コミュニティーの評価を高めることにつながるもの信じています。そのためには、学会員を中心として、DGDへの投稿を積極的に考えていただくこと、同時に編集主幹、エディター、レヴューアーの円滑な連携を保って論文をしっかりと科学的に審査し、適正な助言、改訂などを通してより良い方向へ「導く」という意識が必要なのだと思います。これは実際には簡単なことではありませんが、著者および出版に関わる研究者間でそのような文化を醸成することも日本の発生生物学の底上げに寄与するものと思います。
この3月に開催されたあるシンポジウムでDGDの宣伝を行うためのパワーポイントスライドを作成しました。その中でDGDの雑誌名に続くメッセージとして”Our Journal, Our Pride”というフレーズを加えました。学会員の皆さんが自分の学会の雑誌であるとの思いをもち、また海外の研究者に対しても誇りがもてる雑誌としてあり続けたいとの思いを言葉にしたものです。編集主幹として、皆さんにそのような意識を強くしてもらえるようなDGDにできればと考えています。今はトレンドでなくとも、将来大きな流れを生む「かも」しれない潜在性のある論文も含めて会員の皆さんからの投稿をお待ちしています。
この10年の間にオープンアクセス (OA)化への流れは加速しています。多くの人と情報を共有するために魅力的なシステムであることはいうまでもありません。他方、自己負担の場合、OAに関わる費用は決して少額ではなく、躊躇される著者も多いのではないでしょうか。最近ではOA化を促進するために、「転換契約(transformative agreement)」を行なっている大学も多くみられ、現在、Wiley社は日本の18校と契約を拡大しつつあります。各大学ではこの契約の中で一定数の論文に対してOA化に必要な論文掲載料(APC)を全額あるいは一部負担するなどのサポートをしていますので、OA化を望まれる方は是非、各大学の担当者にお問い合わせいただき、積極的にご利用いただきたいと思います。
このように、学術研究や専門誌出版の動向は日々変化しつつありますが、学会員、エディター、Wiley社DGD担当スタッフの皆さんのご協力を得ながら、DGDの歴史、個性、強みを活かして微力ながらDGDの発展、日本の発生生物学研究の国際的発信に貢献できればと思っております。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
2022.12.21
DGD編集主幹を終えるにあたり
「DGD編集主幹の就任の挨拶」を書かないまま、「DGD編集主幹を終えるにあたり」を書くことになってしまいました。それは、一つはDGDの改革を行なっていましたので、それが一段落してから挨拶したいと思っていたところ、予想以上に時間の経過が早かったこと、そしてもう一つは筆不精ということだと思います。最後に、この3年間でのDGDの改革内容を皆様にお伝えしたいと思い、筆を取りました。
2019年の夏頃に2020〜2022年の3年間の予定で編集主幹(以下Editor-in-Chief: EiC)を拝命することが決まったとき、「DGDが学会誌として学会員から投稿したいと思えるジャーナルになるにはどうしたら良いか」を考え、2つの改革を行いました。1つ目は、Editorial Boardを名目上のものではなく、JSDB会員および海外の研究者がEditorとなって査読プロセスを行う実質的なEditorial Boardとして組織することです。そのためEiCをサポートする機関としてまず「編集会議」を組織し(第一期編集会議:私を入れてメンバー4名)、その後メンバーの入れ替えで第二期編集会議(メンバー6名)を組織して、具体案の作成を行い、Editorの役割を名文化して投稿論文のハンドリングと招待論文の依頼を行うことを業務として取り決めました。そして、それに同意する30名以上の中堅と若手の研究者を国内外から集めて、広く発生生物関連の分野を網羅するEditorial Boardを組織することができました。それにより投稿者が自分の研究分野に合ったEditorや自分の研究を理解してもらっている知り合いのEditorを指名することで安心して投稿ができるようになりました。また投稿前にEditorとコンタクトを取って原著論文の内容を相談したり総説の投稿を提案して認められれば投稿したりすることが可能となりました。このシステムは投稿者にとってメリットがあるだけでなく、Editorを初めて経験する研究者にとっても査読プロセスを理解する機会を得ることができるというメリットがあると考えています。またEditorial boardに関連する研究者からの投稿を呼び込む狙いも軌道に乗ってきています。
