2015.06.30

岡田節人基金 海外研究者招聘助成報告書 西田宏記(大阪大学)

2015年6月に筑波で行われた発生生物学会のシンポジウムの演者としてユタ大学からMike Shapiro氏を招聘しました。前会長の阿形さんから、発生学会で動物植物合同のセッションを行いたいとの依頼があり、東京大学の塚谷裕一さんと私でセッション(Topics in plant and animal development:http://www2.jsdb.jp/kaisai/jsdb2015/program-e.php#S05)をオルガナイズすることになりました。動物植物合同のセッションの意図は、植物関係の研究者にももっと発生学会に参加して欲しく、動物研究者にももっと植物のことを知ってもらいたいということです。動物関係の演者は3人としました。雌雄同体のホヤで自家受精が妨げられるしくみを研究しておられる名古屋大学の澤田均さん、ハトの品種多様性の遺伝的背景を研究しておられるMike Shapiroさん、金魚の品種多様性の遺伝的背景を研究しておられる台湾Academia Sinicaの太田欽也さんをお呼びしました。自家受精が妨げられるしくみや品種多様性を選んだのは、植物関係の発生研究者にもなじみやすいと考えたからです。このうちMike Shapiroさんの招聘を岡田節人基金にサポートしていただきました。
 Shapiroさん(http://biologylabs.utah.edu/shapiro/Shapiro_Lab/Index.html)の講演はハトの品種(350品種くらいあるらしい)における変異遺伝子の同定で、例えば、足に羽毛が生える変な品種ではTbx5やPitx1の転写調節領域に変異が起こっているとか、羽毛で首のところに襟ができる品種では、EphB2に変異があり神経堤細胞の移動に異常があることがわかったという話でした。品種多様性の遺伝的背景に関しては、海外では犬やペチュニアなどを用いて研究が進んでいるのですが、日本ではあまりそのようなアプローチは行われていません。日本の若い研究者にこのようなおもしろい研究もあるということを知っていただくという意味でも意義があったと思います。おかげさまで、シンポジウムには200人ほどの方に来ていただき、また、当日のみ参加された植物研究者もおられたようでした。
 岡田節人基金はグローバルな視野に富む研究者の育成を目的として、特に若手の研究者の育成に主眼をおいて岡田先生により設立されたものです。Shapiroさんには懇親会において、日本の若手研究者向けにスピーチをお願いしました。また、ポスター賞授賞式にて受賞者に賞状を渡していただきました。写真はその時のものです。
 以下に、大会後にShapiroさんに書いていただいた、大会参加の印象と若手に向けてのメーセージを添付致します。

Dr. Shapiro氏からのメッセージ

I had the pleasure of attending the Japanese Society of Development Biologists (JSDB) meeting for the first time this year. I am grateful to Hiroki Nishida and Hirokazu Tsukaya for inviting me to the meeting, and for assembling an outstanding symposium on Topics in Plant and Animal Development. I enjoyed the meeting very much, in part because of the excellent science and collegiality, and also because of the hospitality and welcoming spirit I encountered virtually everywhere during my visit. At the meeting itself, I found two things especially notable. First, the creativity of Japanese developmental biologists continues to impress me. I saw many presentations that used non-traditional model organisms to address fundamental topics in development and cell biology. These organisms might not have been the easiest choice (e.g., fewer developmental and genetic tools), but they can offer important new insights that are difficult to glean from more widely used species. In particular, I was inspired by the diversity of marine organisms being studied in Japanese labs, and how some of these organisms were being developed as true experimental systems. Second, I admired the bravery of the rising generation of scientists ? the graduate students and postdocs ? who gave excellent talks in their non-native language. For better or worse, the global scientific community communicates primarily in English, including most of the top journals in our field. For this reason, I am glad to see that the JSDB meeting is held primarily in English. With such creative work being done by some of the youngest investigators, developmental biology in Japan will continue to make key contributions to the field in the future, and training the next generations of scientists to disseminate their research as broadly and effectively as possible should remain a high priority. Finally, I wish to thank the Okada Fund for their generous support that enabled me to attend the meeting.

