2025.03.31
岡田節人基金 海外派遣報告書 宇佐美優奈(埼玉県立大学)
埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科
宇佐美優奈
この度,岡田節人基金海外派遣助成をいただき,アメリカ アリゾナ州フェニックスで開催されたOrthopaedic Research Society (ORS)が主催するORS2025 Annual Meeting(米国整形外科研究会議 年次総会 2025 )に参加しました.
本学会は,臨床の整形外科医師や理学療法士などの医療従事者と,筋骨格系の基礎研究分野の エンジニア,分子生物学の研究者が一同に会する領域横断的な学会です.北米で開催される整形外科分野における基礎研究を扱う学会としては最大規模で,参加者は3,000人超に上ります.会期は5日間にわたり,ポスター並びに口述発表が行われました.参加者の研究対象は筋,腱,軟骨,骨といった筋骨格系が中心であり,患者データを用いた臨床病態研究や,マウスやゼブラフィッシュを用いた基礎研究まで多岐に渡ります.
私自身,学部3年生の時に初めて国際学会に参加したのが本学会であり,個人的に非常に思い入れの強い学会です.修士課程1年目の頃から毎年ポスター発表を行なってきましたが,今年度は初めての口述発表となりました.参加前はこれまで参加してきた学会で最も緊張しておりました.しかし,いざ学会が始まると,修士課程で留学した際にお世話になった研究者や,これまで参加してきた国際学会で仲良くなった同世代の研究者との再会で会話も弾み,毎日が非常に楽しい時間となりました.今回の私の発表は,マウスモデルを用いた腱発達過程におけるメカノバイオロジー機構の関与に関する研究内容でした.私自身の研究に強く関わる腱発生のキーとなる転写因子を同定した研究者や,胎児期の筋腱分化プロセスを明らかにした研究グループも本学会を主戦場としています.今年も実際にお会いし,私が行なった発表について直接ご意見を伺えたことは,今後研究を継続していく上で非常に有意義であったと感じております.実験は思うように進まないことも多く,研究室に籠りながら継続する中でようやくまとまりつつある成果に対し,普段論文でよく目にする著名な研究者の方から“Existing !”や“Amazing!”というような欧米のカルチャーらしい言葉をかけていただけたことは,お世辞とはいえ何より嬉しいものでした.
今回自身が発表した Tendon Mechanobiology のセッションにおいては,in vivoのみならず,in vitro, ex vivoの最新技術を用いた研究成果も発表されておりました.現在の私の研究では,in vivoデータをメインで構成しており,今後の向けin vivoでは検証しきれない点について細胞培養の実験系も検討していたタイミングであったため,生体外培養の実験をすでに進めている研究者から最新の知見を直接聞けたことは,次のステップへのヒントとなりました.発表後,運よくそのグループのPIに声をかけることができ,今後の共同研究に向けたコミュニケーションをとることができました.
結びになりますが,今回の発表に際し,渡航をご支援いただきました日本発生生物学会関係者の皆様に深く感謝申し上げます.
2025.03.31
岡田節人基金 海外派遣報告書 池田貴史(京都産業大学)
“Embryology heaven”訪遊記
“This is the embryology heaven.” Eddy de Robertisが閉会のあいさつで述べた一言が、帰国してしばらく経った今でも耳に響く。たしかに、このシンポジウムは発生学者にとっての楽園そのものだった。
今回私が参加したのは、2024年9月16日から19日の4日間にわたってドイツ・フライブルクで開かれたFreiburg Spemann-Mangold Centennial Symposium。2024年はフライブルク大学のHans SpemannとHilde MangoldによるSpemann-Mangoldオーガナイザーの発見から100周年という記念すべき年であり、それを祝うための特別シンポジウムである。学部生時代の実習で平良眞規先生のご指導を得てアフリカツメガエル胚を用いたオーガナイザー移植を体験し、発生学にはまるきっかけをもった私としては一も二もなくという感じで参加を申し込んだ。最近では発生学への入り口がオーガナイザーという方は少数派かもしれないが、苦労して精密な手作業を習得し、刻々と変わってゆくオーガナイザーの活性(そのせいで美しい二次軸を誘導するのはなかなかむずかしい)を目の当たりにしたことは、いまなお鮮やかな記憶として脳裏に刻まれている。
