2022.12.08

岡田節人基金 ISDB海外派遣報告書 小野沙桃実(東京工業大学)

東京工業大学 生命理工学院
小野沙桃実(D1)
岡田節人基金 若手研究者海外派遣助成のご支援のもと、ポルトガルのサルガドスで開催された、第19回国際発生生物学会 (International Society of Developmental Biology; ISDB2021) にポスター発表で参加しました。
 
 国際発生学会は4年に一度行われる大きな学会で、去年開催予定のところを新型コロナウイルスの影響で延期された経緯から、名称はISDB2021となっています。5日間のレクチャー、シンポジウムに加え、なんとポスター発表は約400人もの研究者、学生が参加しており、国際学会の規模の大きさを実感しました。国内の発生学会で他に日本から参加する人を探したものの見つからず、当初は独りで渡航する予定でしたが、偶然10月からラボに赴任した河西助教もISDBに参加すると伺い、渡りに船ということでありがたく付いていかせていただくことになりました。
 博士課程1年目の私にとって、貴重な経験をいくつも得ることができたISDBへの参加は、大変意義深いものとなりました。まず、対面でのポスター発表は初めての経験でした。学部4年生で研究を始めてから1年足らずで、新型コロナウイルスの流行により対面学会は中止されたため、今までに参加したすべてのポスター発表はオンラインでした。オンラインでは、ポスター内容は口頭発表無しでも伝わることが重要ですが、対面でのポスター発表は、プレゼンで相手の理解度に合わせて説明することが、最も重要であることに気が付きました。英語でのプレゼンに不慣れであったというのありますが、大勢のポスター発表者がいる中でポスターに立ち寄ってくれる人を少しでも増やすことについて、もう少し工夫の余地があると感じました。今回のポスターセッションは1時間半と非常に短い時間しか与えられなかったため、どんなに頑張っても会場の端では5人ほどしか立ち寄ってもらえませんでしたが、ポスターセッション以外の時間にも、知り合った人に自分の研究内容を短く説明する機会は何回もありました。全くそのような場面を想定していなかったため、しどろもどろな説明しかできませんでしたが、そこで自分の研究課題の面白さについてよりプッシュできるようになると良いことに気付くことができました。
 また、このISDBは私にとって初めての国際学会でした。日本の学会は動物学会、進化学会、発生学会などへの参加経験から、ある程度雰囲気を掴めていたように思います。そこで、世界的にはどのような実験手法がトレンドなのか、また発生学に対してどのような視点でアプローチすることが評価されているのかを知りたかったため、ISDBへの参加は非常に楽しみでした。レクチャー、シンポジウムでは、誰もが興味を持つようなクエスチョンの立て方やプレゼントークの上手さを実感し、非常におもしろく、とても勉強になりました。日本語では、多少プレゼンが分かりづらくても母国語だからわかっていたこともあったのだと気が付き、日本の学会ではあまり意識してこなかった、クエスチョンの上手な立て方について意識することができました。また、思いがけない収穫は、世界中の博士学生やポスドク、またISDBに参加していた他の日本人研究者と知り合えたことです。ヨーロッパに住む学生はアクセスの良さからか気軽に学会に来ているような印象で、国を軽々と超えるフットワークの軽さに驚きました。さらには、国際学会に来るような学生は研究に全て情熱を注いでるものかと思いきや、それぞれ趣味を持っていて、プライベートも研究も颯爽と両立させていくスタイルに共感と憧れを覚えました。日本人研究者とは、かなり分野が離れている人もいたため、逆に国際学会のような場でもないと交流の機会が無かったと思います。国際学会に参加して、研究分野も価値観も視野が広がりました。
 博士課程1年というまだまだ未熟な段階で、このような大きな国際学会に参加した経験は非常に貴重で代えがたいものであると感じています。自分と同じくPhD取得のために研究を進める学生、PhDを取りたてでポスドク先を探す研究者やラボを持ったばかりの若いPIなど、様々な年齢層、キャリア層の人から話を聞くこと、アドバイスをいただくことができました。数年後には、自分にはどういう選択肢が存在し、どのようになりたいのか、具体的な研究者像がより明確になったように思います。この感動と情熱を糧に、これからも研究に邁進していきたいと思います。最後に、このような機会をくださった故岡田節人先生ならびに日本発生生物学会、関係者の皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました。