2023.01.24

岡田節人基金 フランス海外派遣報告書 東貴允(大阪大学)

大阪大学大学院 理学研究科
東貴允(D2)
この度は、岡田節人基金派遣助成からご支援を頂き、フランス・ストラスブールにて日本発生生物学会、フランス発生生物学会共催により開催されました第三回合同会議に参加させて頂きました。

ストラスブールはドイツとの国境の街で、アルザス地方の中心都市として知られています。ドイツを思わせる歴史的な建物が立ち並ぶ美しい街で、特に旧市街は世界遺産に指定されているほどです。そのような美しい街並みの中で学会期間の前後を含めて一週間ほど滞在しました。第三回合同会議は宮殿大学(Palais Universitaire)にて開催されました。こちらの会場にて「Identification of initial cue leading to the left-right asymmetric development of the embryonic midgut using “image-averaging” analysis in Drosophila(邦題:「画像平均化」技術を用いた、ショウジョウバエ胚における中腸の左右非対称化の最初のキューとなる形態変化の同定)(ポスター番号:20)」という題でポスター発表を行いました。たくさんの方にポスター発表を見ていただくことができました。初海外学会かつ昨今のご時世から現地での初めてのポスター発表となりました。そのため、初めは非常に緊張しましたが、活発な議論を重ねていくうちに段々と慣れてきました。フランスの方々の英語はかなり早く聞き取るのは困難を極めましたが、様々な質問を頂き、建設的な議論を交わせたと思っております。

私個人にとって、コロナ後初めての海外となりました。フランスのコロナ事情について去年はニュースなどで取り上げられていましたが、今年は全くといっていいほどなかったので少し不安でしたが、現地にいってみると、公共交通機関といった比較的人が集まるような場所でもマスクをしている人はほぼおらず、日本とは随分状況が異なっており驚きました。日本よりコロナを感じさせない雰囲気で、落ち着いて学会に望むことができたと思っています。

フランスに行くにあたってもう一つ気がかりだったのは物価です。昨今のコロナ禍及びウクライナ情勢により原油高による物価の上昇と為替の円相場の下落により、欧州の物価が日本人にとってかなり厳しいものになると予想していました。実際、日本円ベースで考えると確かに物価は高いとは感じましたが、ストラスブールが比較的郊外に位置していたことなどもあってか、想定していたほどの値段ではない印象でした(もちろん日本よりは高いですが)。
フランスは料理も日本人の好む美味しい料理が多く、建物の歴史も感じさせる素晴らしい国でした。治安に関しては、パリでは警官が二人組で警戒している場面は見かけましたが、良好でした。ストラスブールは更に治安はいいように感じました。数年前にはパリでのテロ等のニュースが流れていましたがそのような心配はなさそうな印象でした。

最後になりましたが本学会への参加に際しまして、ご支援を頂きました岡田節人基金派遣助成様、及び当研究室の松野先生を始めとした松野研究室の皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
2023.01.24

岡田節人基金 ISDB海外派遣報告書 Elzava Yuslimatin Mujizah(大阪大学)

大阪大学大学院 理学研究科
Elzava Yuslimatin Mujizah(D3)
The 19th International Society of Developmental Biology (ISDB) is a huge meeting for developmental biologists that are held every 4 years. The meeting was supposed to take place last year in 2021 but due to CoViD-19 restrictions, it was delayed until 2022 and it still is in the same venue, Portugal. The ISDB 2022 is my third international meeting during my stay in Japan, but this meeting took a lot of courage to apply because apart from one of the biggest meetings for developmental biologists, ISDB 2022 also has numerous distinguished speakers from roughly all around the world. Around half of the speakers are young researchers (most of them are professors, associate professors, assistant professors, or researchers and a few postdocs) also delivered their new findings.
I applied for poster presentation and along with hundreds of participants, we gathered in Algarve, southern Portugal and had an offline meeting for the first time since pandemic hit. The oral presentation sessions were amusing, each day there was 1 keynote speaker to start the conference. On the first day of the conference, Dr. Marianne Bronner awarded Ross G. Harrison Medal, an award which is known to give recognition to scientist with significant contribution in developmental biology field. The poster presentation sessions were divided into 2 groups (1.5 hours for each group), odd and even numbers group. Me and the other odd numbered participant did the presentation first on October 17th and even numbers participated on the next day. I did the presentation almost non-stop throughout the entire session and was lucky to make new friends with students and postdocs from Spain, Colombia, UK, France, Ukraine, China, Poland, India, Italy, etc. It was such a warm atmosphere.
Joining an international meeting event like this is always a refreshing experience since it brings new things to the table. Also, the fact that I can connect with other PhD students who are on the same journey as well builds a network with experienced scientists. Finally, I would like to express my deepest gratitude to the Japanese Society of Developmental Biologists (JSDB) for giving me an opportunity to participate in the 19th ISDB through the 14th Tokindo S. Okada travel grant.
2023.01.05