日本から14時間のフライトでフランクフルトに降り立ち、そこからさらに2時間半の特急に乗ってたどりついたフライブルクは、ドイツ南西に広がる黒い森(シュヴァルツヴァルト)のそばに位置する大学都市である。市街地の規模は小さく、街はずれのシュロスベルク(フライブルク城跡)にのぼると全体が見渡せてしまう(図1)。旧市街の中心には16世紀に完成したフライブルク大聖堂がそびえ、その周りには果物や野菜を売る露店が並ぶのどかさである。今回のシンポジウム会場となったフライブルク大学の大講堂は、ちょうどSpemannが当地に赴任した頃に建設されたといい、たしかな風格を感じさせる建物であった。
シンポジウムの形式は、世界中から招かれた40人のPIが30分ずつ自由に話すというもので、オーガナイザー因子探索と変異体スクリーニングの華やかなりし1990年代から活躍してきた研究者たちが一堂に会し、思い出話をまじえつつオーガナイザーの研究史から現在進行中の研究、さらには今後の発生学が向かうべき方向性にいたるまで多種多様な話題を提供するという豪華なシンポジウムであった。普段の学会でいうPlenary lectureを一度にまとめて40回聞いた感覚である。未発表データも多く含まれていたので個々の内容に踏み込んで書けないのが残念であるが、オーガナイザーの研究史に関する発表内容はCells & Developmentの特集号(Spemann and Mangold centennial special issue. Part I: historical perspective)として公表されているので、関心のある方には一読をお勧めしたい。特に興味深かったのはSpemannがどのようにしてオーガナイザーという概念を着想したかについてのThomas Holsteinの考察で、どうやらSpemannは、ヒドラにおいて類似の実験がEthel Browneにより行われていたことを知っていたという(Holstein, Cells Dev., 2024)。オーガナイザーはMangoldの神技的な移植実験に基づいてSpemannが忽然と持ち出してきた概念であるかのような印象を持っていたが、彼らといえども巨人の肩の上に立って考えていたことを少しの安堵をもって聞いた。
そのほか、いろいろな人が繰り返し語っていたのが、どれだけ多くの概念が原口背唇部の移植というシンプルな実験から着想され(誘導、神経発生、自己組織化…)、それがどれだけ発生のメカニズム解明につながったか、ということで、確かにこれはいくら強調しても強調しすぎることはない点だろう。彼らの時代、発生学研究に用いることができる手法は観察と移植くらいしかなかったわけだが、それに対して現代はあまりにも多くの実験が可能である。今回のシンポジウムでも、細胞移植や胚操作といった古典的手法に誇りをもってこだわる人がいる一方で、オミクス的手法を全面的に採用し、物量作戦で突き進んでいる人も多かった。この100年の間に実験手法の選択肢は大きく広がったが、さて、それらをどのように使えば、移植という一つの手法だけで達成されたオーガナイザーの発見と同じくらいのインパクトをもつ研究ができるのか?と深く考えさせられた。
そのことはさておくとして、本シンポジウムを通じて何より印象的だったのは、たぶんこの人たちは本当に発生学(というか、発生現象そのもの)が大好きで、いままでずっと楽しみながら研究をしてきたのだろうな、ということがじかに伝わってくる発表が多かったことである。発表のスタイルも多種多様で、手描きのスライドで自身のノーベル賞研究を淡々と紹介し、質問を受けずに悠然と壇を降りたChristiane Nüsslein-Volhard、クロマチンが開いてHox遺伝子の転写が順番に始まるさまを洋服のボタンを外す動作にたとえ、一着のコートだけが映ったスライドで何分間もしゃべり続けたDenis Duboule、初期発生研究のオピニオンリーダーとして、今後の発生学が向かうべき方向性を圧倒的な説得力をもって示したAlexander Schierなど、論文を読むだけではわからない大学者(巨匠)たちの強烈な個性を目の当たりにすることができた。
とはいえ巨匠の芸に酔うばかりでは満足できないのが駆け出し研究者の性で、2日目の夜には、以前から進めてきた「左右軸形成におけるNodalシグナルの作用機序」についての研究に関するフラッシュトークとポスター発表に挑んだ。100枚近いポスターが極めて狭い会場に立ちならぶなか、2時間半にわたって多くの方々に発表を聴いて頂けた。ビールやワインを手に、時間を忘れていろいろな国の研究者たちと議論する、国際学会ならではの雰囲気を存分に楽しむことができたと思う。また、翌朝早くにポスター会場をのぞいたところ、Alexander Schierがわたしのポスターの前で立ち止まっていたので、ひとしきり研究内容を聞いてもらえたのは幸運であった。有名な研究者ほどいろいろなポスターで声がかかって自分のポスターになかなか呼び込めないものだが、彼らに話を聞いてもらうチャンスをつかむためには、発表時間外でも会場に張り込んでおくことが重要と実感した。