投稿を促進する2つ目の改革として、投稿者のニーズに合った論文タイプを新たに設置し、かつそれを広めるための特集号を企画しました。従来はResearch ArticleとReview Articleの2種類だけでしたが、特集号”Methods and Protocols”の出版に向けてMethod、Protocol、Technical Notesを設置し、特集号“Versatile Utilities of Amphibians”ではShort Research Articleを設置して数多くの原著論文を得ました。他に Resource、Historical Review、Mini Reviewも加えました。これらの中から皆様の目的にあった論文タイプを選び是非投稿してください。発生生物学会の総会で「DGDを若手研究者の登竜門としてご活用してください」と繰り返し述べましたように、修士論文や博士論文をDGDに投稿して研究者人生の最初の原著論文を発表する、あるいは超一流雑誌に発表した原著論文を核として研究人生初の総説をMini Reviewとして書いてみる、などは如何でしょうか。
さて、EiCとしての編集業務と、私自身もEditorとして査読プロセスを行なってみて初めて気がついたことが幾つもありました。EiCはまず投稿論文の事前チェックを行って査読に回すかリジェクトするかを決めます。それを最初に行い出して気がついたことは、miRNA関連の似たような論文が幾つも投稿されてくることです。そしてそれらが偽造論文(papermill products)として出版業界を揺るがし始めていることを知りました。EiCとしてこの偽造論文を見定めてリジェクトすることは必須であり多大な労力を費やしましたし、今も時々投稿されてきていますので気が抜けません。EiCのもう1つの業務はEditorによってアクセプトされた論文の最終チェックです。そこで認識したのは、アクセプトされた論文の完成度のばらつきが大きいことでした。これについてはいろいろな要因がありますが、第一には投稿時の論文の完成度(つまり著者による事前チェックの度合い、研究者間でのcritical readingの有無、英文校正の有無)ですが、その後の査読者のチェックの質と量、Editorのチェックの質と量、も大きく影響します。それらのチェックを済ませてきたものをEiCが見るわけですが、それでも科学的な記述の間違いや英語の間違いが半数以上の論文で見つかります。この問題にEiCはどう対処すべきかが編集会議で大きな議論となり、また理事会でも議論となりました。何故これが大きな議論になったかと言いますと、これまでのDGDの「売り」として「迅速な査読プロセス」を標榜していたことにあります。しかしこの「迅速な査読プロセス」と「論文の質(完成度)の向上」とを両立させることは難しい問題でした。「迅速な査読プロセス」を強く主張する意見では、アクセプトになった論文は仮に科学的に不備の記載の部分があったとしてもそれは著者の責任であり、査読プロセスはきちんと経ているので手続き的には問題なく即座に印刷に送るべき、となります。一方私は、DGDが世界に通用する日本の雑誌であるとJSDB会員が誇れるものにするには「論文の質(完成度)の向上」は欠かせないという立場でした。これはDGD Editorial Boardで議論する課題ではありますが、JSDB会員の皆様にとってDGDをどのような雑誌にしたいかという本質的な問題でもあります。
この3年間いろいろありましたが、DGDの論文の質は格段に良くなっていると自負しています。また以前は掲載論文の多くは総説でしたが、ここ1、2年は原著論文が数多く出版されていることも大きな変化です。そして2021年のImpact Factorはついに3を超えました。これは幾つかの好条件が重なったことで達成したと考えられますので、今後も上がった下がったで一喜一憂するものではないのですが、めでたい事には変わりません。