岡田節人基金 フランス海外派遣報告書 水野苑子(京都大学)

京都大学大学院 生命科学研究科
水野 苑子(博士後期課程2年)
この度、岡田節人基金の海外派遣助成にご支援いただき、2022年11月7-10日にフランス・ストラスブールで開催された第3回日仏合同発生生物学ミーティングでポスター発表をさせていただきました。

開催地のストラスブールはとてもメルヘンティックな街で、趣深い木骨造の建築物と町を囲むイル川とが織りなす美しい景色を眺めながら、毎朝高揚した気持ちで会場へ向かいました。日本と違う柄のスズメがいたことにも興奮しました(写真)。

4日間に渡るミーティングには約200人が集い、約50の口頭発表と約80のポスター発表が行われました。発表内容は実に多様かつユニークで、着目する現象も実験に用いるモデル生物やシステムも多岐に渡っていました。発表者は大学院生からjunior PIが中心で、自分と近い世代の研究者が最先端の内容を発表する姿に毎日刺激を受けました。
自身の研究テーマでもある形態形成に関する研究も数多く拝聴できました。“器官や組織の形がどのように作られるのか?”という問いに対して、力、形と遺伝子発現の相互作用、個々の細胞の形や動き、進化的保存性などなど、実に多様な切り口があり、改めて生命現象として興味深いと感じるとともに、発表者の方々の柔軟な発想力、鋭い着眼点と観察力に憧れを抱きました。またライブイメージングを主軸とした研究が多く、多様なイメージングシステムを学びました。特に印象的なのは転写・翻訳やシグナル伝達の時空間ダイナミクスに関する研究で、高次元で複雑な分子のふるまいについて学び、その原理や生物学的意義に興味を引かれました。

自身のポスター発表では、「マイクロペプチド遺伝子が上皮組織の陥入運動を制御する分子メカニズム」について研究成果を報告し、1〜2名と約30分ずつ、計6名と密に議論させていただきました。聞きに来てくださった皆様の専門分野が多様で、新鮮な視点からご助言をいただけた点が本ミーティングならではの大きな収穫でした。例えば、私自身は知識が未熟な力学を専門とされる先生から頂いたご助言のおかげで、研究の方向性に影響する重要な視点を得ることができました。議論を深められるポスター発表の有益さを実感するとともに、次の機会には口頭発表も行い、よりたくさんの方々に自身の研究を知って頂きたいという気持ちも強まりました。

なんといっても、国外研究者との交流は、初めて国際学会に参加した私にとって新鮮で嬉しい経験でした。特に印象深いのは、3日目の夜に開催された交流会で、私が発表内容に特に興味を抱いた米国の研究者の隣に座って議論できたことです。その方は緊張気味の私とも気さくにお話ししてくださり、会話の中で、私が以前に読んだ論文の著者とお知り合いであることが判明したり、米国で開催される若手研究者向けプログラムを勧めていただいたりと、世界が広がったような気持ちで会話を楽しみました。その他にも、興味のあった技術を先駆的に活用されているフランスの研究者と講演後に議論でき、その技術の現状を直接伺えたこともとても貴重な経験でした。このような実り多き交流は、今後研究活動の場を国外へと広げて行くための重要な第一歩になったと実感しています。
ミーティングを通して、国内外でユニークかつ先端の研究を進める方々と交流できたことは非常に楽しく有意義なもので、終始刺激的な4日間でした。親切にしてくださった皆様に本当に感謝しております。