こうした極めて充実したプログラムの合間に、Spemannゆかりの地や博物館をめぐるツアーや、現地で知り合った若手研究者たちと居酒屋を訪れたり、招待講演者として参加されていた浅島先生、上野先生、武田先生のお三方を囲んで飲み会が開かれたりといろいろなお楽しみもあった(図2)。また、閉会後に武田先生とともにCentre for Organismal Studies (COS) Heidelbergを訪れ、メダカ胚発生の研究で著名なJochen Wittbrodtの研究室でセミナーをさせて頂けたのも貴重な経験であった。
最後に、本シンポジウムへの参加には、学会からのTravel award grantに加えて岡田節人基金からのご支援を頂いた。歴史的円安に研究費不足と、なにかにつけて悩みの多い浮き世をしばらく離れて天国に遊ぶことができたのは、ひとえに故岡田節人博士と日本発生生物学会の関係者の皆様のおかげと深く感謝申し上げる。
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図1:シュロスベルクから望むフライブルク市街。中央右に立つ尖塔がフライブルク大聖堂。
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図2:フライブルク大学博物館でSpemannとMangoldの特別展を見学。
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2024.01.18
Wnt研究会2023 参加報告書 田宮寛之(京都府立医科大学)
京都府立医科大学
田宮寛之
笹井先生の思い出が詰まった理研CDB のC棟でWnt研究会に参加させていただいて
この度は旅費支援をいただき, まことにありがとうございました. 関西医科大学の田宮寛之です. AMED遺伝子再生・AMED-PRIMEなどの支援のもと, 哺乳類体内時計中枢の機能的なオルガノイドの作製に取り組んでおります. 私はもともと理研CDBの上田泰己先生の研究室で体内時計研究をはじめましたが, その後紆余曲折を経て京大永樂先生・京都府立医大八木田先生の研究室で体内時計中枢オルガノイドの開発に従事し, 今月より関西医科大学にPIとして着任しております. 私が世界ではじめて誘導に成功した機能的な体内時計中枢 (視交叉上核: SCN) のオルガノイドでは, SCNの内部構造が再現され, SCNでしか観察できない細胞時計の同期持続振動が観察され, 移植による行動リズム回復もみられております(Tamiya (Corresponding author) in preparation), 特願2023-087986) さらに, 成体視床下部のわずか0.7%に過ぎないSCNが20%以上誘導されており, 時計中枢はどのように分化してくるのかの観察のために時系列のscRNA Seqの解析をおこなったところ, Wntシグナルの重要性が示唆されました. そこで今回は, 今後Wntの研究を進めるにあたり専門の発生学者の方々のお話をしたいと思い, Wnt研究会へ参加させていただきました. 発表させていただいたタイトルは“脳オルガノイド作製技術を用いた体内時計中枢分化シグナルの探索”です.
CDBに在籍しながら発生生物学会には長らく参加したことがなかった私でしたが, 懇親会からアットホームな雰囲気の中迎えていただき, 研究会もレベルの高い発表ばかりでした. 議論も非常に活発で, Wntそのものに加えて発生学についても非常に勉強させていただきました. 自分の発表におきましても, 発生学者の先生方らしい本物の発生の再現を求める質問が相次ぎ, 大変刺激になりました. 余談ですが, 私が脳オルガノイド研究を始めるきっかけは, 今回の会場である理研CDBでお会いした故笹井芳樹先生でした. 笹井先生とはじめてお会いしたC棟1階オーディトリウムで発表させていただくことができ, とても嬉しく思いました. 昼食会場のC棟1階のサロンも, 当時は笹井先生寄贈のピアノがありました. 私は実験がうまく行かない夜によく弾いていましたし, 振り返ると笹井先生がいて, 笹井先生は即興演奏を始められた. そんな思い出の場所です.
