2019.09.24

夏季シンポジウム2019 参加報告書 矢ケ崎怜(京都大学)

京都大学理学研究科
修士課程2年 矢ヶ崎 怜
9月2日から4日にかけて日光・両生類研究所で行われた夏季シンポジウムに参加させていただきました。
院生向けの夏季シンポジウムだと聞いた瞬間、行くことを決めました。口頭発表をしたことがなかったため、良い練習になると考えていました。この段階での私の目的は、口頭発表の経験を積むこと、自分の研究についてアドバイスいただくことでした。しかし、実際にはもっと多くのことを体験し、吸収することができました。
一つ目は参加前の準備です。参加決定以降、改めてこれまでの研究を振り返り、どういう発表するかを考えました。日々目先のデータに囚われていましたが、もう一度研究の目的そしてデータを見つめ直す良いきっかけになりました。
二つ目はシンポジウム期間を通していただいた多くのアドバイスです。当初、私は自身の研究へのアドバイスをいただくことばかり考えていましたが、ここでいただいたアドバイスは多岐にわたっていました。例えば、スライド作成や発表の流れ、研究の伝え方、そして今後研究者としてどう研究をしていくべきか、どうしたら面白い研究ができるかなどです。三日間一緒に過ごす、このシンポジウムだからこそ、いただけたアドバイスだと思っています。
そして、三つ目はこの出会いです。普段お会いすることのできない先生方や同じ学生の皆さんにお会いし、話すことができ、たくさんの刺激を受けました。また最終日の両生類研究所で行われている保護活動の視察では、サンショウウオをみんなで夢中になって捕獲しました。先生や学生関係なく、ただ生物が好きなメンバーで過ごした、楽しい思い出です。
次回お会いする際には、成長した姿が見せられるよう、研究に励みたいと思います。

最後になりましたが、このような機会を設けていただいた運営側の方々に心より感謝申し上げます。
2019.09.24

夏季シンポジウム2019 参加報告書 高橋厚弥(中部大学)

中部大学
高橋厚弥
学会から旅費支援をいただき、9/2-9/4 に日光の日本両棲類研究所で行われた夏季シンポジウムに参加してきました。遠方から参加する身としては非常にありがたく、厚く御礼申しあげます。

元来、こういった「少数精鋭」の催しには尻込みしてしまう性格なのですが、オーガナイザーの先生が以前ポスター発表を聞きに来てくださったという一点のみを頼りに、周囲の先生の勧めもあって思い切って参加することにしました。特に、今年のシンポジウムでは、発表を若手のみに限った上で、発表25分、質疑応答20分という非常にタフな設定がされており、心理的なハードルは高いものでありましたが、参加して本当に良かったと思います。特に、同じ分野に取り組む幅広い年代の方々とお話しすることができ、人の繋がりを持つことができたことは大きな収穫でした。

1日目と2日目に行われた研究発表では、参加した方々の研究内容や研究材料も様々でしたが、どの発表者も質疑応答の時間が足らなくなるぐらい活発な議論が行われ、大いに刺激を受けることができました。かくいう自分は、自らの不勉強と拙さを痛感するばかりでしたが、普段の研究室とは異なる視点から忌憚のないご意見やご質問をいただき、今後の研究を考える上で非常に濃密な時間を過ごすことができました。山椒魚もまだ小さいうちに、たまには岩屋から外に出て、自らの大きさを理解することが必要であったわけです。少しでも意欲のある方は、まだ「若手」のうちにこういう機会を積極的に利用することをおすすめしたいと思います。

また、2日目の討論会では、白紙に書き込みながら15分ごとに3回メンバーを変えるという意欲的な形式もあり、発生生物学の将来から研究テーマの選び方、はては人生相談まで活発なディスカッションが行われました。最終的には「自分の面白いと思うことを研究すべし」という結論に至ったわけですが、そのことは3日目のサンショウウオ保全施設の視察で、パネリストの先生方自ら、先陣を切ってクロサンショウウオ採集に熱中しているのをみて、改めて強く感じたわけであります。