Mike Shapiro
大阪大学・理学研究科・生物科学専攻 西田宏記
2014.11.28

日本-スペイン合同シンポジウム 参加報告書 萩原奈津美(関西学院大)

関西学院大学大学院
理工学研究科 生命科学専攻
萩原 奈津美
今回、日本発生生物学会の旅費支援をいただき、スペインで行われたSpanish Society for Developmental Biologyと日本発生生物学会の合同大会に参加いたしました。参加を決めた当初は一人での海外渡航と、自らの英語力に大きな不安を抱えていました。実際、現地到着時間が夜中だったために、タクシーでホテルに向かった際、高額な料金を請求され数十分値段を交渉するといったハプニングもありました。その夜は無事に発表して日本に帰れるのだろうかと不安がつのりましたが、せっかくここまで来たのだから、いろんな人との出会いを楽しもう、と自分に言い聞かせ、次の日を迎えました。幸運にも2日目には、以前、他学会の特別企画に参加した際、お世話になった研究者の方と再会することができ、知り合いの人がいるということに張りつめていた緊張の糸がほぐれました。
 そして迎えたポスター発表の日。私は「膜反転に伴って新たな機能を発揮する膜蛋白質が幹細胞分化を誘導する」というテーマで発表を行いました。緊張の面持ちで立っていましたが、はじめはなかなか質問してくれる人が来ず、焦る気持ちもありました。そこで、少しでも足を止めてくれた人がいたら、勇気を出してこちらから声をかけてみることにしました。その結果、専門が異なる方もいらっしゃいましたが、慣れない英語での説明にも関わらず、複数の人に興味を持っていただくことができ、有意義なディスカッションに発展させることができました。
 また、最終日の懇親会では、10名ほどだった日本人発表者の方全員とお話しすることができました。世界の第一線を走る研究者の方や、遠く離れた大学の同じ悩みを抱える博士課程の学生さん達と日本のアカデミック研究の現状といった真面目な話から、もし宇宙人が攻めて来たら研究者として地球防衛軍に参加しよう、というくだけた話まで本当に楽しい時間を共有することができました。国際学会という特別な環境で国内外問わず多くの方に出会えたことが私にとって大きな財産となりました。この経験を通して、たとえ不安や心配があったとしても、まず行動してみることの大切さを身に染みて感じました。今後も出会えた方々とのご縁を大切に、研究者として、人として、精進していこうと思います。
 最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった、日本発生生物学会並びに関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 石橋朋樹(大阪大学)

大阪大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
細胞生物学研究室 博士前期課程1年
石橋朋樹
"なんだか面白そうなことにはひとまず首を突っ込んでみる"という性質ですので,今回,浅虫臨海実験所にて行われる夏季シンポジウムの話を聞いたときには,直ちに参加申し込みをしました. 浅虫の気持ちのよい気候のなか,想像以上の楽しい時間を過ごすことができました.

今回の私の発表では,懇親会で話の種にして頂けるほどに多くのコメントを頂戴しました.頂いたコメントは,今後どのような実験の計画を立て,どのような哲学を持っていくべきかという示唆に富むものであると共に,自分の考察の浅さを実感させるものでもありました.怒涛のごときディスカッションに対して,的確な返答をできなかったことはとても口惜しい思いをしましたが,もっと実験をして考察を重ねて,いつかあっと驚かせる結果を持参してやる,と研究に対しての気持ちを新たにするモチベーションにもなりました.

また,夏季シンポジウムでの口頭発表が,私にとって大学外初の口頭発表でしたので,自分の発表への"批評のストック"を持っていなかった私としては,数多く頂いた鋭いご指摘のすべてが,今後の自分の発表を改善していく良い指針となりました.

単純なディスカッションだけでなく,志の高い参加者の方々や,普段なかなか話すことのできないパネリストの先生方と垣根なく交流できたことも,大変に有意義な経験となりました.発表内容はもちろん,発生学の面白さについて濃厚な議論をさせて頂いたことは,自分自身の現在,将来を見直す良い契機となりました.

最後になりましたが,今回の企画を運営して下さった先生がた,および浅虫臨海実験所の職員の皆さまに心より感謝を申し上げます.シンポジウム最終日に,まだ自分は修士1年だから少なくともあと2回は参加できるな...と皮算用するほどに楽しいシンポジウムでした.本当にありがとうございました.また,参加にあたり,旅費支援を頂きました.こちらも,重ねてお礼申し上げます.
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 守野孔明(筑波大学)