最後になりますが、この様な貴重な経験は、岡田節人基金によるご支援と、選考委員を務められた先生方、日仏発生生物学会の皆様による準備から開催までのご尽力のおかげです。この場を借りて心より感謝申し上げます。

(↓ストラスブールの景色)
2022.12.27

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 服部竜也(東京理科大学)

東京理科大学理工学部M1
服部竜也
少数制の研究会ということもあり、熱意ある同世代の方々や研究の第一線でご活躍されている先生方との繋がりを増やすため、「NGS発生生物学現場の会2022」に参加しました。研究会への参加を決定した際には、果たして懇親会には皆参加するのか、皆が三島ロッジに泊まるのか、など期待と不安が入り混じっていましたが、研究へのモチベーションを上げる良い刺激が得られました。

NGSという共通のテクノロジーを用いて多種多様な分野でご活躍されている方々が集い、議論を交わしました。通常の学会や研究会とは異なって、NGSに関するテクニカルな質問が多く飛び交っていた点が目新しく感じました。1日目に行われた研究紹介や交流会では、普段マウスを扱っている私としては馴染みの無い実験動物や再生の話など、とても興味深いお話を聞くことができました。交流会では、立場を超えて話し合うことができ、貴重な時間を共有できました。今回、2日目に私は「シングルセルATAC-seq解析を用いたマウス精子形成過程における分化運命決定機構の解明」というタイトルで15分間の口頭発表を行いました。どの発表者も時間を超過するほど活発な議論が行われており、私自身も貴重な意見を頂くことができました。また、研究内容だけではなく、就職かアカデミアに残るかを考えていた自分にとって、田崎さんの講演や、同世代の他の参加者の熱意や実績など、今後一人の研究者として生きていくために貴重な経験が得られました。

最後に、本研究会のオーガナイザーである鹿島さん、および日本発生生物学会の関係者の皆様に感謝申し上げます。今回の研究会に参加するにあたり、学会から旅費支援を頂きました。学会続きで遠方から参加する身としては非常に助かりました。重ねて御礼申し上げます。
2022.12.26

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 赤岩孝憲(大阪大学)

大阪大学大学院
赤岩孝憲
12/6,7の二日間、基礎生物学研究所で行われた「NGS発生生物学現場の会」に参加させていただきました。

私自身NGS解析を始めてから約2年半経つのですが、コロナの影響で対面の学会等が制限されていたこともあり、NGS解析を進めている研究者の方と情報交換をする機会がほとんどありませんでした。そのため、自分の解析手法が適切なのか・他にもっと良い方法があるのではないかといったことに悩みながら手探りで進めている状態でした。そこで、本研究会を通じて今後解析を進める上での助けになる情報を得られればと思い、参加を決めました。

研究会は30人弱の規模で、1つの部屋で行われました。参加者全員の研究紹介(1人5分)から始まったのですが、NGS解析という”技術”がテーマだったこともあってか、参加者全体で扱っている生物や研究している現象がかなり多様だという印象を受けました。個人的には、5分という短い時間で自分の研究をわかりやすく、印象に残るように発表することは非常に良い経験になったと感じています。その後のワールドカフェや交流会では、研究の深掘りもしていただきました。データ解析の話だけでなく、研究に対する姿勢など、重要なアドバイスを数多くいただけました。

二日間の研究会を通して、参加者全体で議論する時間をかなり多めにとっていただけたことが印象的でした。疑問に思ったことや、わからないことをその場で解消できた点が非常に良かったと感じています。また、参加者の皆さんの活発に議論する様子からは、技術の習得に対する貪欲な姿勢が窺え、今後自分が研究を進める上でとても良い刺激になりました。

最後に、手厚い旅費支援のもとこのような機会をいただけたことを鹿島誠先生をはじめとする発生生物学会関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。
2022.12.26

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 Leo Sylvia(東京工業大学)

