2017.06.26

DGD編集主幹 メッセージ「DGDの歴史」(2017年6月)

DGD編集主幹:仲村春和
2017年は実験形態学会と日本発生学協会が一緒になって日本発生生物学会が発足してから50年という節目の年であります。この機会にDGDの歴史を振り返ってみました。それぞれの学会が実験形態学誌、Embryologiaという学会誌を持っておりましたが、Embryologiaを引き継ぐ形で1969年の第11巻からDevelopment, Growth and Differentiationと名前を変えております。Embryologiaはずっと佐藤忠雄先生が編集主幹を務めておられましたが、DGDの初代編集主幹は多分それを引き継ぐ形で名古屋大学の椙山正雄先生です。Embryologiaの頃から4号で1巻の形態をとっていましたが、1年に1巻の発行ではなく一つの巻が年をまたいで発行されています。そのため、Embryologiaは1950年から刊行されていますが、DGDは2016年に59巻を刊行中です。1974年から1981年まで岡田節人先生が2代目の編集主幹を務めておられますが、その間に、一年一巻制になり、一巻4号制から一巻6号制になっています。刊行論文数もおよそ30論文/巻から60論文へと増加しています。また、国外からの論文掲載もおよそ10%程度から20%程度へと増えています。論文数が増加したことを考えると国外からの論文数は4倍ほど増加したといえます。この岡田編集主幹時代に安定した刊行と国際化が進んだといえると思います。現在は世界中からの投稿があり、国際化は進んでいます。

 初期の頃DGDの発行は今では想像もつかないような大変なことだったことが学会のサーキュラーに記されています。印刷のみを外注して編集、配布等すべてを学会が行っていたようです。そのため、岡田節人先生が編集主幹の時、広島大学の天野實先生に幹事を依頼し、出版社も名古屋から広島の大学出版に変え、天野先生が印刷所との交渉、校正などを行っていたようです。京都で一号分の編集が終わると、岡田研の学生がすべての原稿を広島に運んでいた事が天野先生の回顧録に書いてあります。また、DGDの製本印刷費が高く学会の会計を逼迫させていました。科研費の出版補助は受けていましたが、学会の年会費を上げ、DGD基金を創設して寄付を募ったり、学会で日本語の単行本を出版したり、またテレホンカードを販売したりしていましたがそれでも危機的状況でありました。1986年から海外でのDGDの販売はAcademic Pressを介して行われる様になり、海外でのDGDの頒布は増えましたが、円高が進んだため、経済的には苦しいままでした。

 大きな転機はDGDの刊行(出版、販売)をBlaclwell社で行うという契約を結んだことです。これは江口吾朗会長、長濱嘉孝幹事長、星元紀編集主幹時代にBlackwellと交渉して大枠で合意し、実際の契約は岡田益吉会長が行っています。この時、編集方針等はすべて学会にあり、Blackwell社はそのことには干渉せず、刊行、販売をおこなうという条件で契約を結ばれたことは非常に大事なことだったと思います。このことにより経済的な問題は解決され、暫くは順調にDGDの出版が続くことになります。

 次の危機は2008年に文科省が科研費補助の条件を変えたときです。DGDは継続的に科研費の補助を受けて来ておりBlacwell社から出版するようになってからは科研費補助とBlackwllからのRoyaltyがBlackwellに支払う出版費用とほぼ釣り合っておりました。しかし、2009年からは科研費の補助を受けるなら出版社を競争入札で決めることという条件がついており、Blackwellと安定的な出版契約を結んできたDGDとしては出版の危機を迎えることとなりました。これは、私が編集主幹になって2年目のことでしたが、相澤慎一会長と一緒になってBlackwellと交渉に当たりました。その結果Royaltyをあげること、それまで学会員全員に送っていたDGDを希望者のみに送ることという条件で科研費の補助を受けなくても出版を継続できることになりました。さらに57巻からは印刷をやめ、onlineだけの発行になっており、現在ではDGDはかえって黒字となっています。Online journalとなっても年9号発行する形はとっています。科研費の方針はさらに変わって、現在は国際情報発信と言うことで科研費補助を受けています。

