2016.08.23

岡田節人基金 海外派遣助成報告書 池田達郎(京大)

75th SDB with 19th ISD成果報告書

京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 動物学教室
動物発生学研究室 博士後期課程3年
池田 達郎
今回私は、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成をいただきまして、8月4日から8日までアメリカ、ボストンで開催されたSociety for Developmental Biology 75th Annual Meeting with International Society of Differentiation 19th International Conference (75th SDB with 19th ISD)に参加してきました。私にとって今回が人生初の訪米となりました。アメリカは科学研究で世界をリードしてきた国だと思うので、そのアメリカの発生生物学会はどのようなものかと、参加する前から非常にわくわくしていました。また、学位取得後の自身の研究の方向性を考えるうえで役立つヒントを得られればと期待していました。

 ボストンはアメリカで最も歴史のある街の一つですが、高いビル、大きい建物が並び、訪れてみると想像していた以上に都会でした。チャールズ川をはさんだ対岸のケンブリッジ市にはマサチューセッツ工科大学とハーバード大学もあり、この地がアメリカの科学の礎を築いたのかと考えると、非常に感慨深いものがありました。

 今回の合同大会は非常にプログラムの密度が高く、毎日午前7時台から企画が始まり、午後6時ごろまで口頭発表のセッションがおこなわれ、午後8時から11時までポスターセッションがおこなわれました。ぶっ通しで口頭発表を聞いたあとさらにワイン片手に侃々諤々ポスター前で議論するアメリカの研究者たちの姿を見て、そのパワフルさを肌で感じました。

 私はポスター発表で、「ホヤ胚の予定脳細胞においてリプレッサーによる時間的な調節が脊索のプログラムを抑制する」という内容で発表をおこないました。10名程度の方に話を聞いていただけました。ホヤというメジャーでないモデル生物の研究発表でしたが、聞いてくださった方々はほぼ全員が脊椎動物の研究をされていて、異なる生物の研究者の視点から多くの意見をいただけました。特に「このメカニズムは進化的に保存されているのか」という問いが多く、その点に関する他の生物での先行研究の読み込みが甘かったと感じたため、今後は意識して勉強しなければと感じました。
 今回私はポスター賞の選考に応募していたため、2人の審査員の方がポスターに来られたので、研究成果のアピールをしました(残念ながら受賞は逃しました)。その際1人の方に、「大きな夢を語りなさい。君の発見がどう医療など大きなことに貢献するのかをもっと語るんだ」という意見をいただきました。私はこれまで「生物がどう生まれどう生きるのかを徹底的に理解したい」というモチベーションで研究を進めてきました。しかし現象を解明するだけでなく、その研究成果がどのように他人の研究にインパクトを与えるか、世界を変えうるかということを、発表の前に徹底的に考えておくことが、アピールのために重要であるということを認識させられました。

 他の人のポスター発表を聞く際、すでに人が集まって議論が活発になっている所に入っていくのは、英語を最初からフォローするという意味でも大変に感じました。一方で、まだ聴衆が集まっていない人に話しかけると一から丁寧に説明してくれるし、その後会場ですれ違うたびに声をかけてくれました。国際学会のポスター発表で誰かの話を聞きたい場合は、人が集まる前からかじりつくのがコツなのかなと思いました。

 学生、新進気鋭のポスドクおよび若手PI、一度は名前を聞いたことがある超大御所と、様々な人がセッションで話していました。これらアメリカの研究者の発表を聞いていて鮮烈に感じたのは、プレゼンテーションが洗練されていてスマートであることです。スライドが計算されて作られていて、ジェスチャーも上手く、いかに発表の場を大事にしているかが伝わってきました。また話す内容の密度が非常に濃く感じました。これは英語と日本語の言語構造の違いに起因するのかもしれません。私には欧米人の英語のプレゼンテーションを聞き取れない部分がどうしても存在して、このヒアリングの限界を押し上げることはとても大変に感じます。しかし、科学が英語を共通言語におこなわれている以上、英語能力を伸ばすために際限なく努力していかなければならないと、今回の学会で痛感しました。

 75th SDB with 19th ISDに参加して、自身の研究を発表し意見をもらうだけでなく、アメリカの発生生物学の世界の一端に触れ、色々なことを異なった視点から見つめ直すことができました。この経験を生かし、今後の研究者としての自身の将来を模索していこうと思います。最後に、今回の学会参加を援助していただいた日本発生生物学会ならびに関係者の皆様、そして岡田先生に深く感謝いたします。
2016.08.09

岡田節人基金 海外派遣助成報告書 武藤玲子(京大)