最後に、2019年の夏から始めましたDGDの改革に多大なご協力をしていただきました多くの方々に深く感謝申し上げます。特に第三期編集会議メンバーとして私を支えてくださいました鈴木孝幸博士と池谷真博士、並びにassistant editorとして多大なるご協力をくださいました近藤真理子博士に深く感謝申し上げます。今後もDGDのさらなる発展を祈念して筆を置きます。
2020.02.06
DGD編集主幹メッセージ(最後の編集主幹便り)
2006年の秋頃から13年余編集主幹を務めて参りましたが4月から平良眞規氏が引き継ぐことになっています。
私が引き継いだ年のインパクトファクターは1.5でしたので、まず考えたのはインパクトファクターをあげることでした。そのために、著名な方々に総説を依頼すると共に特集号を出そうと思いました。最初の特集号は再生特集号だったと思います。また、2008年にはDGDが50巻を迎えるので、50巻特集号を発行すべく、学会にも特別予算を組んで頂きました。阿形さんが岡田節人先生にインタビューして発生生物学会の歴史に関する記事と共に、それまで発生生物学会を引っ張ってこられた方々が論文を投稿して下さり、非常に良い特集号ができたと思っています。Nicole Le Douarin先生にも依頼したら快く書いて下さり、ニワトリウズラキメラの歴史についても知ることができます。それからも9号/年のうち、二つの号は特集に回すことを考え、大会のシンポジウムのorganizersにお願いして、editorになっていただき、そのシンポジウムを中心に関連のある研究者を加えて特集を発行しました。通常号にも総説を入れるべく、面白いoriginal paperを書いた方、あるいは大会でおもしろい発表をした方々に総説の執筆を依頼しました。幸い、特集のeditor、また総説を依頼したほとんどの方が快く引き受けて頂きDGDを充実させることができたと思っています。そのかいあって2008年(発表は2009年)から2016年までインパクトファクターは2を超えることができたと思っています。ただ、2017、2018年とまた1点台に落ちています。
私が編集長になった頃まで、科研費の出版補助は直接出版の費用に充てることが出来、科研費はそのままWileyに支払われていました。しかし、2008年に毎年競争入札をすることという条件がつきましたので、それでは出版できないと思い、相澤会長と一緒にWielyと交渉して、学会員へのDGDの配布は希望者だけにして支払いを少なくし、一方ではRoyaltyをあげてもらい、さらに編集サポートも頂くと言うことに落ち着きました。Wileyとは契約更改をしたばかりでしたが、途中で契約見直しに応じていただきました。危機が転じて福となったと思います。その後、紙媒体を廃止しましたので、出費がさらに減ることになりました。
科研費に関しては数年前から出版費用ではなく、DGDの戦略的な事業等に使えるように変更されました。現在はDGDをアジア、オセアニアでのハブジャーナルとすべく補助を受けていますが、引き続き補助を受けられることを願っています。
数年前からDGDへの投稿者が減っています。それは、open access journalが増えたこと、博士課程の大学院生の数が減ったことなどが原因と考えられます。さらに、研究費のサポートも応用面を重視する傾向にありますので、それも発生学の基礎を重視するDGDへの投稿が減っている原因とも考えられます。それは、DGD論文の引用数の減にもつながりインパクトファクターの低下につながっていると思われます。
DGDは先人達の努力により、国際的にも認められているjournalだと思っています。私がパリに留学した40年前にも研究所の図書室にDGDがおいてあり、うれしく思ったものでした。Wileyもそのことを評価しており、危機に直面したときなども相談に乗ってくれたものと思っています。Dev Cell, Genes Dev, Development, Dev Biol, Dev Dyn等のクラシカルな発生生物学のjournalも軒並みインパクトファクターの低下に直面しています。こういう困難な局面を次期編集主幹の平良氏を中心に学会役員、学会員の方々の協力で乗り切ってほしいと思います。
2018.06.18
DGD編集主幹メッセージ「2018合同大会Wileyランチョンセミナー」