 現在、ジャーナルの影響力を示す指標としてインパクトファクター(IF)があります。ちょうど2016年のIFが発表されたところです。IFがどのように算出されるかと言いますと、たとえば2016年のIFですと、2014年と2015年に発表された論文の2016年の間の総引用数を2014年と2015年の論文数で割ったものです。ここ20年ほどの関連ジャーナルのIFをグラフにしてみました。
これをみると発生関係のジャーナルのIFが軒並み下がってきているのがわかります。Dev CellやIFが20を超えたこともあるGene Devが10を下回り、Developmentも5点台になっています。DGDは1点台を推移していましたが、ここ10年近く2点台を保っていて、Dev Dyn, Genesis, Int J Dev Biolなどとだいたい同じIF値になっています。20年程前にはかなり上にあったジャーナルと肩を並べていますが、これには特集号や総説論文が貢献しています。特集号を編集して下さった先生方、総説をご寄稿下さった先生方に感謝致します。

DGDは発生生物学会の歴代の会長、編集長や会員の方々の涙ぐましい努力により国際誌としての地位を保ち、評価されるジャーナルとして存続してきました。Open access journalが増え、伝統的なジャーナルをどのように維持していくかという大きな問題はありますが、会員の皆様には自分たちのジャーナルという意識をもって、論文の投稿、またDGD論文の引用をお願いします。会員諸氏からご自身の研究の進展を訴えるための総説のご投稿、また特集号のご提案を歓迎します。
2015.06.22

DGD編集主幹 メッセージ

2014年のインパクトファクターが発表されましたが、DGDのIFは今までで一番高い2.42となり、発生生物学分野の雑誌41誌中26位で、DD, MOD, Dev Genes Evolなどとほぼ同じ位置にランクされています。また、山本卓教授によって編集されたGenome Editingの特集のインパクトが大きく、Immediacy Index(2014年の論文が2014年にどれだけ引用されたか)が1.2で、5位にランクされています。
 一方でDevelopment, Dev Biolなどの伝統的な発生学のjournalのIFは低下傾向にあり学界としては憂慮すべきものだと思っています。私自身の経験からいうと、これらのJournalsはいちゃもんに近いようなコメントがあって、acceptまでにかなりの時間を費やし、論文としてはまとまったものになったかもしれないけど、結果の斬新さという意味での時間のインパクトがかなり下がってしまったということが何回か有りました。DGDはこのようなことを避け、いちゃもんに近いコメントには答えなくてもacceptして刊行するよう努力しているつもりです。DGDの投稿からacceptまでの時間はかなり短いものだと自負しています。
 これと平行して中川真一さんが6月2日の掲示板で提言しているコアになる雑誌を創刊せよという学界全体として考えるべき問題があります。このことは多くの研究者が思っていることではありますが、現状を考えると実現はなかなか難しい問題です。各学会間の調整、出版社との関係などの問題があり、それらを克服して新しい雑誌を創刊できても投稿者の意識の問題もあります。我々の手で作った雑誌だから、Nature, Cell, Scienceよりもまず我々の雑誌に投稿するんだというコミュニティの合意がないと成功は難しいものです。この問題にどう対処するか、すぐに答えが出ものではありませんが、学会として対応していくべき問題だと思っています。
 学会が推し進めたグローバル化の効果が出てきて、DGDの投稿者もグローバル化しています。また2015年から5年間DGDは科研費成果刊行促進費の国際情報発信強化としての補助を受けることになっています。アジア、オセアニアのハブジャーナルとしての情報発信を強化するという提案が認められたもので、グローバル化をさらに推し進めDGDをさらにブランド化していく助けになるものです。DGDのブランド化ためには投稿数の増加と、DGDの論文の引用が必須です。会員の皆様からの投稿をお待ちしています。
2014.12.13

