2022.02.15

海外便り№11 川口茜さん(Institute of Molecular Pathology)

川口 茜
ポスドク研究員
Lab of Prof. Elly Tanaka
Institute of Molecular Pathology, Vienna Austria
ORCID: 0000-0001-7722-0480
初めまして
 オーストリア病理学研究所(Research Institute of Molecular Pathology)のElly Tanaka博士主催の研究室においてポスドク研究員をしております、川口茜です。この度は、阿形清和先生と田中幹子先生にお声がけ頂き、海外だよりを書く機会をいただきました。海外での生活について、形式ばらずに記したいと思います。
 私は現在、有尾両生類(アホロートル)の四肢再生をモデルとし、再生で引き起こされるエピゲノム制御に着目して研究を進めています。今となっては日本を出て7年目に突入しましたが、学位取得の当時は、海外ポスドクなんて想像もしていなかったです。その理由は主に2つ。 (1) 文化が全く違う国に住み、さらに第二言語で生活する自信がなかった (2) インターネットやIT技術の普及により、国外の研究者と連絡を取る、共同プロジェクトを遂行することは容易な今の時代、わざわざ海外の研究室に行かなければできないことはないと思っていた、です。(1) については、もともと適応力が高かったこともあり、文化の違いはすぐ慣れました。言葉については、カタコトの英語でなんとか生きています。(2) については、自信の無さから、やらない理由を見つけて外に出る必要がないと言い訳していたと思います。これについては、最後にもう少し書きます。

なりゆきから現在
 私は長浜バイオ大学で卒業研究を行い(和田修一先生)、修士課程から奈良先端大学院大学の分子発生生物学講座(高橋淑子教授主宰。現京都大学)に入りました。そこで、荻野肇先生(現広島大学)と越智陽城先生(現山形大学)と出会いXenopusをモデルとした眼発生を制御するエピゲノム因子の機能解析に従事し、2014年に博士号を取得しました。
 眼発生の研究プロジェクトとは別に、阿形清和先生が代表をされていた新学術班に荻野先生と越智先生が参加され始めたことが、現在につながる「器官の再生研究」に関わり始めたきっかけです。当時はツメガエルをモデルとして再生研究に関わっていましたが、完全な器官再生能力を可能にするアホロートルのゲノム制御に興味を持ち始めたのもこの頃です。
 アホロートルのエピゲノム制御に興味を持った一方で、当時アホロートルのゲノム情報はなく、ゲノム制御のモデルとしては不向きなモデルだなとも思っていました。そんな折、阿形先生からドイツのElly Tanaka先生の研究室には未発表のアホロートルのゲノム情報があるから、エピゲノム制御やるならあそこしかないと教えていただきました。だからといって、海外で生活するなんて考えられず。しばらくは国内でポスドクポジションを探していましたが、どこにもご縁がなく時間だけが過ぎました。そんな時、転機が重なり2014年に理研に来日していたElly Tanaka 先生と直接会うことができました(これについては、腰の重い私を鼓舞してくれた越智先生の助力があったことを記しておきます)。彼女とはその場で、自分の研究の話をし、さらにポスドク先を探しているのだけどポジションがあるかを尋ねたところ、自分でフェローシップを取ってくるならきてもいいとのことでした。さらに時はたち、2015年の11月からTanaka 先生の研究室(当時はドレスデン・ドイツ)に入り、そして2017年の1月には研究室の引っ越しに伴ってドイツからオーストリアに移動しました。
 2015年に渡航してから、最初に知った驚きの事実は、当時のTanaka 先生の研究室にはエピゲノム研究で使えるほどのゲノム情報がなかったということです。あら、話が違うよね?とちょっと絶望的な気分になったことを覚えています。ということで、本来の目的のエピゲノム制御の研究課題を遂行するべく、当時は新しかったHi-Cゲノムアッセンブリを用いて、アホロートルゲノムの整備から始めることになりました。アホロートルの32Gbという巨大なゲノムアッセンブリは非常に挑戦的で、結局5年の時間を費やして論文にすることができました(PNAS, 2021, co-first author)。このゲノムアッセンブリに費やした時間は巨大ゲノムに挑戦するスキルを大きく向上させ、43Gbというさらに大きなゲノムを持つ肺魚のゲノムプロジェクト(Nature, 2021, co-author) にも貢献することができました。現在は、四肢再生とエピゲノム制御に関するデータをまとめつつ、より発展した形で生物学にアプローチできる、そしてさらに自分が成長できるような次の展開を模索しているところです。

