2023.01.05

岡田節人基金 フランス海外派遣報告書 水野苑子(京都大学)

京都大学大学院 生命科学研究科
水野 苑子(博士後期課程2年)
この度、岡田節人基金の海外派遣助成にご支援いただき、2022年11月7-10日にフランス・ストラスブールで開催された第3回日仏合同発生生物学ミーティングでポスター発表をさせていただきました。

開催地のストラスブールはとてもメルヘンティックな街で、趣深い木骨造の建築物と町を囲むイル川とが織りなす美しい景色を眺めながら、毎朝高揚した気持ちで会場へ向かいました。日本と違う柄のスズメがいたことにも興奮しました(写真)。

4日間に渡るミーティングには約200人が集い、約50の口頭発表と約80のポスター発表が行われました。発表内容は実に多様かつユニークで、着目する現象も実験に用いるモデル生物やシステムも多岐に渡っていました。発表者は大学院生からjunior PIが中心で、自分と近い世代の研究者が最先端の内容を発表する姿に毎日刺激を受けました。
自身の研究テーマでもある形態形成に関する研究も数多く拝聴できました。“器官や組織の形がどのように作られるのか?”という問いに対して、力、形と遺伝子発現の相互作用、個々の細胞の形や動き、進化的保存性などなど、実に多様な切り口があり、改めて生命現象として興味深いと感じるとともに、発表者の方々の柔軟な発想力、鋭い着眼点と観察力に憧れを抱きました。またライブイメージングを主軸とした研究が多く、多様なイメージングシステムを学びました。特に印象的なのは転写・翻訳やシグナル伝達の時空間ダイナミクスに関する研究で、高次元で複雑な分子のふるまいについて学び、その原理や生物学的意義に興味を引かれました。

自身のポスター発表では、「マイクロペプチド遺伝子が上皮組織の陥入運動を制御する分子メカニズム」について研究成果を報告し、1〜2名と約30分ずつ、計6名と密に議論させていただきました。聞きに来てくださった皆様の専門分野が多様で、新鮮な視点からご助言をいただけた点が本ミーティングならではの大きな収穫でした。例えば、私自身は知識が未熟な力学を専門とされる先生から頂いたご助言のおかげで、研究の方向性に影響する重要な視点を得ることができました。議論を深められるポスター発表の有益さを実感するとともに、次の機会には口頭発表も行い、よりたくさんの方々に自身の研究を知って頂きたいという気持ちも強まりました。

なんといっても、国外研究者との交流は、初めて国際学会に参加した私にとって新鮮で嬉しい経験でした。特に印象深いのは、3日目の夜に開催された交流会で、私が発表内容に特に興味を抱いた米国の研究者の隣に座って議論できたことです。その方は緊張気味の私とも気さくにお話ししてくださり、会話の中で、私が以前に読んだ論文の著者とお知り合いであることが判明したり、米国で開催される若手研究者向けプログラムを勧めていただいたりと、世界が広がったような気持ちで会話を楽しみました。その他にも、興味のあった技術を先駆的に活用されているフランスの研究者と講演後に議論でき、その技術の現状を直接伺えたこともとても貴重な経験でした。このような実り多き交流は、今後研究活動の場を国外へと広げて行くための重要な第一歩になったと実感しています。
ミーティングを通して、国内外でユニークかつ先端の研究を進める方々と交流できたことは非常に楽しく有意義なもので、終始刺激的な4日間でした。親切にしてくださった皆様に本当に感謝しております。

最後になりますが、この様な貴重な経験は、岡田節人基金によるご支援と、選考委員を務められた先生方、日仏発生生物学会の皆様による準備から開催までのご尽力のおかげです。この場を借りて心より感謝申し上げます。

(↓ストラスブールの景色)