筑波大学大学院 生命環境科学研究科
生物科学専攻(筑波大・院生命環境)
D2 守野孔明
9/1-9/3に東北大学付属の浅虫海洋生物学教育研究センターで行われた夏期シンポジウムに参加してきました。実は前回下田臨海実験センターで行われた時にも参加するかどうかかなり迷ったのですが、どうも敷居が高く、抜き身で切り合う恐ろしい所のようなイメージがあり、参加を見合わせてしまっていました。非モデル生物を使い、発生というより進化色のかなり強い研究している自分が参加していいものか、今回もかなり躊躇いがあったのですが、前回参加者の研究室の先輩やオーガナイザーの方からの強い勧めもあり、思い切って参加してみる事にしました。

不安を抱えての参加でしたが、発表時間が40分と長く、じっくりと背景を説明出来た事もあってか、聴衆の方々としっかり実のある議論が出来たように思います。今までと異なった視点からの意見をたくさんいただき、今後の研究の方向性を考える素晴らしい機会になりました。また、分野がかなり異なる他の参加者やPIの方々の研究に関しても、時間がしっかり確保されていたお陰で、よく理解し議論を交わす事が出来ました。

なにより、今まで交流の少なかった縦横の人の繋がりを持つ事が出来た事が今回の一番の収穫です。オーガナイザーの方々のお陰で、毎晩交流会の準備ができておりましたし、地引き網のようなレクリエーションもあり、研究発表以外の時間も楽しむ事ができました。会場となった浅虫のまわりは景色もよく、何がなくとも来てもいいような場所でした。そういう面でも、青森まで来た甲斐がありました。

次回以降もこのような企画が続いて欲しいと思いますし、参加を迷っている学生の方が居るのであれば、参加する事をお勧めしたいです。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 冨永斉(基生研)

基礎生物学研究所形態形成研究部門
冨永 斉
今回の浅虫でのワークショップでは、研究者同士のよい交流の機会を得ることができたと思う。 研究発表を通して、自分に近い世代の研究者がどのような研究をしているかを知ることができたが、胚の遺伝子発現や、胚操作による機能解析、個々の細胞の挙動に着目したもの、メカノバイオロジーに至るまで、分野は多岐に渡っていた。また、研究手法やアイディアも独創的なものが多く、オリジナリティがあって面白い研究をするための参考になるものばかりで、今後の自分の研究に活かしていきたいと思った。 また、今回のワークショップは質疑応答の時間が長めに取られていたので、ディスカッションを通してそれぞれの研究を深く知ることができた。

自分の研究発表に対しても、問題点の指摘や、これからの研究の方針に関するアドバイスなど、有意義な意見を数多く得ることができ、研究の方針を見直す良い契機が得られたのではないかと思う。今回得られたこれらの意見を、今後の研究を考える上で参考にしていきたいと考えている。 懇親会でも、パネリストの先生方や他の発表者と、お互いの研究発表や、これからの研究などについて、発表後の質疑応答ではできなかったような、より詳しい意見交換をすることができた。このような議論を通して、多様な研究分野を持つ学生や若手研究者同士の知り合いと交流を深めることができたので、今後ともディスカッション等を通して交流を深めていけたらと思う。

会場は、海に近い場所で、景色もよく、今回の様な小規模なワークショップを開くには良い場所だと思った。最終日の地引網実習では、種同定の作業を通して、普段関わることのない分類学の世界にも触れることができた。また浅虫の海から、自然界に生息する動物の多様性を再確認することができ、改めて生物学の面白さと、これからの発展性を感じた。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 大沼耕平(首都大学東京)

今回参加した夏季ワークショップには、パネリスト・ポスドクから修士課程の学生まで、研究材料やテーマが異なる幅広い年代の研究者が集まった。そういう人たちと議論・交流することは、普段中々できないので、非常に有意義であった。また、研究の考え方や発表の仕方など反省点・改善点が見えてきたので、来て良かったと感じた。研究とは離れるが、地引網体験や採った魚の種同定は初めての経験だったので、新鮮で楽しかった。全体を通して、刺激的なワークショップであったと思う。

シンポジウムでは、質疑応答の時間が約20分あり、普段の学会よりも長かった。そのため、自分と他の人の発表の両方で、いつもより長く様々な質問に触れることができた。その中で、自分も思いついた質問もあれば、思いつかなかったものもあった。自分が思いつかなかった質問を聞くことができ、こういう考えもあるのだと勉強になった。同時に自分の勉強不足を感じたので、改善していきたい。