最後になりましたが、本シンポジウムをオーガナイズしてくださった守野先生、入江先生をはじめ、お忙しい中参加してくださったパネリストの先生方、事務局の桃津さん、日本両棲類研究所の皆さまに心よりお礼申し上げます。特に、会場になった日本両棲類研究所は、プライベートの研究所であるにも関わらず、このシンポジウムのために新たに周囲の道を切り開いていただいたなど、多大なるご支援をいただいたとお聞きしました。この4月に40年ぶりに再オープンしたばかりの研究所は、中禅寺湖の湖畔にたたずむ赤い三角屋根が目印です。日光の近くまでお寄りの際は、ぜひ巨大なチュウゴクオオサンショウウオやアカハライモリたちに会いにいっていただければと思います。
2019.09.20

夏季シンポジウム2019 参加報告書 阪村颯(大阪大学)

大阪大学 理学研究科
D1 阪村 颯
皆さんは、多くのサンショウウオに囲まれながら研究発表したことがありますか?部屋に入って、最初に目に飛び込んだのは、都道府県ごとに区切られたブースの中にいる無数のアカハライモリ。奥へ進むと壁一面にたくさんの種類のサンショウウオが展示されており、その可愛さに魅了されました。極めつけは、岩かと思うくらいに大きなチュウゴクオオサンショウウオ。呼吸のために水面に顔を出している姿は威厳さえ感じました。一通り見終わった後、前方を向くと、モニターが設置されていて、私はここで発表するのだと認識しました。

今年の日本発生生物学会夏季シンポジウムは、栃木県日光市にある日本両棲類研究所で行われました。所属・学年を問わない発表者と、パネリストの方、合わせて二十名ほどの人数で、自らが行っている研究の議論を交わしました。今回のシンポジウムでは、発表25分、質疑応答20分と通常の学会に比べ、時間が大変長く設定されていました。そのため、発表者の方々は、自分の研究を隅から隅まで発表し、質疑応答では、時間いっぱいまで議論が続きました。このような量も質も兼ね備えた議論をできる機会は、これからもうないだろうと思えるほどに、素晴らしい内容であったと思います。私自身も、発表・議論を経て、多くの反省点が見つかり、今後の研究をブラッシュアップする手がかりが得られました。

今回のシンポジウムの良い点は、それだけではありません。発表会場から、階段を上がって二階に行くと、雰囲気のいいカフェになっていました。今夜の懇親会会場です。良いロケーションで、美味しいお肉とお酒とともに、立場を超えて話し合うことができて、とても濃い時間を過ごすことができました。また、最後の発表が終わった後は、「発生学はどこへ向かうべきか」について、議論しました。多様な考えを持つ方々と議論することで、自分の研究哲学を整理できる機会となったため、これからの研究生活の参考にしていきたいです。最終日には、日光の山中に入っていき、サンショウウオとヒキガエルの採取ツアーに行きました。希少なサンショウウオが、実際に自然の中で生きている姿は、とても貴重な光景だったと感動しています。

今回のシンポジウムでは、これからの研究人生に欠かせない貴重な経験をさせていただきました。素晴らしい会場で、濃い経験をさせていただいき、個人的には大満足です。最後に、シンポジウムの世話人をしてくださった、守野孔明先生、入江直樹先生には、大変お礼申し上げます。また、今回のシンポジウム参加にあたり、旅費支援をいただきました。重ねてお礼申し上げます。
2019.09.20

夏季シンポジウム2019 参加報告書 鈴木智佳(筑波大学・下田臨海)