DGD完全オンライン化のご案内

いつも学会活動にご協力いただきありがとうございます。
第47回総会におきまして2015年(Vol.57)よりDGDの完全オンライン化について審議が行われ、承認されました。今まで、お手元にDGDの冊子体が届くのを楽しみにされていた会員には申し訳ないのですが、これにより今月届くvol.56, No.9をもって冊子の送付は終わることになります。
※第47回日本発生生物学会総会議事録参照
http://www.jsdb.jp/news/etc/etc280.htm


2015年からは完全オンライン化となります。
閲覧にあたりましては事前にWiley Online Libraryへのご登録をお勧めいたします。登録方法は以下をご参照の上、お手続きをお願いいたします。
※DGDオンライン版の閲覧方法について(2010.08.11更新)
http://www.jsdb.jp/dgd/p07.html

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会員の皆様はWiley Online Library上で、最新号を発行と同時に閲覧(オンラインアクセス)いただけます。 オンラインでの閲覧には初回のみ簡単な登録手続きが必要となります。
① すでに登録済みで、閲覧利用している場合:
以前Wiley InterScience に登録済みでDevelopment, Growth & Differentiationの閲覧利用をしている場合、再登録の必要はありません。
・新URL: http://wileyonlinelibrary.com/journal/dgdからご利用ください。
・右上の【LOGIN】欄にWiley InterScienceのアカウントメールとパスワードを入力してください。
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② 登録はしたが、閲覧利用したことがない場合:
Wiley InterScience に登録はしたが、Development, Growth & Differentiationの閲覧利用がない場合、 下記ステップBの「会員用DGDホームーページアカウント登録」に進んでください。
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③ Wiley Online Library の新規ユーザー:
Wiley InterScienceに登録したこともDevelopment, Growth & Differentiationの閲覧利用もない場合、
・下記ステップAの「Wiley Online Libraryアカウント登録」を行い、
・次にステップBの「会員用DGDホームーページアカウント登録」で登録を完了してください。 (以下はhttp://www.jsdb.jp/dgd/p07.htmlを参考にしてください)

総会時に質問がありました「完全オンライン化し将来的にリンクが切れるなどの問題があった場合の対応」につきましては、新たにDGDアーカイブシステムを構築し、随時学会のサーバーにデータを蓄積しています。データの開示につきましても独自に行うことが可能となっており、もし出版社などに問題があった場合でも対応が可能となっています。

完全オンライン化にすることにより問題など発生した場合やご不明な点がある場合は事務局までお問い合わせください。
日本発生生物学会 事務局
FAX:078-306-3072
E-mail:jsdbadmin@jsdb.jp
2014.08.01

Message from the principal editor of DGD

DGD Editor-in-chief Harukazu Nakamura

This year, we received the grant of scientific research funds for developing information transmission capacity globally. The essential feature of this application is to strengthening the ability of DGB to be the hub Journal of Asia and Oceania.

We have appointed Professor Kathryn Cheah of Hong Kong University as the editor of Asia region and Professor Don Newgreen, University of Melbourne of Oceania region. This would enhance partnerships and create the closer relationship between both regions. They have already started working on the feature article on "Morphogenesis and Organogenesis".

This article would create the most valuable session with speakers of APDBN Symposium together with Japanese, Hong Kong Chinese, Chinese and Australian researchers expanding the understanding of endless topic of developmental biology at 47th Annual Meetings of the Japanese Society of Developmental Biologists.

Some of the accepted papers will be open access by this grant. These papers would be selected by the editor in chief, though self recommendations are also welcome.

The big change is that the printed journal would be closed down from vol.57 2015, and DGD will reborn as the on-line journal. I personally miss losing the printed journals though it can not go against the trend of times and cost reduction. I hope this change will benefit all the members for the better service.