また今回思いがけず、どうすればわかりやすく自分の発表を伝えられるかを学ぶことができた。シンポジウムで様々な発表を見聞きし、どういう発表がいいか、悪いかを比較して判断することができた。プレゼンテーションの優秀賞をとった方々の発表は、とても参考になり、良いところを真似していきたい。

地引網で魚を採った後、その種の同定を試みた。同定は、魚をよく観察してその形態の特徴を同定本に書かれているものと照らし合わせて行った。普段慣れていないせいか、観察で魚の特徴を捉えるのが中々難しく、何回か種を間違ってしまった。体験ということで行われた地引網・魚の種同定だったが、ただの体験に留まらず、よく観察することの大事さを改めて感じる良い機会となった。「よく観る」ことは、研究の遂行・発展に大事なので、今回の体験をきっかけに、そのスキルを伸ばしていきたい。

 今回のワークショップから色々学ぶことができ、参加して良かったと感じている。ここでの経験を今後の研究に活かしたい。
首都大学東京 理工学研究科 生命科学専攻 
発生プログラム研究室
大沼耕平
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 亀水千鶴(基生研)

基礎生物学研究所 初期発生研究
総合研究大学院大学 博士後期課程 2年 
亀水 千鶴
夏季ワークショップ参加にあたって、旅費を支援していただきとても感謝しています。

はじめ、青森で開催ということで金銭的、距離的な問題もあり参加しようか迷いましたが、先生方や同世代の学生と短い期間でしたが濃密な時間を過ごすことができ、本当に参加してよかったと思っています。

 昨年から新たな研究課題に取り組んで1年たち、ちょうど結果も出始め不安と緊張の中参加をしました。発表がはじまると、みんな堂々と発表をして、先生方からの厳しい質問にもしっかりと答えており、同世代の学生なのにすごいなと感心しました。
自分の発表になるとやはりものすごく緊張しましたが、なんとか発表を終えることができました。しかし先生方からの質問に対してはうまく答えられない点がいくつかありました。
発表を通して自分のまだまだ甘い点がわかったこと。自分では考えていなかった点への指摘を受けてさらに検証すべき点がわかりました。今回は学生だけではなく、先生方の講演もありました。すごい先生方のおもしろい話や教訓的な話を聞けて良い経験になりました。

始めの頃はほとんど会話がありませんでしたが、会が進むにつれて学生や先生方とも話せるようになり、自分の研究や相手の研究、日頃の悩み等について夜遅くまではなせるようになりました。2日目の夜には、外でバーベキューをしながらお酒をのみ、青森のおいしいホタテを食べながら、先生や学生とさらに親睦を深めることができました。

 今回シンポジウムに参加することで、刺激を受けて色々なことを考えるきっかけになり、さらに研究をがんばろうという気持ちになれました。このようなシンポジウムがこれからも続いていけばいいなと思いました。
2014.05.25

ISDB 2013 参加報告書 佐藤恵莉子(東北大学)

東北大学生命科学研究科生命機能専攻
神経機能制御分野 修士課程1年
佐藤恵莉子
この度、日本発生生物学会より旅費支援をいただき、2014年5月27日から30日まで名古屋で開催された第47回日本発生生物学会に参加しました。本学会ではシンポジウムやオーラルプレゼンテーションだけでなく、フラッシュトークや若手ワークショップなども行われており、若手研究者が多くの方から質問やアドバイスを受けられる場が設けられていました。また、ポスター発表も2日間にわたって行われ、なるべく多くの発表を聞けるようにと配慮されており、年会を単なる自己満足の発表の場とするのではなく、活発な議論を促し、発生生物学の分野を新たな段階へと進行させようとする気概が伝わってきました。一部を除いて全般にわたり英語を使用言語と設定したことも、分野の違いによって、内容理解が難しい発表もありましたが、自分自身だけでなく発生生物学会全体で見た時にも、今後必ず役に立つだろうと感じました。
私は本学会で、メカニカルストレスによる細胞分化制御についてポスター発表を行いました。研究内容が純粋な発生生物学とは少し異なっているため、聞きに来てくれる人があまりいないのではないかと不安に思っていましたが、当日は多くの方に発表を聞いていただくことができました。また、自分では気が付かなかった点について指摘を受け、意外な切り口からの質問を沢山いただけたことで、新たな課題がみつかり、今後の自分の研究について考える良い機会になりました。
その他の発表では、プレナリー・レクチャーでAlexander Schier博士やHans Clevers博士といった海外で活躍されている方々のお話を聞くことができて大変勉強になりました。また、分野外ではありますが特に興味を魅かれたのはカブトムシの角形成についての研究で、性差を司るdoublesexという遺伝子の働きをRNA干渉により抑えると雄にも雌にも未完成な角がつくられるというお話でした。カブトムシを対象とした研究に関する発表を初めて聞いたのでとても興味深い内容でした。このように個性的な発表が多くあるのも、発生生物学会の魅力の一つであると思います。