筑波大学大学院 生命環境科学研究科
生物科学専攻(下田臨海実験センター)、JSPS (DC1)
D1 鈴木 智佳
学会から旅費をご支援いただいて、9/2-9/4にかけて、日光にある両棲類研究所で行われた夏季シンポジウムに参加しました。参加する前は、1人あたりの持ち時間が45分間と長いこともあり、気持ち的にやや憂鬱に感じていました(もちろん期待もあったからこそ参加を決意したのですが)。しかし、実際に参加してみると、研究の第一線でご活躍されている先生方や熱意ある若手研究者の皆様を45分間も独占して、自分の研究をアピールできる・議論できる、非常に贅沢な時間だったと感じています。さらに、パネリストの先生方と議論するなかで、自分の現在の到達点と、将来的に到達していたい点・目標とする研究者像が明確になり、研究へのモチベーションをあげる良い機会になりました。発表を準備する段階のしんどさに対し、期待以上の収穫があったように思います。また、普段は脊椎動物を用いた研究が多い発生学会の中で埋もれてしまいがちな、海産無脊椎動物を用いた研究をアピールできたことも収穫の一つであると考えています。
 濃い議論が繰り広げられていた研究発表会に加えて、最終日に企画してくださっていた、野山に分け入ってのサンショウウオの保護地の視察・ヒキガエルハントでは、先生方も含めて全員が子どもに戻ったように楽しんでいました。そんなメリハリのある空気のなかで、リラックスして学ぶことができ、存分に楽しむことができました。この会に携わってくださった方々と貴重な時間を共有できたこと、また、つながりを持てたことは何よりの財産です。
 末筆ながら、今回この会をオーガナイズしてくださいました守野先生と入江先生、パネリストの先生方、篠崎先生をはじめとした両棲類研究所の皆様、事務局の桃津さんに心より御礼申し上げます。来年度以降企画される際には、対象となる若手の学生や研究者の方々には是非参加をお勧めします。絶対にプラスになる刺激に溢れている会だと思います!
2019.06.04

The 52nd annual meeting of the JSDB by Li Zhuojie

Li Zhuojie
(Tongji University)
I were very honored to participate in the 52nd JSDB which was held in Osaka on May 14th.
I listened to the wonderful speeches of every teacher and student, not only learned a wealth of academic knowledge, broadened my horizons, but also let me know the gaps and deficiencies in my research work.
Under the careful arrangement of the organizers of the conference, we not only listened carefully to the wonderful speeches of the reporters. At the same time, we also presented our research progress in the form of posters, and conducted in-depth exchanges and discussions. Through various forms of sharing and communication, I have learned the cutting-edge progress in this field of research and the future direction. Many scientific researchers has provided their new scientific ideas and experimental methods, opening a new door for my future research work.
Finally, I would like to appreciate JSDB for providing us with a good chance and providing fellowship for me.
2019.05.30

The 52nd annual meeting of the JSDB by Ding Xiang

Ding Xiang
(SLST, Tongji Univ, IIV, Shanghai Tenth Hosp)
The 52nd Japan Society for Developmental Biology was held in Osaka, Japan on May 13, 2019. It was my fortunate to have participated in the conference and presented the posters. And it is my honor to accept the fellowship provided by 52nd Annual meeting for JSDB. Thank you for the JSDB fellowship program.
The organization was carefully organized and arranged to make you feel the atmosphere and enthusiasm of the international conference. I listened to the wonderful speeches of every teacher and classmate. I not only learned a wealth of academic knowledge, but also broadened my horizons. I learned more about my colleagues in the same direction, learned about other laboratory research methods and methods, and defined my own. Some advantages and disadvantages learned from each other enhance the level of my own scientific research.
The Japanese Society for Developmental Biology has specially invited editors and reviewers from journals related to developmental biology to explain the techniques for writing and submitting papers. The abstract of science and technology is the essence. It should be brief and logical, and concisely introduce the main content of this article. The preface mainly states the background of the research field and explains its central idea or importance. The various aspects of the research area have been specifically addressed, paving the way for known information. Point out the necessity of further research, give the author's research objectives, or outline the research content or research findings. And pay attention to three points. First, what is the research result of this paper, and what does the research result mean? Second, who needs to understand the results of these studies? Third, why do these readers need to understand your research results? (These results contribute to the ongoing research work in this area). During the meeting, everyone also discussed and exchanged the problems and precautions in the submission process. I have gained a deep understanding of the entire paper writing and submission process, and benefited a
2019.05.19

The 52nd annual meeting of the JSDB by Tzu-Chuen Lin

Tzu-Chuen, Lin
(Dept. of Anat. & Cell Biol., NTU, Taipei, Taiwan)
52th annual meeting of Japanese Society of Developmental Biology (JSDB) is scheduled to hold in Osaka International House through May 14-17, 2019. The place it held was very kindly for scholars to have chances to choose other living places in Osaka, because it is close to two stations, Osaka Metro Tanimachi Line Shitennoji-mae Yuhigaoka station and Kintetsu Railway Osaka Uehommachi station. JSDB cooperates with Asia-Pacific Developmental Biology Network (APDBN), so there are many Asia-Pacific Areas experts, scholars, or students in this area of developmental biology participating in the meeting. Apart from Asia, lots of scholars from all around the world such as the united states, Canada, and Europe also have academic publications.
I am now a graduate student from graduate institute of anatomy and cell biology, National Taiwan University. This time, I took part in the poster presentation. The topic of my poster is about the expression patterns of neuronal intermediate filament α-internexin in the developing pineal gland of Hoplobatrachus rugulosus. The result of our study showed that photoreceptor marker, recoverin and XAP1, could be observed in the development of both retina and pineal gland of frog. The expression of recoverin decreased slightly following the developmental pineal gland, while the expression of XAP1 increased a little from our observations. Whereas, the α-internexin-like protein, ina.S and nif.S, could be detected only in few photoreceptor-like cells at the early stage pineal gland. In conclusion, we suggested that XAP1 is a good marker for studying the photoreceptor cells in the developing pineal gland of frog.
This May, I participated in the 52th annual symposium held by JSDB in Osaka and it is quite different from other meetings I have joined in Taiwan. It is also my first time to go abroad to take part in an international meeting. It really means to me. Through this event, I learned a lot from many outstanding scholars who work hard in various developmental fields all over the world and this widened my views. Finally, I really appreciate that JSDB can keep using APDBN as the platform continuously invited scholars from related fields in Taiwan or even worldwide to participate in the annual meeting in Japan. It will make a significant contribution to the long-term development of academic exchange between Taiwan and Japan.
2019.04.17

2018合同大会 若手最優秀賞 ミーティング見聞録 佐奈喜祐哉(京都大学)

佐奈喜祐哉(京都大学生命科学研究科)
2018年度 若手最優秀賞の副賞として助成金を頂き,2018年12月から2019年2月まで共同研究のためフランス・パリにあるキュリー研究所に出向しましたのでご報告します.
 キュリー研究所はノーベル賞受賞者のマリーキュリーが立ち上げた研究所で,来年で創立100周年を迎えます(同ノーベル賞受賞者で,夫のピエールキュリーは研究所創設前に交通事故で亡くなっています).ご存知の通り,キュリー夫人は放射能の研究で1度目のノーベル賞を受賞しています.このノーベル賞がきっかけとなり研究所が設立され,当初研究所の目的は放射能研究がメインだったそうです.その後,放射線ががん治療に有効であることが発見され研究所のミッションは徐々にがん治療に移っていきます.現在では,キュリー研究所のミッションはがん研究,およびがん治療に大きなウエイトを持ち,病院部門と研究部門が設置されています.病院部門はがんの専門病院として知られ,特に小児がんの治療実績が有名なようです.私が出向したのは研究部門の一つである発生/がん生物学に特化した部門です.Webページを見てみると,ここには10のラボがあるのですが必ずしもがんと関連のない基礎研究をメインとしているラボが多いようです.個体発生で見られる細胞増殖や細胞分化を理解することで,将来的にがんをコントロールすることに役立てば良いというのが理念だそうですが,各々の研究プロジェクトにがん治療を明示的に出すことはなく,その必要もないそうです.つまり,研究所の目的に沿うために研究をするというよりは,それぞれの研究室もしくは研究者が自由に研究を進め,生命の理解を深めることが一番重要なようです.がんの理解や治療を目指している研究所にも関わらず,がん研究に集中しななくても良い,無理矢理でもがんに関連させる必要がないというスタンスに感動しました.基礎研究によって人類の持つ知識のすそ野を広げることで,将来的にはがん治療などの応用につながるという考えが研究を進める側でも,資金を提供する側でも,当たり前に受け入れられているようです.
研究所の至る所でキュリー夫人を見かけ,写真のようなおしゃれなポートレートや銅像などあらゆる形態で登場する.どのキュリー夫人も笑みはなく,しっかり研究を進めろと言っているような気がする.