ぜひ今後ともよりよい体内時計中枢オルガノイドの開発に従事するとともに, 初期の体内時計発生におけるWntの役割を解明してまいりたいと思います. 今後とも引き続きどうぞよろしくお願いいたします.
2024.01.17
Wnt研究会2023 参加報告書 鈴木美奈子(NIBB/総研大)
基礎生物学研究所/総合研究大学院大学
鈴木美奈子
2023年12月9日に開催されたWnt研究会に参加させて頂きました。
私は最近自身の研究をまとめる段階に入っており、より多くのWntの専門家の方々からのコメント、アドバイス等を頂きたく参加を決めました。実際に全員がWntに関連した研究に取り組んでいるため、普段の年会では中々得られないような細かいアドバイスから、厳しい指摘まで、様々な価値ある意見を頂くことができ、今後の研究活動に非常に役立つ事を確信しています。また、発表についてもWntに関して、初期発生から老化等、幅広い研究の話を聞くことができ、非常に勉強になり、今後の研究へのヒントを掴むことができたと思います。さらに、同年代の方々の刺激的な発表を聞き、研究に対するモチベーションがより高まったと感じています。
この様な研究会へのオンサイトでの参加は初めての経験で、休憩時間には多くの学生や先生方とたくさんディスカッションをすることができ、自身のネットワークを拡大するとともに、オンラインや通常の年会のような大規模な学会では体験できない研究者間の密なコミュニケーションを体験することができました。今回得た学びを元に、さらなる研究の発展に繋げたいと思います。
最後に、この様な機会を提供していただいた関係者の皆さま、そして今回参加費用を支援して下さった発生生物学会に感謝申し上げます。
2024.01.17
Wnt研究会2023 参加報告書 京田竜弥(広島大学)
広島大学大学院 統合生命科学研究科
京田竜弥(D1)
私がWnt研究会に参加させていただいた目的は、自身の研究に深く関係するWntについての知識をより深めるためでした。組織再生におけるWntの機能解析を行っている私にとって、「Wnt」をテーマにしている本研究会は強く惹かれるものでした。また、現在所属している研究室ではWntを主テーマとして研究している学生が私一人であったため、Wntを専門とする研究者の方々と交流し、今行われている研究や解析法などについて直接学びたいという気持ちもあり、本研究会に参加させていただくことを決めました。
本研究会は一日間でしたが、私は多くのことを学び、非常に充実した時間を過ごすことができました。当日は40名の学生や若手研究者、先生方が参加し、19演題もの発表が行われました。Wntなどの分泌因子を中心として様々な点に焦点を当てた研究がなされており、自身の研究対象以外の動物における基礎知識や、それらとWntの関係など非常に多くのことを学ばせていただきました。どの発表でも活発な議論が行われ、その内容も今後自身が研究を行う上で非常に有益なものばかりでした。さらに、Wntに対する視点を当て方や考察など、専門家の先生の考え方も直接お話を聞くことができ、非常に刺激を受けた一日でした。
今回Wnt研究会に参加させていただくことでWntを研究している方々と直接交流し、お話を聞くことができたのは貴重な体験でした。最後に、本研究会のオーガナイザーである三井優輔先生と菊池浩二先生、および日本発生生物学会の皆様に感謝申し上げます。また、本研究会に参加するにあたり日本発生生物学会および熊本大学発生医学研究所から旅費支援を頂くことができ、学生の身として非常に助かりました。重ねて御礼申し上げます。
2024.01.17
Wnt研究会2023 参加報告書 東真理奈(大阪大学)
大阪大学
東真里奈(D2)
この度は、旅費支援にご採択いただき誠にありがとうございました。12月9日に神戸理研BDRで開催されました「Wnt研究会2023」に参加し、口頭発表をさせていただきました。
私はWntについては初心者でどの演題も新鮮な気持ちで拝聴いたしました。
Wntシグナルは生物学的なプロセスにおいて極めて重要な役割を果たすシグナル伝達経路の一つで細胞表面の受容体を介して細胞内へシグナルを伝達し、細胞の運命決定や発生、組織の維持や病気の発症にまで関与しています。さらにWntの発現の勾配は発生の過程において細胞の運命を決定し、特に脳発生ではシグナルの強度の微妙な違いによって領域が決定していくというお話はとても興味深かったです。
細胞競合や組織のパターン形成など生物にとって重要で基本的な機能以外にも様々な領域に関与していることが今回の研究会を通して知ることができました。Wntシグナル研究はさらに発展していくと期待される分野であり、今後の進捗がとても楽しみです。
今回このような機会を開催し運営してくださった皆様に感謝申し上げます。
2024.01.17
Wnt研究会2023 参加報告書 ZOU JUQI(大阪大学)
大阪大学微生物病研究所
ZOU JUQI
The Wnt meeting in Japan 2023 was held in RIKEN BDR on December 9th, 2023. It was my great honor to participate in the meeting and presented my research in front of outstanding Wnt researchers in Japan. I really enjoyed the meeting since all the presentations were interesting and in high quality.
It was an amazing experience for me to hear different Wnt studies in one day, ranging from structure and molecular biology to developmental biology and clinical cancer biology. In addition, a large variety of model were utilized including cell culture, organoid, worms, insects, fish, frogs, chicken, mouse, and human patient samples. The high diversity of Wnt studies broadened my horizons a lot.
The organization was carefully organized and arranged to make me feel the atmosphere and enthusiasm of the meeting. Although the scale was not large, it was very easy for all the participants to discuss and exchange opinions together. It was a nice opportunity for me to communicate with different Wnt researchers, from graduate students to world-famous professors. I learned a lot and got precious advice from other Wnt researchers. Even if all the participants have different background, the enthusiasm towards science just brought us together.
Finally, I would like to appreciate JSDB and Kumamoto University for providing us such a good opportunity. And thank to all the organizing members and their efforts.
2024.01.17
Wnt研究会2023 参加報告書 WANG ZHE(京都大学)
京都大学
WANG ZHE
Travel Grant Report: Wnt Research Meeting 2023
Introduction:
I am deeply grateful for the travel grant that enabled my participation in the Wnt Research Meeting 2023, held on December 9th. This conference served as a pivotal platform for sharing our groundbreaking research on recapitulating gastrulation in vitro, specifically focusing on replicating the uterine environment.
Presentation:
My presentation navigated the complexities of understanding human development, particularly gastrulation, given the limited studies on human embryos. We proposed a novel approach involving the reconstitution of the uterine environment, utilizing a hydrogel with controllable stiffness and shape. The generated human pluripotent stem cell (hPSC) colony, resembling an embryo, showcased aspects of gastrulation through the localized release of signaling molecules to mimic the morphogen gradient.
Audience Engagement:
The conference provided a vibrant academic setting, fostering engaging interactions with fellow researchers. Constructive feedback received during these interactions significantly enriched our ongoing research.
Networking and Collaboration:
Wnt Specialists:
The social event at "クレハ (CUReHA)" on December 8th was a transformative experience, facilitating meaningful connections with renowned Wnt specialists. Despite my non-specialization in Wnt signaling, enlightening discussions broadened my understanding of Wnt signaling pathways and their broader implications.
Chick Developmental Biologist:
A captivating conversation with a chick developmental biologist during the social event delved into primitive streak formation, a crucial process in human and chick embryonic development. This interdisciplinary exchange offered valuable insights, deepening my understanding of conserved and divergent mechanisms in embryonic development.
The informal setting of the social event nurtured a collaborative atmosphere, enabling direct learning from Wnt specialists and chick developmental biology experts. This comprehensive experience significantly enriched my understanding of the intersection between Wnt signaling and embryonic development.
Interdisciplinary Exchange:
Throughout the conference, proactive engagement with leading Wnt researchers bridged interdisciplinary gaps. Conversations with Wnt specialists provided nuanced insights into the potential applications of Wnt signaling in diverse biological contexts. The cross-disciplinary exchange proved mutually beneficial, fostering an environment where specialists and non-specialists freely shared knowledge and perspectives.
Acknowledgment of Travel Grant:
I extend my deepest gratitude for the travel grant, a cornerstone in facilitating my participation in this intellectually enriching event. The support not only enabled the presentation of our research but also broadened my scientific horizons, exposing me to diverse perspectives and groundbreaking discoveries in Wnt signaling.