今回の発生生物学学会では多くの人の発表を聞くことができただけでなく、自分の研究成果も発表する機会をいただけたことはとても貴重な経験になりました。このような機会を与えて下さった日本発生生物学会、並びに関係者の方々に深く感謝いたします。
2014.03.26

ISDB 2013 参加報告書 茂木淳(東北大学)

東北大学農学研究科修士2年
茂木 淳

私は東北大学農学部海洋生物科学科に所属し、ヒラメに備わっている概日リズムの形成機構について研究しています。そのため、発生生物学会では普段では聞けない、様々な生物の発生に関する研究を聞くことができ、新鮮な気持ちで学会を通して勉強することができました。各生物でのTALENやCrispr/cas9を用いた遺伝子ノックアウトの研究は初めて目にするものが多く、衝撃を受けました。異なる種間での発生のメカニズムには相違点、類似点がそれぞれあります。まだ勉強不足な私にとって、それらの知見を多く知ることで、点と点を線で繋ぐように、発生学の全体像を少し垣間見えるような気がしました。また自身のポスターのディスカッションでも、国内外の多くの研究者の方に話を聞いていただき、貴重な意見をいただくことができました。特に予想していたよりも多くの海外の方に興味を持っていただけたことが嬉しかったです。しかし私の英語力の低さから、質問に対して十分に解答、議論することができなかったことが心残りで、やはり英語をもっと勉強しようと切実に思いました。また若手の研究者と交流し、意見交換をすることができたことは良い体験になったと思います。

以上のことから、今大会への参加は私のような院生にとっても今後の研究につながる貴重な機会になりました。最後に、このたびの学会参加に際して東北復興として旅費を支援して下さったこと、大変感謝しています。私の住む仙台も地震により特に海沿いは大きな被害を受けました。多くの研究者がそれぞれの関わり方で、東北の復興に向けて活動しています。私自身も、微力であっても自身のできることを考えて、被災地と末長く関わり続けていきたいです。
2014.03.23

ISDB 2013 参加報告書 小野寺望(岩手大学)

岩手大学大学院 連合農学研究科
寒冷圏生命システム学専攻
小野寺望
複数年にわたり震災支援旅費補助をして頂き、心より感謝申し上げます。
東日本大震災により母親が津波に巻き込まれ亡くなりました。そのため震災から今まで、私は週末や研究活動の合間を利用して、母の代わりに祖母の介護の手伝いをしています。また研究の進展に伴い、アルバイトに割くことの出来る時間も殆ど無くなってきました。更に、研究室の財政状況が悪く旅費の補助が困難であるため、震災以来、この制度を利用させて頂いております。
発生生物学会は私が学部4年生であった2009年から毎年参加しており、これまで何度かポスター発表など行い、今年度は初めて口頭発表をさせて頂きました。今回は、本大会0日目のサテライトワークショップにて「ニワトリ胚中脳視蓋でみられる転写因子をコードする軸索性mRNA」という発表を行いました。質疑応答時には貴重なコメントを頂き、現在、それらを研究にフィードバックさせつつあるところです。この研究の半分ぐらいのデータは数年前に既に得ていましたが、データの信憑性を上げることに腐心したり、あるいは中途半端なデータを公開するとビッグラボに真似されて追い越されてしまわないかという懸念もあり、これまで長く非公開にしていました。
例年そうですが、今回の年会でも、他の研究者・大学院生の方々の発表に知的刺激をたくさん受けました。東北地方は県の面積が広く、岩手大学と隣の東北大学までの直線距離は、東京と福島県南端、あるいは理研CDBと基生研の間ぐらいの距離があるため、同じ/近い分野の研究者の話を生で聞いたり、discussionしたり出来る年会は自分にとって貴重な時間です。
最後になりましたが、本大会に参加するにあたり、多大なるご支援を下さった日本発生生物学会、学会関係者の皆様に心より御礼申し上げます。今回の経験を自身の研究生活に活かし、より一層深く研究に取り組んでいく所存です。