フェローシップを取って研究環境を良好に保つこと
 海外ポスドクを探すとき、自分でフェローシップを取ってくることを条件にするラボは多いです。トップラボにアプライしたいのであれば、なおさらでしょう。ただ、フェローシップの有無は、そこでのポスドクライフを大きく左右しますので、ラボにお金があるないに関わらず出せるフェローシップは全部(日本国内外問わず)出すべきと思います。理由は、1. 自分の資金を持っている最初の1−2年の間に、英語は下手でも研究はできるとアピールする時間を稼ぐこと、さらに2. 資金を獲得する能力のある研究者として評価されることが重要だからです。結果として、自分を取り巻く研究環境を良好に保つことができますし、英語に苦手意識がある大半の日本人には必須です。私の場合、自分で給与を取ってくることが前提でしたので、渡航前に海外学振を含む3つの留学助成に応募し、結果として渡航当初の2015-2017年は2つの留学助成、それらが終わった後少しして2018年に海外学振に採択されました。Tanaka 先生のグラントから給与を出してもらう時期と自分の獲得資金で賄う時期を行ったり来たりしながら今に至ります。
 日本であれば、財団が提供している留学助成や(海外特別研究員(海外学振))は知られていますが、日本国外に存在するフェローシップについては情報が希薄だったりします。どういったフェローシップが存在するのか、それらを獲得することがどの程度現実的なのかについて、行きたい国で働くポスドクに積極的に連絡を取ってみるといいです。ヨーロッパの場合、HFSPやMarie Curie、EMBOといったフェローシップに応募することができます。ただし、これらは倍率が高く、華やかなCVと強力な推薦書を持った猛者達と戦うことになります。一方で、各国の文部科学省に相当するところや所属する研究所が出しているフェローシップが複数存在し、こういったものが実は狙い目だったりします。
 海外ポスドクを探す上で、考慮すべきもう一つのことは、衣食住と社会保障システム等の違いでしょうか。前者については、不安になることがあるかもしれませんが事前に知っておくべき必要はないと思います。どこの国でも生活し始めれば、あとは生き伸びるしかないのでなんとでもなります。後者についてですが、これは国それぞれですので、例えばFacebook 上で運営されているJSPSコミュニティなどに入り込んで、少し知っておくことをお勧めします。オーストリアでの私個人の体験ですが、海外学振を持っていた2年間は学振の給与のうち、48%をオーストリアに納めなければならず、著しく手取り給与が下がりかけました。日本からの留学助成金がスタイペント(いわゆる旅費扱いで、納税の対象にならない)のか、給与として認識されるのかは国によって全く異なり、これはあまり知られていないことだと思います。海外学振は高給取りというイメージがありますが、実は国によるのでご注意を。
 さらに加えておくと、日本とのネットワークは切れない様に意識的に努力をした方がいいと感じます。海外でポスドクをしていれば、必然的に海外でのネットワークは増えていくでしょう。しかし、次のキャリアステップを日本で、と考えている場合はなおさら日本との繋がりを意識した方がいいと思います。例えば、今はオンラインで参加できる学会も増えていますし、時間的・金銭的制約を解消するためにも積極的にこれを利用しましょう。これは意識しておかないとあっという間に浦島太郎になってしまいます。これは私の後悔にもとづきます。