東京工業大学 生命理工学院 博士課程
Leo Sylvia
I attended this symposium with many questions: How do I best present my RNA-sequencing data as figures? Should I present them as normalized data, or as raw read counts? How do I approach such a huge dataset and how and where do I start to analyse such data?
Throughout the two days of presentations by both fellow graduate students and established professors, I was able to gain much valuable insight on these topics, as well as developing new points of view on the new cutting-edge sequencing methods that were previously not even on my radar. Relatively novel techniques such as ATAC-sequencing and spatial transcriptomics were applied to various developmental models such as zebrafish, medaka and mice. Despite similar sequencing methods being applied to the same model organism, application methods, experimental designs and experimental approaches varied and made every presentation interesting and full of learning points. The various approaches applied to experimental designs really broadened my horizons, and I was also able to gain more understanding on how to best present my own data depending on the situation and specific information to be conveyed. Seeing how several researchers were able to multiplex their experimental designs was also a big learning point for me.
The world café on the first day was also immensely helpful. Being able to listen in to discussions between researchers brought up points I would not have even noticed, and I was also able to ask direct questions to experts and given the appropriate advice. Overall, this symposium was extremely fruitful, and I am thankful to have been given the chance to attend. I would not hesitate to say that it would help improve my own research as well.
2022.12.21

大阪大学・微生物病研究所・遺伝子機能解析分野&感染動物実験施設 公募のお知らせ

大阪大学・微生物病研究所・遺伝子機能解析分野&感染動物実験施設(伊川正人研究室)では下記の人材を募集しております。

1.特任助教: 1~2名
http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/recruit/
2.特任研究員:1~2名
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/news_topics/detail/1183
3.特任技術職員:2~3名
http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/recruit/

1.2:ゲノム編集マウスを用いて精子形成・受精・全能性研究を推進してくれる方。
培養自動化や機械学習を組み合わせたバイオDXテーマを推進してくれる方。
動物施設管理や発生工学技術も学んで頂けるので、次の就活にも役立ちします。
特任助教と特任研究員、あわせて3名ほどを考えています。キャリアや本人希望も踏まえてポスト相談に応じます。

3:ゲノム編集マウス作製支援を推進してくれる方。
胚操作経験がある方が望ましいですが、未経験者でも指導しますので大歓迎です。
新規生殖・発生工学技術開発にも参画して頂けます。短時間勤務を希望される場合は、補佐員雇用もOKです。

いずれのポストも年度契約ですが、最長5年とお考え下さい(個人保証しかできませんが、、、)。所属は阪大・微生物病研究所であったり阪大・免疫学フロンティア研究センターであったりするので、上記サイトに掲載がない場合は、お問い合わせください。なおポスト2,3については阪大ではなく東大医科研での雇用も検討可能です。国籍・性別問わず、歓迎いたします。

興味のある方がおられましたら、伊川まで遠慮なくお問い合わせください。
研究室HP:https://egr.biken.osaka-u.ac.jp/
CREST/HP:https://egr.biken.osaka-u.ac.jp/BioDX/home
医科研ラボHP:https://www.reproduction-system.com/

伊川正人
Masahito Ikawa, PhD
Distinguished Professor
Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University
3-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan
http://www.egr.biken.osaka-u.ac.jp/information/index.html
TEL:+81-6-6879-8375, FAX:+81-6-6879-8376
2022.12.21

おすすめの教科書・書籍6〜10

発生生物学および関連分野の知識を学ぶのにおすすめの教科書を紹介します。

6. 長田直樹 著「進化で読み解くバイオインフォマティクス入門
一言で言うと、明日から始めない人のためのバイオインフォマティクス入門。手法の生物学的背景から丁寧に解説。進化を題材として取り上げており、発生生物学研究者の興味にも合いそうです。明日から始めたい人のためのバイオインフォのハンズオン本は坊農秀雅さんらが編集されたものなど良書がいくつもありますが、手法の背景からじっくり学べる本書はそれらと相補的な内容です(杉村薫
https://www.amazon.co.jp/%E5%9D%8A%E8%BE%B2%E7%A7%80%E9%9B%85/e/B078N6R6P8

7. Nicholas. I. Fisher 著「Statistical Analysis of Circular Data」 
Arthur Pewsey, Markus Neuhäuser, and Graeme D Ruxton 著「Circular Statistics in R」 
角度データの平均を計算するのに単に足して割っていませんか?角度データの分散って?形態データを多く取り扱う発生生物学。10年前と比較して、角度統計は普及した感もありますが、学部生や修士学生で馴染みがなければ、一読の価値ありです。(杉村薫