 また現所属とキュリー研究所での大きな違いは,セミナーの多さです.研究所やユニットでは毎週2?3つのセミナーや小規模な学会が開催されていたので,その気になれば1週間丸々セミナー漬けにすることも可能です.それぞれのセミナーの内容は,基礎研究から,がんの臨床まで様々なものが開かれていました.滞在中一番面白かったセミナーは"Evolution and Cancer"と銘打たれたもので,がんのクローン進化と薬剤耐性を関連づけた話や,どの動物種ではがんが起こるのか/起こらないのかを論じるトークなど,ここに書ききれないほどバラエティ豊かな視点からがんを理解する場になっていました.総じて感じたことは,普通の研究所では自然と抱いてしまう基礎研究とがん治療のギャップを埋めるように,もしくはそもそもそのようなギャップを抱かせない環境を作るよう研究所自体が運営されているのかも知れません.ともあれ,一つの研究所,一つの研究室で基礎研究と応用研究が自然に融合している姿を目の当たりにして,がんの基礎研究に興味のある私としては贅沢な場に身を置けたと感謝するしかありません.
右奥のガラス張りの建物が所属するキュリー研究所のユニット.右手前は別の生物系研究所,左は化学系の学校で奥は地学/海洋学の学校.キュリーのあるパリ5区では,ちょっと歩くと頻繁に何かのラボを見かけます.伝統的なヨーロッパ建築だな,と思って建物の中を見るとウエスタンブロットをしていたりして面白いです.

 2ヶ月間フランスで過ごしてみると,日本とフランスでは研究室/研究所の運営方法にいくつか違いがあることに気づきました.日本の大学や研究所では,同じフロアにいくつか研究室が入っていると思いますが,同じフロアの研究室に関連性は特にないかと思います.そのため,隣のラボの人と実験中に頻繁に顔をあわせることは少なく,飲み会や学会などでちょっと見かけるくらいなのではないかと思います.一方,キュリー研究所では同じフロアに同じモデル生物を使うラボをまとめていて,新しいPIをリクルートする際にも今の研究所との親和性が大きな評価ポイントになっているそうです.同じモデル生物でまとめられるからこそ,フロア内に共通の設備を設置し,実験中に他のラボの人と顔をあわせるタイミングが頻繁にありました.例えば,私はショウジョウバエのラボに所属していて,ハエの実験では麻酔台と実体顕微鏡のセットが必ず必要になります.キュリー研究所では,このセットが十数台設置されたFly roomがあり,そのフロアのラボ全員がこのハエ部屋に集まり実験をしています.また,DNAやタンパク質の泳動ゾーンも一角にまとめられていて共通設備として使われていました.この運営方法は非常に合理的で,一つ一つのラボが同じ設備を持つと生じてしまう設備利用の機会ロスが極端に少なくなっています.さらに別の利点としては,他のラボの人でも誰がどんな研究をしているのかなどの会話に発展しやすくディスカッションが生まれやすい,また実験のちょっとしたコツなどもすぐ教えてもらえるので,しょうもない実験のミスでプロジェクトが停滞することを防げているのかも知れません.日本の大学でも共通機器がありますが,ものを共通にするだけでなく,その機械を使う人,同じような実験をしている人が集まる場所や環境を作ることで,金銭的にもプロジェクト的にも効率的に回るよう配慮されているのかも知れません.
 逆にフランスの運営方法の欠点としては,行える実験操作が制限されてしまうことがありました.私の場合,無菌操作をしたかったのですが通常のハエラボではクリーンベンチがないため,実験が完全にストップしてしまいました.一つ下の階には細胞培養をしているラボがあったのですが,細胞培養をしているという資格がないと入れない部屋に設置されているためクリーンベンチだけを借りるということはできませんでした.新しいクリーンベンチを購入しようにも,ベンチを置く場所が所内のどこにもないという,困った事態に遭遇しました.日本の出身ラボでは,幅広く研究を進められるような環境だったので,使いたい機材が利用できず研究が止まるようなことはなく,もしラボに機材がなくても隣のラボにお願いして借りることができました(大変お世話になりました).フランスでは研究所内を合理的に運営するあまり,余裕というかスキがなくプロジェクトを発展させる機会を失っているのかもしれないと感じました.
最後になりますが,今回の渡航を通して,とても多くの方にお世話になっていると気づきました.指導教員の井垣達吏博士,細胞生物学会/発生生物学会の皆様,共同研究を受け入れてくださったピエールレオポルド博士に感謝いたします.滞在中,PIのピエールに関する印象深かったエピソードは,私が少しお金のかかる実験をしてもいいかと聞いたときに,「お前のやりたいことを好きなだけやれば良い,そのためにラボがある」と言われたことでした.かなり放牧主義ですが,自由に研究を進められて,かつポイントポイントでアドバイスをくれる.熟練PIとはこういうものかと印象深かったです.また,細胞生物学会/発生生物学会を運営された先生方に深く感謝し,今後ますますのご発展をお祈りします.将来,発表する立場ではなく運営に携われるようになれればと思いながら,フランスで研究を進めていきたいと思います.
2018.10.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 仝 由悦(東京大学)

東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
動物発生学研究室 修士課程2年
仝 由悦
この度、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成を頂きまして、10月10日―10月13日にドイツで開催された日独合同若手ミーティングに参加致しました。テュービンゲンにてDay 0ワークショップが行われ、続いてウルムで行われたGfe School 2018 に参加しました。

テュービンゲンはドイツ南部に位置し、人口約8万人のうち3万人程を学生が占める古くからの大学都市です。昔ながらの建物が多く現存し、伝統的な街並みが広がっています。Day0 workshopは、テュービンゲンにあるマックス・プランク研究所で行われました。Patrick Muller先生の研究室にお邪魔し、3つのグループに分かれてローテーションしながら、ゼブラフィッシュ飼育施設の見学、ライトシート顕微鏡による撮影、FRAP解析などを体験しました。

 ゼブラフィッシュ飼育施設は、建物の別館一つを占める大規模なものでした。かつてDevelopment誌1冊を占めた、歴史的なゼブラフィッシュ大規模スクリーニングが行われた場所で、まさにこの部屋でその研究が行われたのだと想像すると、感動に似た不思議な気持ちでした。また、自動フィーディング・マシーンを導入した新施設も案内して頂きました。魚の水槽に張られたバーコードを機械が読み取り、成魚と幼魚で餌のやり分けもできるそうです。魚が元気にしているかどうか毎日チェックすることが義務付けられているとのことで、高度にシステム化されていながらも実験動物を大事にする気持ちを改めて確認させられました。確かに、どの水槽の魚も元気に泳いでいて、その生き生きとした姿は心に残りました。

 ライトシート撮影とFRAP解析では、実際に顕微鏡の操作を体験し、それぞれ自作の3D画像構成ソフト、FRAP解析ソフトについて教えて頂きました。特にFRAPは教科書や論文で馴染みの手法でしたが、今回初めて実際の実験をやりました。ゼブラフィッシュ初期胚を模した、こちらも自作のプレートに蛍光試薬をマウントして、FRAPをかけました。実験の道具から解析ソフトまで、必要なものは何でも自作する精神に、以前に聞いた南極観測隊・医療隊員の先生のご講演が思い出されました。南極で学んだ最も大事なことは、足りないモノは何でも自分で作ってしまえばいい、という内容のお話でした。「○○が無ければ、作ればいい。」研究にこそ、この精神が大事だと実感しました。

 Gfe School 2018は、テュービンゲンから電車で2時間ほど離れたウルム郊外にあるSchloss Reisensburgで行われました。Schloss Reisensburgはウルム大学付属の古城で、参加者60人程の合宿形式で、アットホームな雰囲気の中で密度の濃い議論が繰り広げられました。

"Imaging and Modeling Development"をテーマに、3日間に渡り数多くの研究が紹介されました。イメージングの手法や使い方、モデリングとの華麗な合わせ技など、参考になるお話がたくさんありました。メダカやゼブラフィッシュの側線の特徴的なパターンが形成される過程の解明、多数のサンプルを1時間足らずで一気に観察できる手法、目的の組織に到達後もせわしなく動き続ける始原生殖細胞の挙動など、興味深い発表を上げるとキリがありません。また、これまで馴染みの薄かったヒドラやトリボリウムといった生物を扱った研究も印象的でした。一日目と二日目の最後にはポスター発表が行われ、いつも日付が変わる時間まで熱い議論が続きました。私はGfe Schoolの二日目に、"Live-imaging and 3D analysis of zebrafish somite morphogenesis"というタイトルでポスター発表を行いました。色々な方から、細胞レベルの挙動や分化から組織レベルのエネルギー消費や代謝まで、様々な観点からの意見を頂けて、とても勉強になりました。専門の内外問わずどのような話にもついてこられる知識の広さとディスカッション力に圧倒されるとともに、全身でサイエンスと向き合い、楽しむ姿勢にエネルギーをもらったような気がしました。