This year's IF was announced at the end of July. The IF has slightly declined to 2.178 compared to the last year's 2.397. In the category of Developmental Biology, the ranking had stayed the same and DGD was ranked 29th place out of 41 journals. In the Category of Cell Biology, DGD was positioned 135th place out of 185 journals. For instance, IF of 2013 is calculated by the average number of cited papers of 2011 2012. We hope that all the members would cite DGD papers as many as possible for the higher rank in 2015.
2012.07.01

DGD編集主幹 メッセージ

DGD編集主幹 仲村 春和

昨年は大地震に見舞われましたが、幸いDGDの編集は滞りなく行われ、53巻には例年を大幅に上回る論文を発行することができました。しかし、震災後は投稿論文数が減りましたのでそれが54巻に影響して、54巻の論文数は減る傾向にあります。会員からの多数の投稿をお待ちしています。

 今までの最多ダウンロード論文(DGD Wiley -Blackwell Prize)、最多被引用論文(DGD Editor-in-Chief Prize)の表彰に加え、昨年からDGD奨励賞 (DGD Young Investigator Paper Award)として若手を表彰しています。DGDの質の向上と若手のキャリアアップにつながればと思います。
 若手研究者がいい原著論文を発表されたときは、それを中心に総説を書いてDGDに投稿することをPIの先生方は若手の研究者にお勧めください。総説の書き方と自身の研究観を磨くチャンスになることと思います。若手のそのような総説は引用も多くインパクトファクターの向上にも貢献しています。

DGDは毎年9号のうちの2つの号を特集に当てています。53巻は三浦正幸先生編集のApoptosisと漆原秀子先生編集の粘菌の特集に当て、54巻は塩見春彦先生編集のRNAと宮田卓樹先生編集の神経特集に当てました。いずれもりっぱな特集に仕上がったと思います。会員からの特集のご提案をお待ちしています。55巻にはChick特集とイメージング特集を計画しています。

2011年のインパクトファクターが発表されましたが昨年とほぼ同じ2.2と落ち着いています。DGDへのいい論文の投稿とDGD論文の引用を引き続きお願いする次第です。
2010.09.01

DGD編集主幹 メッセージ

DGD編集主幹 仲村 春和

DGDの編集長を引き受けて約4年になりますが、会員の皆様のサポートにより2009年のインパクトファクターも2.3をキープし、厳しいながらもそれなりの評価を受けていると思っています。
副編集長を務めてこられた阿形清和先生が次期会長に決まり、田村宏治先生が幹事長を務めていることから、副編集長を近藤寿人、林茂生、松居靖久の3先生と交代しました。3先生ともこれまでDGDの編集に積極的に関わっておられますので、DGDのさらなる発展のために強固な体制ができたと思っています。
これまでWiley-Blackwell社の協力を受け、編集長賞(最も引用された論文)、Wiley-Blackwell賞(最もよくダウンロードされた論文)を表彰してきましたが、2010年からはDGD奨励賞(DGD distinctive paper award 2010)として、原著論文のポスドク、あるいは大学院生の筆頭著者を表彰する予定です。

2010年には藤澤敏孝、阿形清和先生編集によるComparative aspects of stem cells、藤森俊彦、丹羽仁史先生の編集によるMammalian stem cells、古関明彦先生編集によるEpigeneticsの特集を出版しました。これらは現在ホットな研究分野であり、会員の皆さんの研究に大いに役だつものと期待しています。
2011年には三浦正幸先生編集によるApoptosis、漆原秀子先生編集による粘菌の特集を企画しています。

 投稿に関してましては、外国からの投稿は増えていますが、国内からの投稿が少なく、発行に苦労しています。会員の方々の投稿をお待ちしています。
2009.07.01

DGD編集主幹 メッセージ

DGD編集主幹 仲村 春和

 2008年のDGDのインパクトファクターが2.3に上昇しました。MOD, DB, Developmentなど発生学関係の雑誌のIFが軒並みダウンしている中で、DGDは始めて2を突破しました。IFの算出はたとえば2008年のIFですと2006年、2007年のDGDの論文の引用された回数を論文数で割ったものです。論文を執筆されるときにできるだけ引用していただくようお願いいたします。 インパクトファクターだけが雑誌の質を判断する物差しではありませんが、その物差しの一つとしての役割は大きいと思いますので、やはりファクターをあげる努力は続けるべきだと思われます。