8. Scott F. Gilbert, and David Epel 著「生態進化発生学―エコ‐エボ‐デボの夜明け」 
共生とエピジェネティックスをキーワードにして数多くの文献を読み込んだ著者が多彩な実例をもとにこれからの生物学、発生学、進化学を論ずる。生物は孤立した存在ではなく環境と、他の生物とが合わさったファミリーとして生存と発展を遂げているのだ。(林茂生

9. Lewis Wolpert, and Cheryll Tickle著「Wolpert発生生物学」 
S. Glibertの“Developmental Biology”と双璧をなす発生学の定番教科書。主著者のL. Wolpert博士は肢芽を用いて様々な概念を提案した発生学者。実験発生学的な視点で、動物の発生をわかりやすく解説。現在第6版で、4版は武田洋幸・田村宏治監訳の日本語版もある。講義用に図の電子版が公開されているのは教員にとってうれしい。(武田洋幸)

10. 佐藤純 著「いますぐ始める数理生命科学 - MATLABプログラミングからシミュレーションまで -」 
多くの数理生物学の書籍において、数式をどうやってコンピューター上で扱えば良いのか、どうやってシミュレーションしたら良いのか、ほとんど説明されていないことが多いと思います。この本では全くの初心者がプログラミングの初歩から始めて、具体的な生命現象の数理モデルを構築し、シミュレーションを行うことを目標としており、生物系の学生の方々に最適だと思います。(佐藤純
実験発生生物学と数理生物学の融合研究を精力的に進めている著者による数理生命科学の入門書。前半で、Matlabによるプログラミングの初歩的な内容を学び、後半で、Matlabを用いて、さまざまな生命現象のモデルを数値計算するという構成になっています。細胞分化やモルフォゲンなど、発生生物学者にとって馴染み深いトピックが取り上げられており、初学者が直感的に理解しやすいように工夫されています。(杉村薫


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2022.12.21

倉谷滋のお勧め<まとめ第3弾>

倉谷滋先生お勧めのクラッシック論文を紹介します。

21. Goodrich, E. S. (1915). Memoirs: The Chorda Tympani and Middle Ear in Reptiles, Birds, and Mammals. Journal of Cell Science 242, 137–160.
これは典型的な比較形態学の論文。だが、発生パターンの違いが重視されている。動物によってこんなにパターンが違うのかと認識させてくれる。

22. Graham, A., Koentges, G. & Lumsden, A. (1996). Neural Crest Apoptosis and the Establishment of Craniofacial Pattern: An Honorable Death. Molecular and Cellular Neuroscience 8, 76-83.
菱脳の分節構造のうち、第3,第5のロンボメアが神経堤細胞を発するのかどうか、90年代、これがニワトリ胚発生研究の領域で大問題になったことがある。なぜだろうか。科学論争の本質を知るためにも興味深い。

23. Hogan, B. L. M., Thaller, C. & Eichele, G. (1992). Evidence that Hensen's node is a site of retinoic acid synthesis.Nature 359, 237–241.
この論文が書かれた一部始終を私はそばで見ていたが、そのときの経験がのちに非常に役に立った。90年代のいわゆる「発生生物学の黄金時代」を象徴するような心意気の論文と言えるかも知れない。

24. Jeffery, W. R., Strickler, A. G. & Yamamoto, Y. (2004). Migratory neural crest-like cells form body pigmentation in a urochordate embryo. Nature 431, 696–699.
Gans & Northcuttによる「New Headセオリー」は、神経堤とプラコードが脊椎動物を定義すると述べ、結果、神経堤の起原を極める研究が脊椎動物の起源を語ると認識された。その一方でその前駆体がホヤに存在するという研究が相次いだ。その最初のひとつがこれ。

25. Jollie, M. (1981). Segment Theory and the Homologizing of Cranial Bones.The American Naturalist 118, 785-802.
脊椎動物頭蓋要素の発生起源は動物によって違うのか。その背景にどのような予測があったのか。古典的な比較形態学的コンセプトの終着点を示す論文のひとつだが、それが正しいというわけではない。

26. Kuntz, A. (1910). The development of the sympathetic nervous system in mammals. Journal of Comparative Neurology and Psychology 20, 211-258.
一言でいうとKuntzによる一連の論文は、組織発生学的に末梢神経系の発生を推論したもので、ほぼ正しくそれらが神経堤に由来することを見抜いている。実験発生学が明らかにしたのは、彼の観察眼の正しさだったのかも知れない。

27. Langille, R.M. & Hall, B. K. (1988). Role of the neural crest in development of the trabeculae and branchial arches in embryonic sea lamprey, Petromyzon marinus (L). Development 102, 301–310.
ヤツメウナギ幼生の軟骨頭蓋の一部が神経堤に由来すると述べた論文。今にして思うと、これは進化発生学が勃興する前になされたユニークな試みだった。が、この動物の梁軟骨はいまでは中胚葉由来とされている。

28. Le Lièvre, C. S. (1978). Participation of neural crest-derived cells in the genesis of the skull in birds. Development 47, 17–37.
鳥類胚の頭蓋の由来については1993年のCouly et al.が引かれることが多いが、ここにあげたLe Lièvreの知見がNodenの見解に近いことはあらためて注目すべきだろう。この論文の中のmesectodermとは、ectomesenchymeのこと。

29. Lufkin, T., Mark, M., Hart, C. P., Dollé, P., LeMeur, M. & Chambon P. (1992). Homeotic transformation of the occipital bones of the skull by ectopic expression of a homeobox gene. Nature 359, 835–841.
Hox遺伝子のKO実験が興味深い表現型をもたらしていた真っ盛りの論文。ある意味、典型例と言える。脊椎動物頭蓋のうちでも後頭骨はもともと椎骨であったものが変形して頭蓋に二次的に組み込まれたものとされる。進化とメタモルフォーゼを学ぶのに最適。

30. Mallatt, J. (1984). Early vertebrate evolution: pharyngeal structure and the origin of gnathostomes. Journal of Zoology 204, 169-183.
ヤツメウナギの鰓葉は軟骨支柱の内側にあり、サメのものは外側に結合している。ならば鰓弓骨格は両者において相同ではない?あるいは、神経堤細胞が移動と分布を変えたのか?相同性を発生学的に読み解く第1歩としてお奨め。

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2022.12.21

DGD編集主幹を終えるにあたり

2022年12月

DGD編集主幹 平良眞規
「DGD編集主幹の就任の挨拶」を書かないまま、「DGD編集主幹を終えるにあたり」を書くことになってしまいました。それは、一つはDGDの改革を行なっていましたので、それが一段落してから挨拶したいと思っていたところ、予想以上に時間の経過が早かったこと、そしてもう一つは筆不精ということだと思います。最後に、この3年間でのDGDの改革内容を皆様にお伝えしたいと思い、筆を取りました。

2019年の夏頃に2020〜2022年の3年間の予定で編集主幹(以下Editor-in-Chief: EiC)を拝命することが決まったとき、「DGDが学会誌として学会員から投稿したいと思えるジャーナルになるにはどうしたら良いか」を考え、2つの改革を行いました。1つ目は、Editorial Boardを名目上のものではなく、JSDB会員および海外の研究者がEditorとなって査読プロセスを行う実質的なEditorial Boardとして組織することです。そのためEiCをサポートする機関としてまず「編集会議」を組織し(第一期編集会議:私を入れてメンバー4名)、その後メンバーの入れ替えで第二期編集会議(メンバー6名)を組織して、具体案の作成を行い、Editorの役割を名文化して投稿論文のハンドリングと招待論文の依頼を行うことを業務として取り決めました。そして、それに同意する30名以上の中堅と若手の研究者を国内外から集めて、広く発生生物関連の分野を網羅するEditorial Boardを組織することができました。それにより投稿者が自分の研究分野に合ったEditorや自分の研究を理解してもらっている知り合いのEditorを指名することで安心して投稿ができるようになりました。また投稿前にEditorとコンタクトを取って原著論文の内容を相談したり総説の投稿を提案して認められれば投稿したりすることが可能となりました。このシステムは投稿者にとってメリットがあるだけでなく、Editorを初めて経験する研究者にとっても査読プロセスを理解する機会を得ることができるというメリットがあると考えています。またEditorial boardに関連する研究者からの投稿を呼び込む狙いも軌道に乗ってきています。
投稿を促進する2つ目の改革として、投稿者のニーズに合った論文タイプを新たに設置し、かつそれを広めるための特集号を企画しました。従来はResearch ArticleとReview Articleの2種類だけでしたが、特集号”Methods and Protocols”の出版に向けてMethod、Protocol、Technical Notesを設置し、特集号“Versatile Utilities of Amphibians”ではShort Research Articleを設置して数多くの原著論文を得ました。他に Resource、Historical Review、Mini Reviewも加えました。これらの中から皆様の目的にあった論文タイプを選び是非投稿してください。発生生物学会の総会で「DGDを若手研究者の登竜門としてご活用してください」と繰り返し述べましたように、修士論文や博士論文をDGDに投稿して研究者人生の最初の原著論文を発表する、あるいは超一流雑誌に発表した原著論文を核として研究人生初の総説をMini Reviewとして書いてみる、などは如何でしょうか。
さて、EiCとしての編集業務と、私自身もEditorとして査読プロセスを行なってみて初めて気がついたことが幾つもありました。EiCはまず投稿論文の事前チェックを行って査読に回すかリジェクトするかを決めます。それを最初に行い出して気がついたことは、miRNA関連の似たような論文が幾つも投稿されてくることです。そしてそれらが偽造論文(papermill products)として出版業界を揺るがし始めていることを知りました。EiCとしてこの偽造論文を見定めてリジェクトすることは必須であり多大な労力を費やしましたし、今も時々投稿されてきていますので気が抜けません。EiCのもう1つの業務はEditorによってアクセプトされた論文の最終チェックです。そこで認識したのは、アクセプトされた論文の完成度のばらつきが大きいことでした。これについてはいろいろな要因がありますが、第一には投稿時の論文の完成度(つまり著者による事前チェックの度合い、研究者間でのcritical readingの有無、英文校正の有無)ですが、その後の査読者のチェックの質と量、Editorのチェックの質と量、も大きく影響します。それらのチェックを済ませてきたものをEiCが見るわけですが、それでも科学的な記述の間違いや英語の間違いが半数以上の論文で見つかります。この問題にEiCはどう対処すべきかが編集会議で大きな議論となり、また理事会でも議論となりました。何故これが大きな議論になったかと言いますと、これまでのDGDの「売り」として「迅速な査読プロセス」を標榜していたことにあります。しかしこの「迅速な査読プロセス」と「論文の質(完成度)の向上」とを両立させることは難しい問題でした。「迅速な査読プロセス」を強く主張する意見では、アクセプトになった論文は仮に科学的に不備の記載の部分があったとしてもそれは著者の責任であり、査読プロセスはきちんと経ているので手続き的には問題なく即座に印刷に送るべき、となります。一方私は、DGDが世界に通用する日本の雑誌であるとJSDB会員が誇れるものにするには「論文の質(完成度)の向上」は欠かせないという立場でした。これはDGD Editorial Boardで議論する課題ではありますが、JSDB会員の皆様にとってDGDをどのような雑誌にしたいかという本質的な問題でもあります。
この3年間いろいろありましたが、DGDの論文の質は格段に良くなっていると自負しています。また以前は掲載論文の多くは総説でしたが、ここ1、2年は原著論文が数多く出版されていることも大きな変化です。そして2021年のImpact Factorはついに3を超えました。これは幾つかの好条件が重なったことで達成したと考えられますので、今後も上がった下がったで一喜一憂するものではないのですが、めでたい事には変わりません。

最後に、2019年の夏から始めましたDGDの改革に多大なご協力をしていただきました多くの方々に深く感謝申し上げます。特に第三期編集会議メンバーとして私を支えてくださいました鈴木孝幸博士と池谷真博士、並びにassistant editorとして多大なるご協力をくださいました近藤真理子博士に深く感謝申し上げます。今後もDGDのさらなる発展を祈念して筆を置きます。