2022.09.14

岡田節人基金 海外派遣報告書 島田龍輝(熊本大学)

熊本大学発生医学研究所
染色体制御分野 助教 島田龍輝
米国バーモント州Mt Snowで8月13日から19日にかけて開催されたGordon Research Seminar (GRS)とGordon Research Conference (GRC); mammalian reproductionに参加しました。GRC; mammalian reproductionは生殖細胞や生殖巣、生殖器官の発生に関する研究者や医療関係者まで幅広く哺乳類の生殖に関わる人が集まるconferenceです。GRSはGRCに先立って行われる若手研究者によって行われる研究集会で、博士課程の学生やpostdocなど立場の近い研究者の発表・交流の場として開催されています。前回2018年の開催から、2020年に予定されていたconferenceが新型コロナウイルスによる開催中止になり、4年ぶりの開催であったことから、久しぶりの開催を心待ちにしていたようで200人近くの参加がありました。ポスターの数も通常は30-40程度の演題が発表されるようですが、今回は104の演題が発表されていました。新型コロナウイルス対策のためポスター同士を離れて配置するために、4グループに分けられ、1回当たり30のポスター発表が行われました。連日異なるポスターが掲示されるため、時間外にポスター前で議論するということはできませんでしたが、限られた時間内に多くの発表者と議論するために常にポスター前で熱心な議論が行われていました。
私は減数分裂の開始と細胞周期のS期を同調する分子機構と、その破綻がメス特異的に不妊につながるという最近の研究結果についてGRSでposter発表を行い、GRCでは口頭発表をしました。GRSでは多くの若手研究者と研究についての意見交換をして交流を深めることができました。GRCでは、スペースの関係からposter発表することができず、口頭発表も会の終盤だったため、当初は活発な交流が期待できないのではないかと危惧していました。しかしながら、参加者は若手からシニアに至るまで熱心で、発表時の質疑応答は時間いっぱいまで議論することができました。さらに発表後も多くの研究者に声をかけていただき、議論を深めることができました。
久しぶりの対面での国際学会で大きな収穫だったのは、多くの研究者と交流できた点です。本会は合宿形式であり、毎日3食の食事時などに、気軽に議論する機会を設けることができます。自身の進めている研究について、同様の現象に興味を持って研究を進めている研究者を食事の時に捕まえて、自身の研究計画について議論して意見をもらうことができました。その研究者とはその後も大会期間中を通して頻繁に議論をして、お互いの考えに理解を深めるとともに、後日改めてzoom meetingをするなど、今後も研究交流の機会を持つことを約束するに至りました。口頭発表をして、多くの人に顔を知ってもらう機会になったことはさることながら、それ以外の場所でも知見と交流を広げるために対面式のGRCに参加できたことは非常に有意義であり、岡田節人基金より補助を受けたことで、このような機会を設けることができたことにこの場を借りて御礼申し上げます。
自分がGRCに参加した当時には、日本は未だ海外からの帰国者にPCRなどによる陰性証明を義務付けていました。このことが積極的な研究交流に悪影響をおよぼしたことは否定できません。私は最初の数日、食事の場などで積極的に交流を持つことは避けるようにしていました。しかし、せっかくの対面であるのだから積極的な交流をしなければ、十分な成果を得られないと感じ、中盤以降には積極的に交流ことにしました。このことにより多くの研究者とリラックスした状態で様々な議論ができ一定の成果が得られたと感じます。on line meetingでは発表者との議論は発表時に限られていますが、on siteではいつでも発表者を捕まえて、個人的な議論を持つことができるため、特に若い研究者のキャリア形成において重要な経験であると感じました。幸運にも私は陰性であることが証明され、予定通り旅程を終えることができました。現在は規制が緩和されることで、日本から国際学会に参加しやすい状況になってきました。国際学会で、発表や研究交流を行うことは若手研究者が交際的に研究を展開するうえで非常に有用であるため、今後はさらに積極的に国際学会に参加し、研究領域の開拓や領域をリードするような研究者と慣れるように、今後も努力していきます。