Conclusion:
Participation in the Wnt Research Meeting 2023 has been a profound academic and professional enrichment. The acquired knowledge and established connections during the social event will undoubtedly propel our research endeavors forward. My heartfelt thanks for the invaluable support through the travel grant, making this transformative experience possible.
2023.07.12
岡田節人基金 海外派遣報告書 黒木祥友(筑波大学)
筑波大学生命地球科学研究群生物学学位プログラム
黒木祥友(D3)
この度、岡田節人基金海外派遣助成をいただき、アメリカ カリフォルニア州リバーサイドで行われたThe 6th International Insect Hormone Workshop(IIHW2023) (2023/6/18-24)に参加しました。この学会は、2年に一度開かれる昆虫のホルモンを研究する研究者が集う国際学会です。私にとって対面形式で参加する初めての国際学会であったため、楽しみであるとともに大きな緊張を抱えながら学会を迎えました。約10時間のフライトと2時間の車での移動の後にたどり着いたリバーサイドは、目が痛くなるほどの日差しが降り注ぐ、砂漠のオアシスのような町でした。
学会初日には歓迎会が行われ、これまで論文の著者としてしか知らなかった研究者や実験材料を提供してくれた方など、多くの海外研究者と直接会ってお話しすることが出来ました。参加者には、修士課程の学生から90歳を超えられたベテラン研究者まで幅広い年齢層が含まれ、多様なバックグラウンドを持った研究者との交流を楽しむことが出来ました。翌日から行われた研究発表では、すべての参加者が一つのホールに集まって口頭発表を聞き、熱い議論が交わされていました。またポスター発表では、異なる会場に移動し発表者とより密接に議論を交わすことが出来ました。参加者が使用している昆虫は、ショウジョウバエをはじめ、マルハナバチやシミ、サシガメなど多岐に及び、様々な昆虫種について発表を聞くことが出来ました。普段実験で使用していない昆虫種の話は刺激的で、内分泌メカニズムの共通性や多様性に着目することで新たな研究のヒントを得ることが出来ました。発表だけではなく、中日にはExcursionとしてパームスプリングスを訪れ、サンジャシント山州立公園内の散策を行いました。現地の動植物を観察しながら、山の中を5マイル歩くのは運動不足を痛感するほど疲れましたが、海外の自然に触れる貴重な機会となりました。
今回私は、「Female reproductive dormancy in Drosophila is regulated by DH31-producing neurons projecting into the corpus allatum」というタイトルで、キイロショウジョウバエを用いた昆虫の休眠を制御する神経内分泌メカニズムの解析について口頭発表を行いました。この研究では、幼若ホルモンと呼ばれる、昆虫の生命活動において非常に重要なホルモンに着目しています。多くのIIHW参加者がこのホルモンに着目しており、発表について多くの質問やコメントをいただくことが出来ました。どのコメントも、今後研究を展開する上で注意すべきポイントばかりで、今回得た指摘を基にさらに研究を発展させたいと考えています。また学会最終日には、発表内容を評価され、Outside-the-Box Award(最優秀口頭発表賞)を受賞することが出来ました。まさか自分の発表が選ばれるとは思っておらず、非常に驚きました。自身の研究が国際学会の場で高く評価された経験は、今後の研究活動を展開する上でも十分な自信となることと思います。
対面形式での国際学会に参加することで得られた最も大きな収穫は、多くの研究者と直接議論を交わし自分の顔と研究を覚えてもらうことができたことです。これまで行われたオンライン形式の学会では、どうしても新しく出会う研究者に自分を覚えてもらうことが難しいと感じていました。それに対し、今回の学会では7日間の学会期間を同じホテルで過ごし、何度も議論したり、食事を共にしたりする中でお互いへの理解を深めることが出来ました。また、ラボを主催する先生方だけでなく、同じような年代のポスドクや学生と話す機会を持つこともできました。どのようなことを考え研究しているのか、またこれからどのような進路を考えているのか話し合う中で、自身の将来に対する見通しが今一歩明確になったと感じました。
今回の学会では海外の文化に触れる機会も多くありました。英語での日常的なコミュニケーションに留まらず、サービスを受けた際のチップの支払いなど日本では触れられない経験ばかりでした。また渡航前は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアジア人への憎悪から差別を受けるのではないかと危惧していましたが、実際には触れ合うすべての人が親切で不快な思いをすることなく過ごすことが出来ました。一方で、円安による物価の上昇はすさまじく、軽く食事をとるだけで日本の2~3倍ほどお金がかかる状況には非常に驚きました。
最後になりますが、今回の国際学会参加によって貴重な経験を得られたのは、岡田節人基金によるご支援と、IIHW2023の開催にご尽力された先生方、温かく学会に迎え入れてくださったIIHW2023参加者の皆様、普段から研究を支えてくださる筑波大学丹羽研究室の皆様のおかげです。この場を借りて心より感謝申し上げます。
2023.03.24
岡田節人基金 フランス海外派遣報告書 山口明日香(大阪大学)
この度、岡田節人基金海外派遣助成をいただき、フランス・ストラスブールにて行われた第3回日仏合同ミーティング(2022年11月7日-10日)に参加しました。新型コロナウイルスの流行が始まってから初めての海外経験で、このような機会を心より楽しみにしておりました。というのも、国際的な場でいつか研究発表をと夢抱き大学院に入学するも数日後に緊急事態宣言が発令され、以降海外渡航への壁が高くなってしまいました。それから2年程経ち徐々に規制緩和がされていく中で、日仏合同ミーティングのNew Frontiers in Developmental Biology : Celebrating the Diversity of lifeというタイトルを見つけ惹かれ演題登録をしました。
タイトル通り、多種多様な発生生物学研究の魅力あふれる研究発表ばかりで、眠気に襲われる余裕のないほど充実した4日間でした。普段発生生物学会には参加していないけど、という方々の研究発表も聞くことができ、そんな面白い現象があるのかと驚くようなこともありました。研究手法についても、数理モデルを使ったシミュレーションやバイオインフォマティクス、ライブイメージング手法の改良等、“見えないもの”への多岐にわたるアプローチの最先端を知ることができ、見えていない、捉えられていないだけでまだまだ面白いことがたくさんあることを実感しました。このような様々な動植物の独創的な研究発表がある中で、嬉しいことに私は口頭発表の機会をいただけました。発表前は緊張しすぎて信号を見ずに道路を渡りそうになったりと正気ではなかったのですが、無事会場について本当によかったです。1つの部屋で全員が1人の発表を聞くというスタイルでしたので、発表後には様々なバックグラウンドを持つ研究者から非常に有益なご意見・評価をいただくことができました。多くの人に自分の研究を知ってもらえただけでなく、ぜひ私の発表を聞いてほしい、議論させてほしいと思っていた研究者の方々からコメント・ディスカッションしていただけたことは、この上ない貴重な経験となりました。発表自体が完璧であったかといえばほど遠く、反省点の多く残るものでしたが、4日間を総じて、今の研究、それから卒業後の展望を考える上で非常に有意義な時間を過ごせたと思います。
研究発表も強烈でしたが、同じくフランスでの食事もとても充実していました。コーヒーブレイク中、私は次から次へ出てくる名前の分からない創作料理の虜になっていました。休憩中ついつい食に集中し、気づけば1人ぼっちだったということもありましたが、しかしそこは外国。食べ物から顔をふっとあげて偶然目があった、初対面である女性研究者に、手でおいでよと導かれ、そこで開かれていた小さな女子会に招いていただきました。どんな話がなされていたのかはここでは残念ながらご報告できませんが、様々な立場の研究者がそこにはいて、普段聞くことのない違う観点からの面白いお話を聞くことができました。
今回のミーティングでは、懇親会や日本領事館主催の晩餐会などといったイベントも盛りだくさんで、特に生物の発生をテーマにしたプロジェクションマッピングは印象的でした。歴史あるストラスブールの町中で、様々な動植物の胚発生の写真を駆使しオリジナリティ溢れる音楽をバックにした映像作品に、ふらっと訪れた一般の人々も楽しんでいる様子が見られました。市民講座や博物館の催し以外にも、このような気軽にサイエンスを楽しめるアイデアは面白くもあり大事であると思いました。女子会もそうでしたが、本ミーティング全体として、立場や国籍関係なく多様であることを前提に、フランクにサイエンスを共有できていた雰囲気は、私にはとても心地よく感じられました。
最後になりましたが、本ミーティングの開催に際し運営に携わった日仏発生生物学会関係者の皆様、そして故岡田節人先生に心より感謝いたします。本当に貴重な経験をありがとうございました。