昨年は記念すべきDGDの50巻の年で、50巻特集号を号外として発行しました。これは、日本発生生物学会の歴史を知る上で、また実験発生学から分子発生生物学への歴史、発生生物学の現状の理解に役立つ特集になったと思います。私の手元に特集号がありますので、冊子体のほしい方にはさしあげます。

  51巻の特集として松永英治、大隅典子先生の編集によるPhylogeny and ontogeny of the nervous systemの特集を発行しました。この特集には第一線の方々によるクラゲ等の刺胞動物、プラナリア、ホヤ等の神経系の発生から、哺乳類の大脳皮質の発生、さらにはマウスの神経新生に関する総説、ニワトリの脳胞のフェイトマップなど、幅広いトピックでの総説を収めており、優れた特集になったとおもいます。

  これからの特集としては52巻にComparative aspects of stem cells, Mouse stem cells, Epigeneticsと3つの特集を計画しています。原著論文も受け付けていますので、これらのトピックに関する論文を計画されている方は是非投稿先の候補にDGDを考えて下さい。

  DGDに1ページ以内のnews & viewsを設けたいと思います。会員の方が自信作のoriginal paperを発表されたとき、ぜひnews & viewsとして投稿して、ご自身の仕事をアピールして下さい。

  今年になって、日本からの投稿より外国からの投稿が多くなっています。Internationalという点では歓迎すべきことですが、会員の方々の投稿が少なく、発行に苦労しています。会員の方々がより一層DGDに目を向けて、投稿して下さいますようお願いします。

  DGDの出版は引き続きWiley-Blackwell社から行うことになっており、経済的には学会にほとんど負担をかけることなく出版できています。さらなる向上に向けて会員の皆様の一層のご協力、ご支援をお願いします。
2008.07.18

DGD編集主幹 メッセージ

DGD編集主幹 仲村 春和

 DGDは今年50巻目を迎えております。その記念に50巻特集号を号外として、また6号に発生生物学研究のためのテクニック特集を組みました。さらに、太田訓正、近藤寿人両氏の編集によるシグナル特集を4号として出版致しました。

 50 巻特集号は26人の方々のご寄稿により、発生生物学会の歴史、発生生物学の現状に関する総説集となっております。Wiley-Blackwell社のご厚意によりon lineではfree access号としてセットして頂きました。岡田節人先生のインタビューを見て頂ければ、DGDは佐藤忠夫先生により始められたEmbryologiaと岡田要先生により始められた実験形態学誌が1968年に合併してできたということが理解できます。最初の頃は一年に一巻ではありませんので Embryologia刊行からは59年目、実験形態学誌刊行からは67年目を迎えております。

  DGDの特集では岡田先生のインタビュー、Nicole Le Douarin先生のニワトリとウズラ細胞の形態の違いを見つけそれをどう発展させたかということ、浅島先生らによるactivinを中心としたオーガナイザー研究の歴史と現状、近藤先生による発生生物学への分子生物学の導入、八杉、水野先生による内胚葉の領域化などの歴史的な総説、笹井先生による幹細胞研究の現状、相澤会長によるノックアウトマウス作成とその後の展開、濱田先生の体の左右差形成、影山先生のHesを中心としての神経分化・時計機構の解説して頂いております。すべての論文が発生生物学会の会員の方々に感動させる何かを持っているものと思います。この特集は若い方々の教育にも大きく役立ってくれるものと期待しております。テクニック特集は特にエレクトロポレーション関係とサカナの方面で充実した特集になりました。シグナル特集は太田・近藤両氏のご尽力によりWnt, Fgfを中心としたユニークな特集となっております。今年から表紙のデザインも変えておりますが、この特集の久保さんによる表紙は特に見事なできばえになっています。

  私が編集主幹を引き受けてから、毎年の発生生物学会のシンポジウム、ワークショップを中心として特集を組んでおります。一昨年の大会から昨年は再生の特集を組み、昨年の大会からシグナル関係の特集を今年発行致しました。今年の徳島大会では神経、幹細胞という話題を選んで特集を組む予定にしております。これらの特集がDGDのインパクトを高めるのに役立つことを期待しております。