2018合同大会のWileyランチョンセミナーで話された内容を公開いたします。
PDFは、こちらからダウンロードできます。
2017.06.26
DGD編集主幹 メッセージ「DGDの歴史」(2017年6月)
2017年は実験形態学会と日本発生学協会が一緒になって日本発生生物学会が発足してから50年という節目の年であります。この機会にDGDの歴史を振り返ってみました。それぞれの学会が実験形態学誌、Embryologiaという学会誌を持っておりましたが、Embryologiaを引き継ぐ形で1969年の第11巻からDevelopment, Growth and Differentiationと名前を変えております。Embryologiaはずっと佐藤忠雄先生が編集主幹を務めておられましたが、DGDの初代編集主幹は多分それを引き継ぐ形で名古屋大学の椙山正雄先生です。Embryologiaの頃から4号で1巻の形態をとっていましたが、1年に1巻の発行ではなく一つの巻が年をまたいで発行されています。そのため、Embryologiaは1950年から刊行されていますが、DGDは2016年に59巻を刊行中です。1974年から1981年まで岡田節人先生が2代目の編集主幹を務めておられますが、その間に、一年一巻制になり、一巻4号制から一巻6号制になっています。刊行論文数もおよそ30論文/巻から60論文へと増加しています。また、国外からの論文掲載もおよそ10%程度から20%程度へと増えています。論文数が増加したことを考えると国外からの論文数は4倍ほど増加したといえます。この岡田編集主幹時代に安定した刊行と国際化が進んだといえると思います。現在は世界中からの投稿があり、国際化は進んでいます。
初期の頃DGDの発行は今では想像もつかないような大変なことだったことが学会のサーキュラーに記されています。印刷のみを外注して編集、配布等すべてを学会が行っていたようです。そのため、岡田節人先生が編集主幹の時、広島大学の天野實先生に幹事を依頼し、出版社も名古屋から広島の大学出版に変え、天野先生が印刷所との交渉、校正などを行っていたようです。京都で一号分の編集が終わると、岡田研の学生がすべての原稿を広島に運んでいた事が天野先生の回顧録に書いてあります。また、DGDの製本印刷費が高く学会の会計を逼迫させていました。科研費の出版補助は受けていましたが、学会の年会費を上げ、DGD基金を創設して寄付を募ったり、学会で日本語の単行本を出版したり、またテレホンカードを販売したりしていましたがそれでも危機的状況でありました。1986年から海外でのDGDの販売はAcademic Pressを介して行われる様になり、海外でのDGDの頒布は増えましたが、円高が進んだため、経済的には苦しいままでした。
大きな転機はDGDの刊行(出版、販売)をBlaclwell社で行うという契約を結んだことです。これは江口吾朗会長、長濱嘉孝幹事長、星元紀編集主幹時代にBlackwellと交渉して大枠で合意し、実際の契約は岡田益吉会長が行っています。この時、編集方針等はすべて学会にあり、Blackwell社はそのことには干渉せず、刊行、販売をおこなうという条件で契約を結ばれたことは非常に大事なことだったと思います。このことにより経済的な問題は解決され、暫くは順調にDGDの出版が続くことになります。
次の危機は2008年に文科省が科研費補助の条件を変えたときです。DGDは継続的に科研費の補助を受けて来ておりBlacwell社から出版するようになってからは科研費補助とBlackwllからのRoyaltyがBlackwellに支払う出版費用とほぼ釣り合っておりました。しかし、2009年からは科研費の補助を受けるなら出版社を競争入札で決めることという条件がついており、Blackwellと安定的な出版契約を結んできたDGDとしては出版の危機を迎えることとなりました。これは、私が編集主幹になって2年目のことでしたが、相澤慎一会長と一緒になってBlackwellと交渉に当たりました。その結果Royaltyをあげること、それまで学会員全員に送っていたDGDを希望者のみに送ることという条件で科研費の補助を受けなくても出版を継続できることになりました。さらに57巻からは印刷をやめ、onlineだけの発行になっており、現在ではDGDはかえって黒字となっています。Online journalとなっても年9号発行する形はとっています。科研費の方針はさらに変わって、現在は国際情報発信と言うことで科研費補助を受けています。