ワークショップ・ミーティングを通して、新たな学問や手法について知ったり、ドイツの研究者の方々との交流を通してドイツの文化や研究を体感したり、貴重な経験となりました。今回得られた数々の発見や気づきは今後研究の道に向かって進んでいく中で必ず生きてくると思います。来年の発生生物学会では同様な日独若手ミーティングが開かれるそうで、今回知り合った方々と再開するのが楽しみです。

最後になりましたが、このような貴重な機会を頂き、ミーティングを主宰された上野先生、Cantas先生、森本先生、発生生物学会の皆様そして岡田先生に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
2018.10.25

岡田節人基金 海外派遣報告書 間瀬俊(理化学研究所BDR)

理化学研究所生命機能科学研究センター
博士後期課程4回生
間瀬 俊
この度は岡田節人基金若手研究者海外派遣助成に採択いただき、2018年10月10~13日にドイツで行われた「日独合同若手ミーティング(JSDB-GfE young scientist exchange program)」に参加して参りました。このミーティングは、日本発生生物学会(JSDB)とドイツ発生生物学会(GfE)が今年新たに始動させたもので、互いの国の大学院生や若手研究者が交流する場を設け、将来にわたって日独の研究交流の場を充実させることを目指す、記念すべき第一回目の会でした。今年は日本から11名の若手が渡独し、来年2019年5月には、かわってドイツの大学院生・若手研究者を日本に招き、大阪で行われる日本発生生物学会の会期の前後に同様の合同若手ミーティングを行う予定だそうです。これから始まる、日独の学生が互いに相手国を行き来しながら研究交流をする、素晴らしい試みの第一歩に参加することができ、大変光栄な思いです。

今回の旅程は、ドイツ南部のチュービンゲンにあるMax-Planck Instituteで1-dayワークショップに参加し、次いでミュンヘン近くのGunzburgで行われる日独合同若手ミーティングに3日間参加するというものでした。

はじめに、フランクフルト空港での入国審査であった小話をします。入国審査官に目的地を聞かれ、チュービンゲンに行くのだと伝えると「To study?」と聞かれました。そんな感じだと答えましたが、ふと、このような質問をされるような、学術都市として広く認知されている場所が日本にもあるだろうかと思案しました。聞くところによるとチュービンゲンの人口9万人のうち3万人が学生で、先の大戦の戦禍を免れた伝統ある学術都市だそうです。近代的な研究都市である日本の「つくば」ともだいぶ趣が違いました。ドイツの学術の歴史の一端に触れた瞬間でした。

チュービンゲンのホテルに一泊したあと、日本からの参加者と顔合わせをしながら朝食をとり、1-dayワークショップへ向かいました。このワークショップはMax-Planck InstituteのPatrick Mullerグループリーダーのラボの皆さんの厚意で提供された研究体験コースで、3つのイベントを体験しました(ライトシート顕微鏡の体験、FRAP(光褪色後蛍光回復)の体験、ゼブラフィッシュの自動飼育施設見学)。これらの体験は全てPatrickのラボの大学院生が指南役となり教えてくれました。
 はじめにライトシート顕微鏡を使ってゼブラフィッシュの個体全体を高速でライブイメージングする手技を習い、サンプリングから撮影までを体験させてもらいました。サンプルの定位のために蛍光ビーズ入りのアガロースにサンプルを包埋し、自作したソフトウェアを使って4Dイメージを作成する流れを実際に教わり、私自身の研究にも応用できる着想を得ました。
 次にFRAP法で蛍光物質の拡散係数を求める実験を体験しました。使用したZeissの顕微鏡ソフトウェアにはFRAP実験用のモジュールが入っていますが、それは使わずに画像だけ取得し、Patrickラボで自作したソフトウェア(PyFRAP)を使用して詳細な解析をします(Blasle et al., Nat Commun., 2018)。メーカー提供のものに頼らず、必要なものは自作していく姿勢が伺えました。
 最後に歴史あるゼブラフィッシュの飼育施設を見学しました。このキャンパスには1980年代半ばに作られた、当時世界最大のゼブラフィッシュの飼育施設があります。この施設は1995年のノーベル 生理学・医学賞の受賞者の一人であるChristiane Nusslein-Volhardが主導して設立しました。ここで行われた大規模な変異体スクリーニングの成果は、1996年12月のDevelopment誌 Vol.123 に25本の論文を同時掲載するという偉業につながった歴史を知ることができました。今では施設規模がやや縮小されているものの、給餌のオートメーション化が進められており、餌の種類や量、タイミングなどをプログラムできるようになっていました。現在でもこの施設を有効に活用して新しい研究を進めている、過去から未来へ繋がる時代の流れを感じ取ることができました。
 夜はPatrickとPostdocのKatherine、上野直人先生、近藤滋先生、Canvas Alev先生、森本充先生と日本人参加者の一行で、木の香りのする素敵な居酒屋でディナーをいただきました。食べきれないほどたくさんのソーセージや名前のわからない料理たち(色は基本的に黄色か茶色)の乗った大皿を囲み、1Lのビールジョッキを片手に参加者それぞれの生い立ちの話から、「AIを作った人間が、その中身が理解できてないって何やねん」という学者らしい(?)話まで、「食事が終わってからも席を占拠してだらだらと話し続けるのがドイツの伝統だ」という嘘かホントかわからないジョークを聞きながら、楽しい夜が更けていきました。