  インパクトファクターに関しましては2006年の1.545から2007年は1.908まで上昇しました。インパクトファクターだけが雑誌の質を判断する物差しではありませんが、やはりファクターをあげる努力は続けるべきだと思われます。論文を書くときにより一層の引用をお願いする次第です。

  原著論文の投稿数は多くなく、特集を組まないと通常号の発行に支障をきたす状態です。インパクトファクターも上昇しましたので、会員の皆様から投稿が増えることを期待しております。原著論文に限ると採択率は50%程度です。

  さて、2008年からDGDは科研費の出版助成金を受けることなく、Wiley-Blakwell社との協力関係で出版しております。DGDを取り巻く環境は厳しいものではありますが、自立して出版を続けられるよう主幹として努力して参る所存です。会員の皆様の一層のご協力、ご支援をお願い致します。
2007.02.26

DGD編集主幹 挨拶

DGD編集主幹 仲村 春和

 このたび、八杉貞夫先生の後任としてDGDの編集主幹をおひきうけ致し、すでに2006年12月から活動を開始しております。相澤会長も述べておられるようにDGDを取り巻く状況は決して安閑としていられるものではなく、この時期にお引き受けしてはたしてやっていけるかという不安が大きいですが、学会員のご協力を仰ぎDGDを発展軌道に乗せたいと思っております。

  DGDは来年が50巻ということになりますので、これを記念して特集号を出版したいと思っております。歴史を知る方々、第一線で活躍しておられる方々にバックグラウンドから、研究の展開、将来の展望などに関して総説を書いて頂きたいと思っておりますので、依頼を受けましたら是非お引き受け頂きますようお願いします。一般投稿も受け付けて、記念号を充実したものにしたいと思っております。来年早々に出版するということになりますと企画が遅いくらいですが、近日中に方針を発表したいと思います。

  DGD は大会抄録集をのぞいて、特集号を出してこなかったように思いますが、大会などであるトピックについてまとまった発表があるときは特集を組もうと思います。第39回大会は再生のシンポジウム、ワークショップがあり充実しておりましたので、特集を企画したところ、皆様快く執筆下さり、私の初仕事は49巻2 号のRegeneration and Tissue Remodeling の特集号となりました。また、Blackwellのご厚意により特集のすべての論文がopen accessとなっております。昨年野地先生がlimb meetingを開催されましたが、これも野地先生にeditorになって頂いてlimb developmentの特集にしようと思っております。

 雑誌の質を上げるのにも取り組まなければいけません。現在ではimpact factorがその雑誌のランク付けに使われております。内容はもちろんimpact factorもできるだけあげる努力が必要だと考えます。Impact factorはその雑誌がどれだけ引用されたかによって決まりますが、私の印象ではDGDに載せた論文を皆さんが引用されてないように思っておりました。最近ISI Web of Science を解析した結果そのことが事実であることが判明しました。たとえば2004年刊行の論文は6割くらいが日本人のものですが、その論文を2005, 2006年に引用したものを見ると、日本人はたったの20%でアメリカ、ヨーロッパともに35%くらいしめています(図)。裏返すとDGDが国際誌として認められていることを意味していると思われ、心強くも感じられます。それでも、機会があるごとにDGDの論文を引用して頂くようお願いします。 Impact factorねらいの無理な引用をお願いしているのではなく、相応な引用をお願いする次第です。

  ここ10年ほどDGDはBlackwell社に出版をお願いしております。その出版は文科省の科学研究費補助を受けておりますが、科研費のシステムが変わろうとしており、文科省は競争入札を義務づけようとしております。これは、継続的な雑誌の刊行とはなじまない制度で、会長のメッセージにもありますようにNPO法人化とも関係して参りますが、DGDの自立化を目指していかねばならないと思っております。

  Jounalのますますの発展に向け、会員の皆様のご協力をお願い致します。