現在、ジャーナルの影響力を示す指標としてインパクトファクター(IF)があります。ちょうど2016年のIFが発表されたところです。IFがどのように算出されるかと言いますと、たとえば2016年のIFですと、2014年と2015年に発表された論文の2016年の間の総引用数を2014年と2015年の論文数で割ったものです。ここ20年ほどの関連ジャーナルのIFをグラフにしてみました。
これをみると発生関係のジャーナルのIFが軒並み下がってきているのがわかります。Dev CellやIFが20を超えたこともあるGene Devが10を下回り、Developmentも5点台になっています。DGDは1点台を推移していましたが、ここ10年近く2点台を保っていて、Dev Dyn, Genesis, Int J Dev Biolなどとだいたい同じIF値になっています。20年程前にはかなり上にあったジャーナルと肩を並べていますが、これには特集号や総説論文が貢献しています。特集号を編集して下さった先生方、総説をご寄稿下さった先生方に感謝致します。
DGDは発生生物学会の歴代の会長、編集長や会員の方々の涙ぐましい努力により国際誌としての地位を保ち、評価されるジャーナルとして存続してきました。Open access journalが増え、伝統的なジャーナルをどのように維持していくかという大きな問題はありますが、会員の皆様には自分たちのジャーナルという意識をもって、論文の投稿、またDGD論文の引用をお願いします。会員諸氏からご自身の研究の進展を訴えるための総説のご投稿、また特集号のご提案を歓迎します。
2015.06.22
DGD編集主幹 メッセージ
2014年のインパクトファクターが発表されましたが、DGDのIFは今までで一番高い2.42となり、発生生物学分野の雑誌41誌中26位で、DD, MOD, Dev Genes Evolなどとほぼ同じ位置にランクされています。また、山本卓教授によって編集されたGenome Editingの特集のインパクトが大きく、Immediacy Index(2014年の論文が2014年にどれだけ引用されたか)が1.2で、5位にランクされています。
一方でDevelopment, Dev Biolなどの伝統的な発生学のjournalのIFは低下傾向にあり学界としては憂慮すべきものだと思っています。私自身の経験からいうと、これらのJournalsはいちゃもんに近いようなコメントがあって、acceptまでにかなりの時間を費やし、論文としてはまとまったものになったかもしれないけど、結果の斬新さという意味での時間のインパクトがかなり下がってしまったということが何回か有りました。DGDはこのようなことを避け、いちゃもんに近いコメントには答えなくてもacceptして刊行するよう努力しているつもりです。DGDの投稿からacceptまでの時間はかなり短いものだと自負しています。
これと平行して中川真一さんが6月2日の掲示板で提言しているコアになる雑誌を創刊せよという学界全体として考えるべき問題があります。このことは多くの研究者が思っていることではありますが、現状を考えると実現はなかなか難しい問題です。各学会間の調整、出版社との関係などの問題があり、それらを克服して新しい雑誌を創刊できても投稿者の意識の問題もあります。我々の手で作った雑誌だから、Nature, Cell, Scienceよりもまず我々の雑誌に投稿するんだというコミュニティの合意がないと成功は難しいものです。この問題にどう対処するか、すぐに答えが出ものではありませんが、学会として対応していくべき問題だと思っています。
学会が推し進めたグローバル化の効果が出てきて、DGDの投稿者もグローバル化しています。また2015年から5年間DGDは科研費成果刊行促進費の国際情報発信強化としての補助を受けることになっています。アジア、オセアニアのハブジャーナルとしての情報発信を強化するという提案が認められたもので、グローバル化をさらに推し進めDGDをさらにブランド化していく助けになるものです。DGDのブランド化ためには投稿数の増加と、DGDの論文の引用が必須です。会員の皆様からの投稿をお待ちしています。