ドイツとオーストリアにおける生活・研究所
 2017年から住んでいるウィーン(オーストリア)は、歴史的にハプスブルク家がドイツ・オーストリア・ハンガリーを統制していた拠点都市で、多くの宮殿や教会が立ち並びます。マリーアントワネットが生まれた王宮も存在しますよ。またウィーン楽団で知られるように、ベートーベンやモーツアルトが宮廷音楽家として活躍した場所ですので、音楽が好きな人は楽しめる街です。ドイツ語圏ですが、様々な人種が暮らす国際的な街なので、どこへ行っても英語で生活することができます。治安は非常によく、一人で夜歩いていても危険な目にあうという話は聞いたことがありません。私も、夜中に一人で走ったりすることもありますが危険な経験は一度もないです。夏は短く乾燥しているため、息苦しくなるほどの蒸し暑さを知っている日本人としては、気温で夏を感じることはありません。夜10時でもまだ昼間のように明るい、公園で友達とビールを飲む、そしてドナウ川で人が泳いでいるのを見ることで夏を感じます。冬は厳しく、16時には真っ暗です。ウィーンでの生活には非常に満足していますが、唯一の不満は、オーストリアビールがドイツビールにも日本のビールにも全く劣ることでしょう。

現在勤務するIMPは、Vienna Bio-centerと呼ばれる集合体の一つです。モデルから非モデルまで幅広いモデルを用いて、本当にあらゆる分野の研究室が存在します。トップジャーナルの常連研究室が軒を連ねており、加えてデスクエリアも研究室内もオープンスペースなので分野を超えて研究室間の交流があることがいい刺激になっています。学生もポスドクも、なんだったらPIも研究の上では平等です。学生がPIと対等に議論しあっているのを見ると、立場は関係なく全員が一人の研究者として研究を進めているなと実感しますね。
 Tanaka 先生の研究室についてですが、現在31名の巨大な研究室です(ポスドク17、博士課程7、修士課程5、技術補佐2)。これだけ大きなラボですが、ラボメンバーはプライベートでも非常に仲が良く、頻繁に夕食を共にしたりPubにも出かけたりしますよ。おおよそのポスドクは1人につき2つから3つのプロジェクトを掛け持っていますし、もちろん博士課程の学生もそれぞれプロジェクトがあります。特にすごいのは、これだけの人数・プロジェクトがありながらも、全ての研究課題が、再生生物学において根本的に解かれていない「大問」を捉えているところです。また、それを維持する研究資金を獲得し続けていること、多様なプロジェクトを概ね全て把握してマネージメントするTanaka 先生の絶え間ない努力と聡明さです。すごい、の一言に尽きます。素晴らしい同僚に囲まれて充実した研究生活を過ごさせてもらっています。
留学しないと見えないことはきっとあるかも
 最後に。冒頭で、海外なんて行かなくても十分だと思っていたと書きました。研究費の大小や機器の違いなど、技術的な側面で日本の研究は規模が小さくなるかもしれませんが、日本人の勤勉さと質の高い技術力・論理的思考力の高さは誇るべきものです。実際には、わざわざ海外の研究室に行かなければできない研究はそこまでないのかもしれません。ただ、ありきたりなコメントですが、やらなかった悔いより、やった後にその先で何かを悔いる方が、多面的な視野で物事を捉える人に成長させてくれる気がします。私自身は、研究キャリア以上に、意味があったと思っていますし、当時の指導教官たちや後押ししてくださった方々、留学を可能にしてくれた財団に心から感謝しています。もし私が日本にずっといたら、留学しなかったことの悔いも感じていなかったかもしれません。だって、見たことがない世界や、知らない経験を後悔することはできないでしょう?だから、ここまで読んでくださった方がいて、その何人かがポスドクや博士課程で海外の可能性で迷っていらっしゃるのであれば、少し前向きに考えるきっかけをお届けできていたら嬉しいです。長々と書きましたが、何かあればご遠慮なく連絡くださればと思います。
2018年、自然史博物館から見下ろしたクリスマスマーケットです。外はすごく寒いですが、甘ったるいグリューワインを友達と飲むのが楽しみなのです。2020、2021はコロナで中止されました。
2022.02.01

日独合同若手ミーティング 参加報告書 池田達郎(基礎生物学研究所 生殖細胞研究部門)

11月28〜30日にオンラインで開催された日独合同若手ミーティングに参加しました。まずはミーティングを企画していただいたオーガナイザーの先生方に深く感謝申し上げます。私は現在のポスドクの仕事でドイツのグループと5年近く共同研究を行なってきました。それもあり、初めにこの合同ミーティングがドイツで現地開催されると聞いた際は、ぜひ参加してドイツの研究者と直に議論したいと考えていました。コロナ禍により1年延期した上でオンライン開催となってしまいましたが、現在の仕事を海外の方々に聞いてもらって見直す良い機会と考え、発表させていただきました。
今回のミーティングにはドイツの様々な地方の大学、研究所、さらには欧州の異なる国の大学、研究所から選りすぐりの方々が参加していました。ミーティングのテーマは”Stem cells, development, & regeneration: the emergence of new tissues”だったのですが、多様な生物・器官を対象に、胚発生、成長、恒常性維持、老化現象まで注目した話を多数聞くことができました。とりわけ、どの方々も生物の面白い現象に立脚して、基礎の興味をモチベーションに掘り進めているように感じられました。私は特に、魚類の生涯にわたる成長を支える組織幹細胞の研究と、耳に空いた穴を塞いで再生できるトゲネズミの研究に心が惹かれました。また、in vitroモデルの発表も多く、様々な組織の再構成技術が確立してきているとともに、再構成系を用いた発生現象の理解という研究スタイルが一般化していることを認識させられました。
私は” Clonal dynamics of murine developing male germ cells until the next generation”というタイトルで口頭発表しました。マウスでは胎仔に生じた始原生殖細胞(PGC)が増殖して精子幹細胞を生じ、そこから生涯に渡って精子が産生され、次世代の仔が生じます。このとき胎仔のPGC1つ1つがどの程度の幹細胞を作り出して次世代へと寄与するのかを、PGCを多様なDNA配列(バーコード)で標識して、それぞれの子孫細胞(クローン)の動態を追跡しています。このバーコード標識にドイツの共同研究者が開発した技術を適用しています。発生・幹細胞のクローン動態という、ミーティングのテーマと合致した内容だったのもあり、5人の方から質問をいただくことができました。これまで思い描いてきたクローン動態の生物学的な意義を提案し、意見を得ることができました。
  海外の若手PIのエレガントな発表を聞きながら、彼/彼女らがいかに自分の立ち位置を見出し、プレゼンスを築き上げてきたのかを想像していました。どの方も一歩ずつ努力を重ねて模索してきたことが伝わってきました。私も目の前の仕事を最大限に楽しみつつ、彼/彼女らのようになれることを目指して精進しようと思います。
最後に、今回は時差のためドイツ朝、日本夕方に開始するプログラムで行われました。自分のデスクからオンラインで参加できて便利なぶん、夕方まで実験をしてからjoinして夜12時まで英語で発表を聞き、中々タフでした。またZoomではほとんどの聴衆の顔が見えず、発表の後の休憩時間などに気軽に声をかけてもらったり議論が始まったりといったことが中々なく、もどかしさを感じました。来年には海外渡航して実際に異国の研究者と顔を合わせ、リアルな議論ができることを期待しています。
2022.01.05

倉谷滋のお勧め<まとめ第2弾>

倉谷滋先生お勧めのクラッシック論文を紹介します。

11. Bellairs, A. d'A. & Gans, C. (1983). A reinterpretation of the amphisbaenian orbitosphenoid. Nature 302, 243-244.
発生の類似性が形態的相同性と関係あるのかないのかという基本的疑問を提示した論文として有名。

12. McBratney-Owen, B., Iseki, S., Bamforth, S. D., Olsen, B. R. & Morriss-Kay, G. M. (2008). Development and tissue origins of the mammalian cranial base. Developmental Biology 322, 121-132.
新しい実験手法はこうやって使うものだと考えたい。何ができるかではなく、どれだけ深遠な謎を手にしているかということが科学の価値なのだと思う。

13. Meier, S. (1979). Development of the chick embryo mesoblast: Formation of the embryonic axis and establishment of the metameric pattern. Developmental Biology 73, 25-45.
いわゆるソミトメアが最初に報告された記念碑的論文。なんと、あれは70年代だったのか。

14. Metcalfe, W. K., Mendelson, B. & Kimmel, C. B. (1986). Segmental homologies among reticulospinal neurons in the hindbrain of the zebrafish larva. Journal of Comparative Neurology 251, 147-159.
ロンボメアやHox遺伝子で世間が盛り上がっていた一方、このような神経発生学的研究もなされていた。まだゼブラフィッシュが主要なモデル生物になる前のことである。

15. Moody, S. A. & Heaton, M. B. (1983). Developmental relationships between trigeminal ganglia and trigeminal motoneurons in chick embryos. I. Ganglion development is necessary for motoneuron migration. Journal of Comparative Neurology 213, 327-343.
この論文は連作の最初のもの。形態形成の背景に発生機構があることをうまく説明している。

16. Noden, D. M. (1983). The role of the neural crest in patterning of avian cranial skeletal, connective, and muscle tissues. Developmental Biology 96, 144-165.
Nodenが本格的に発生機構に切り込み始めた重要な論文。骨格の形態形成に関する、のちの分子遺伝学的研究の大きな礎になった。

17. Gans, C. & Northcutt, R. G. (1983). Neural Crest and the Origin of Vertebrates: A New Head. Science 220, 268-273.
いわゆる「New Headセオリー」を世に問うた記念碑的論文。その影響力は今でも強い。これ以来、「神経堤=頭部=脊椎動物」という理解が広まった。

18. Garstang, W. (1928). Memoirs: The Morphology of the Tunicata, and its Bearings on the Phylogeny of the Chordata. Journal of Cell Science 285, 51-187.
ガースタングによる「アウリクラリア幼生説」を述べた論文。Evo-Devoの時代になっても、基本的に同じ根本的問題が問われていることが分かる。

19. Gilbet, P. W. (1947). The origin and development of the extrinsic ocular muscles in the domestic cat. Journal of Morphology 81, 151-193.
脊椎動物の外眼筋の発生は昔から大きな謎として認識され、多くの論文が書かれてきた。が、現在、最も形態形成の機構が分かっていない頭部筋がこれである。緻密な記載論文から勉強するのも悪くはない。

20. Bone, Q. (1957). The Problem of the ‘Amphioxides’ Larva. Nature 180, 1462-1464.
Goldschmidtの論文は入手しにくいかも知れない。「amphioxides」とは、ナメクジウオの巨大幼生。はたしてこの正体は何か。後に著名な遺伝学者となったGoldschmidtは学位論文でこの動物を使い、ナメクジウオにすでに鰓弓筋が存在していることを示した。


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2021.11.26

岡田益吉先生 追悼

岡田益吉先生(筑波大名誉教授)がご逝去されました。ショウジョウバエの生殖細胞の研究で大きな成果をあげられ、また多くのお弟子さんを育てられました。1995-1998年には日本発生生物学会の会長も務められ、学会活動にも貢献されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

一般社団法人日本発生学会 会長 武田洋幸
2021.10.15

卵からはじまる形づくり-発生生物学への誘い-

COVID-19感染拡大に伴い、自宅で過ごされる児童・学生のみなさま、一般の方々が増えていることを鑑み自宅で学習できる教材・素材の公開を、生物科学学会連合が推進しています。
日本発生生物学会では、これに沿って、2017年4月4日から6月11日まで国立科学博物館(東京都・上野)で開催しました企画展「卵からはじまる形づくり-発生生物学への誘い-」の際に作成したパンフレットを公開いたします。
今回、特別に国立科学博物館も許可くださり、PDFでの公開が実現しました。すでに終了した企画展ではありますが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

PDFは、こちらをクリック (33.5MB)
2021.10.04

海外便り№10 杉岡賢史さん(The University of British Columbia)

Department of Zoology, Life Sciences Institute
The University of British Columbia
Assistant Professor, Kenji Sugioka
Lab website; https://www.zoology.ubc.ca/~sugioka/ 
こんにちは!カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)で研究室を主宰している杉岡賢史と申します。私は線虫をモデル生物として、細胞分裂の方向・非対称性・キラリティーなどを研究しています。

研究バックグラウンド:
学部・修士と東大理学部生物化学科の山本正幸先生の研究室で線虫の精子形成に必須なmRNA結合タンパク質DAZ-1について生化学的な研究に関わらせてもらった後、神戸の理化学研究所にある澤斉先生(現遺伝研)の研究室で線虫初期胚細胞の非対称分裂について研究し、学位を取りました。当時の澤研には4人のポスドクの方と最初の大学院生の水本公大さん、テクニシャンの方がいて、毎日研究結果についてラボ内で議論したり、内緒の実験を走らせたり、最高の研究環境でした。その後、細胞生物学的な研究に興味を持つようになり、オレゴン大学のBruce Bowermanのラボで細胞質分裂や中心小体の複製などについて自由に研究させてもらいました。2018年10月からUBCで細胞質分裂に関する仕事を発展させています。

職さがし:
若手の方向けの記事なので、職探し関係で私はこうした、という個人的な体験を失敗談含めて書きます。ポスドク先探しはアメリカの3ラボに応募して西海岸の某所は返信なし、東海岸の某所は面接後断られ、二つ返事で受け入れてくれたのがその数年前に学会で会ったオレゴン大学のBruceでした。応募した頃は論文が出ていなくて、CVも添付せず、応募の文章も「自分はこういう研究をしてこういう独自の計画がある」というのを簡潔に書き連ねただけで、いわゆるダメダメな応募でした。今自分が過去に戻って応募するなら、1)論文が出るタイミングまで待つ(今ならプレプリント)、2)海外大のtemplateを参考にしてちゃんとしたC Vを添付、3)相手先の研究内容に沿った研究プランを送ります。私の所にくるポスドク希望のメールでも、これがまともに出来ている応募ってほぼありません。出来ているだけで少なくとも2週間以内に返信は来るのではないかと思います(私なら絶対に返信します)。返信が来なくても色々な外的要因があるので気にせずどんどん送りましょう。CVのtemplateは海外大の名前とCV, template, などで検索すれば出てきます。UBCので良ければこちらにあります(https://students.ubc.ca/career/career-resources/resumes-cover-letters-curricula-vitae)。

ファカルティーポジションの職探しについては30数件くらい応募しました。公募の趣旨に合致する場合、良い研究プラン、CV、推薦書があればlong list (一次選考)には残るのではないでしょうか。私のメイン論文はUBCで職を得た後に正式に出版されたので、プレプリントが出ていれば見てくれる人は見てくれると思います。面接は慣れが必要なので、例え本命ではなくても練習を兼ねて行った方が良いと思います(結果としてそこが一番良かったということもあると聞きます)。面接の方式なども違うので、多少失敗することは織りこんでいきましょう。その他具体的なアドバイスは他の執筆者の方が書いてらっしゃるのでここでは割愛しますが、面接では長時間1対1で複数の教授と話すことになるので、お菓子をポケットに忍ばせて糖分補給することをおすすめします。私は面接後16時間くらい寝ました(笑)。その後なんだかんだあってUBCに職を得ました。

ラボ立ち上げと研究費:
カナダのスタートアップ研究費は自由に使える校費と政府系の機器グラントに別れています。政府系の機器グラントは応募しなければいけない競争的研究費なのですが、95%くらいの採択率なので実質的にスタートアップの一部として考えられています。欠点としては国と州の審査、及びその後の競争的入札に1年くらいかかるので顕微鏡などを買うのに時間がかかることです。私の場合はこのプロセスに加えてコロナでアメリカとの国境が閉鎖されたおかげで1年半くらい研究に必要なスピニングディスク共焦点顕微鏡が届きませんでした。そのせいもあり、最初の1年半くらいはグラント書きに時間を割きました。カナダの公的研究費は医学系のCIHR(Project grant: 採択率15%, 平均150K CAD/year)、自然科学のNSERC (Discovery grant: 採択率 65%, 平均 38K CAD/year)、社会科学のSSHRC 、分野横断型のNFRFなどがあります。研究費の査読は分野ごとの20人くらいからなるコミッティーで行われるのですが(普段はオタワで、現在はリモート)、査読の実際については査読者にならないと中々わかりません。査読者になるには1回研究費をとって査読者として招待される必要があり、若手は不利になります。そこで最近では若手がオブザーバーとしてコミッティーに参加するプログラムがあり、正式参加はできませんが査読の実態、つまり研究費申請書の勘所を知ることができます。UBCはさらにグラントオフィスが研究費申請書の校正をしてくれるので(日本でいうURA)、語学面やグラント毎の勘所の違いなどについてはサポートしてもらえます。これらの制度を活用しつつ、他の人の通ったグラントを見せてもらう、自分の書いたグラントを近くの人に見せてコメントをもらう、レビュアーのコメントに対応する、レビュアー運が良い、などがあれば獲得確率を上げることができます。そうして獲得した研究費は大体5年単位なので、比較的腰を据えて研究に専念できます。といっても、グラントからは学生全員の給料とその他人件費を払うので、研究に使う分は実際の獲得金額の半分あればいい方かもしれません。

現在のラボ:
顕微鏡の到着の遅れやコロナでのラボ一時閉鎖など色々あって研究は当初の想定より遅れていますが、8月には全員がワクチン接種を終えてラボに活気が出てきています。自分でも未だにふと考えて驚くのですが、澤研の最初の大学院生である水本さんと2番目の大学院生である私は、現所属の同僚で、ラボスペースも隣同士です。洋の東西を問わず生物系ファカルティーポジションの倍率が100倍以上ということを考えると、まさに奇跡ですよね。研究内容が全く違うので昔同様毎日議論とは行きませんが、PIとしてのアドバイスなどもいただけるので大変助かっています。私のラボは4人の大学院生と3人のテクニシャン(うち2人は他ラボとの兼業)、数人の活きのいい学部生で構成されています。新人ばかりなので教えるのは大変ですが、学生の成長を楽しく見守っています。学生には早いうちに適正を見極めてほしいと思います。私は最初の研究分野が生化学・分子生物的なものだったのですが、その中で成功しない限り研究者としての道はないんだと思い込んでいました。博士に進む前に就職するか悩んだのですが、博士課程で自分は顕微鏡を使ったライブイメージングに向いていると気づけたのは幸運でした。研究者には数理的解析、遺伝学、生化学など色々適正があって、良い所を伸ばした方が長続きするし上手になる気がします。そのような適正に関連した動画がiBiologyにあるので学生の方にはオススメです(https://ibiov2.herokuapp.com/catalog/PYSJ/SP/)。私は十数年たった今でも静かな暗室の中でライブイメージングをしながらデータが出てくるのを待つのが一日で一番楽しみな時間です。

最後に:
現在私たちは細胞膜下にあるcell cortexが流動する”cortical flow”による細胞分裂の非対称性、方向、キラリティの制御を研究しています。参加希望の方は私までご連絡ください。ではコロナが収まり皆様に学会等で会えるのを楽しみにしています。
ラボミーティング(黄色枠が筆者)
2021.08.20

倉谷滋のお勧め<まとめ第1弾>

倉谷滋先生お勧めのクラッシック論文を紹介します。

1. Keynes, R. J. & Stern, C. D. (1984). Segmentation in the vertebrate nervous system. Nature 310, 786–789.
実験発生学のスピリットで、脊椎動物のボディプラン形成に肉薄した論文 他にも同様のクラッシック論文は多いけれど、この1本が蹴散らしてしまった感が・・・

2. Kastschenko, N. (1887). Das Schlundspaltengebiet des Hühnchens. Arch. Anat. Physiol. Archives of Anatomy and Physiology 1887, 258-300.
1951年の HHステージ論文とは異なり、ニワトリ胚(種として頭部、咽頭領域)をまるでサメ胚を扱うように解剖した論文。が、ニワトリ胚頭部の形態発生に関して、これを超える記載はまだなされたことはない。挑戦する価値あり。

3. Detwiler, S. R. (1934). An experimental study of spinal nerve segmentation in Amblystoma with reference to the plurisegmental contribution to the brachial plexus. Journal of Experimental Zoology 67, 395-441.
これも古典。神経堤細胞が脊髄神経節を作ることがまだ常識となっていなかった時代、この論文の弱点を考えるのは良い訓練になる。分節的パターニングについての先駆的研究。これなくしてKeynes & Stern (1984)もありえない。

4. Presley, R. & Steel, F. L. D. (1976). On the homology of the alisphenoid. Journal of Anatomy 121, 441–459.
比較発生学のお手本のような論文。非常に勉強になる論文。オススメ。

5. Presley, R. & Steel, F. L. D. (1978). The pterygoid and ectopterygoid in mammals. Anatomy and Embryology 154, 95–110 (1978).
これも比較発生学のお手本のような論文。だが、多少趣味的。

6. Depew, M. J., Lufkin, T. & Rubenstein, J. L. (2002). Specification of Jaw Subdivisions by Dlx Genes. Science 298, 381-385.
Dlxコードの発見を報告した論文。これによって咽頭間葉の位置価がデカルト座標の上で特異化されていると考えられるようになった。

7. Schneider, R. A. & Helms, J. A. (2003). The Cellular and Molecular Origins of Beak Morphology. Science 299, 565-568.
発生システムのモジュラリティについての論文だというと一般化しすぎか。動物種特異的な形態進化が、神経堤細胞系譜に刻印されていることを示した論文。実験発生学の極致。

8. Schneider, R. A. (1999). Neural Crest Can Form Cartilages Normally Derived from Mesoderm during Development of the Avian Head Skeleton. Developmental Biology 208, 441-455.
形態学的相同性と細胞系譜が常には一致しないことを示した、きわめて重要な論文。このコンセプトは、von Baerの「胚葉説」にまで遡る。

9. Romer, A. S. (1972). The Vertebrate as a Dual Animal — Somatic and Visceral. Evolutionary Biology 6, 121-156.
この論文はいまでは誤りだということが分かっている。が、なぜこれが有名だったのか本当に理解されているだろうか。必読!

10. Arendt, D. & Nübler-Jung, K. (1994). Inversion of dorsoventral axis? Nature 371, 26.
脊椎動物と節足動物のボディプランが互いに背腹反転の関係にあることを示した短報。ある意味、エヴォデヴォの本格的な議論はここから始まったと言えるのかもしれない。



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2021.07.20

10年毎の反省 第5回 (2017年)

2021.07.20

10年毎の反省 第4回 (2007年)

2021.07.20

10年毎の反省 第3回 (1998年)