翌朝はチュービンゲンのダウンタウンを現地ガイドに案内してもらいました。学術都市として発展してきた町の歴史を聞きながら、ハイライトは高台のホーエンチュービンゲン城内にある博物館で、チュービンゲン大学の生化学者であるJohannes Friedrich Miescherが1869年に豚の胃から核酸を初めて精製して命名(ヌクレイン)したことにまつわる展示を見学しました。自作された豊富な実験器具・測量機器を目の当たりにして、クラフトマンシップというか、厳格に目の前のことに打ち込む気質を感じ取りました。

午後は鉄道でミュンヘン近くのGunzburgに移動し、日独合同若手ミーティングの会場である古城Reisensburgへ行きました。聞けばこの古城はウルム大学が1997年より所有していて、学会や会議の場として使用しているそうです。歴史ある石造りの古城の構内で3日間、現代科学の研究発表を聴くという貴重な体験をすることができたことに感動しています。
 今回のミーティングのテーマは「発生現象のイメージングとモデル化」でした。私はNotch1受容体の細胞内イメージングに取り組んでいますが、今回30あった口頭発表の中には、いくつかNotchシグナルを介したパターン形成のモデル化に取り組んでいるものがあり、改めて生命科学の多様な研究対象が有機的につながりあっていることを実感できました。
 この会期中には60人ほどの全参加者が同じ食堂に集い3度の食事を取るため、「毎日5人と新しく知り合い会話を楽しむこと」という目標をGfEのオーガナイザーから与えられたこともあり、たくさんの大学院生やPostdocと交流し、彼らの人柄や大学院での研究環境、将来展望などを聞くことができました。日本とは異なり、ドイツはアカデミアとインダストリーの間の行き来が盛んであるため、彼らが柔軟に(楽観的に?)将来の進路を考えていることや、ドイツのどこの大学に行っても一定水準の予算があるため独創的な研究を進めていくことができることなどを聞き、ドイツの研究環境の強みやしなやかさを認識しました。日本の科学界に散見される、捨て身タックルに見えなくもない一点豪華主義的な「選択と集中」が、他国のシステムの良いところを吸収して改善されていけばいいなと思いました。

今回のミーティングに参加した目的の1つであった、共同研究先を見つけることは叶いませんでしたが、初めのワークショップで画像取得・解析手法に学びが得られたことや、ドイツの活気溢れる若手研究者と個人的なつながりを持ち、ドイツの研究社会への理解が得られたことは大きな収穫でした。ここで得られた学びや気づきは、今後の私の進路で出くわす国際交流の場で必ず生きてくると自負します。

末筆となりますが、このような素晴らしい機会と助成を提供して下さいました上野直人先生をはじめとする日本発生生物学会の関係者の皆様、移動の列車の中で地政学の面白さや日本の科学界について語ってくださったCanvas Alev先生、そしてこのミーティングの参加を後押ししてたくさんの面倒を見てくださった森本充先生に深い感謝の意を表します。有り難うございました。