岡田節人基金Marine Biological Laboratory (MBL) Summer Course派遣助成を頂き誠にありがとうございます。2016年6月4日から7月17日にアメリカのウッズホールで開催されました、MBL Embryology course: Concepts and Techniques in Modern Developmental Biologyに参加しました。美しい海に囲まれたMBLを思い出すと、まるで夢であったかのようにさえ思います。
 私は名古屋に生まれ、旭川医科大学へ入学し2009年に医師となりました。その後3年間レジデントとして公立陶生病院で研修を行い、さらに3年間腎臓内科医として名古屋大学医学部付属病院と岐阜県立多治見病院で勤務しました。2014年に名古屋大学大学院医学研究科に入学し、発生や進化の考え方から医学を見たら新しいことがみえるのではないかと思うようになり、昨年4月より京都大学大学院理学研究科の高橋淑子研究室でお世話になっています。ニワトリやウズラを用いて始原生殖細胞(Primordial germ cell: PGC)が血管を移動し生殖巣に至る仕組み、PGCの移動に伴って血管のパターン形成が変わる仕組みを研究しています。私は今回のコースに三つの目的をもって参加しました。ひとつは多種多様な生き物の発生プロセスを学ぶこと、二つめは発生学の基本的な手技をもっと身につけること、三つめは国際的な参加者と日頃の研究について思う存分話し合うことです。
 6週間にわたり、月曜から土曜の午前中は講義、それにもとづくディスカッションを行い、午後は夜遅くまでさまざまな生き物を用いて実験を行いました。
 MBLでは毎週金曜の夜にノーベル賞受賞者を含む最先端の研究者がレクチャーをオープンに行い、コース参加者だけでなく、若者からお年寄りまでたくさんの人々がそこに集い楽しんでいるのを目の当たりにし、私が今まで知っているものとは異なる学問の土台を感じました。日曜は海で生き物の採集をしたり、ディレクターのRichard BehringerやAlejandro Sanchez Alvaradoのおうちでパーティーをしたり、ケープコッドでクジラを見たりと、まさによく学びよく遊んだ毎日でした。扱った生き物は、ウニ、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、プラナリア、ニワトリ、マウス、ホヤ、トカゲ、カメレオン、オポッサム、ヒドラ、クマムシ、クラゲ、ナメクジウオ、半策動物、軟体動物、環形動物などです。学んだ手技としては、免疫染色、軟骨染色、神経管やZPAやhypoblastの移植、細胞のアブレーション、エレクトロポレーション、CRISPR、コンフォーカルを用いたイメージング、マイクロCTを用いた形態解析、3Dプリンターを用いた発生モデルや道具の作成などです。
 特にアフリカツメガエルの講義と実習が印象的でした。Richard Harlandは原腸形成過程と分子メカニズムについて黒板に絵を描きながら説明し、さらに胚の扱い方や観察の方法について教えてくれました。John YoungはX. laevisとX. tropicalisのマイクロインジェクションのコツについて教えてくれました。さらにKeller explant/sandwichはこの手技を最初に行ったRay Keller本人より実演がありました。私は免疫を司るprimitive myeloid cellがどのように移動し、創傷に反応するかを観察しました。ステージ14でprimitive myeloid cellは胚の頭側にあるblood islandに集積していることから、頭側のmembrane GFP transgenicと尾側の通常胚をくっつけて観察しました。(Chen et al., 2009; Costa et al., 2008). 細胞移動のパターンは、primitive myeloid cellをラベルしたLurp-1 GFP transgenic においても観察し、タイムラプス画像を作成しました。Asako ShindoとChenbei Changがサポートしてくれました。また、これらの実験の中で、ステージ14で私のまつげを用いて胚を半分に切ると、胚がたとえ尾側だけであっても4日間成長し泳ぐことがわかり、とても驚きました。この尾側だけの胚の神経はどのように分布しているのか疑問に思い、6F11と acetylated tubulinを用いて免疫染色を行いました。これらのデータは、2週間に1回shown and tellというプレゼンテーションをする時間があり、仲間に助けられ英語でまとめ、発表することができました。
 今回のコースに参加し、発生や進化についての知識を深め、クラシカルな手技から最先端の実験方法について学ぶことができました。また世界中から集まった参加者と研究についてだけでなく文化や歴史について話し合うことでより深く相手を理解することができました。当初の三つの目的は達成でき、それ以上のものが得られたと思います。このコースでの経験を自分自身の研究にいかし、また出会った仲間とのつながりをこれからも大切にしていきたいです。このような貴重なコースに参加するチャンスを頂き、いつも応援してくださっている高橋淑子先生、丸山彰一先生、阿形清和先生をはじめ、高橋研のみなさま、日本発生生物学会のみなさま、そして岡田節人先生に心から感謝申し上げます。
2015.10.19

岡田節人基金 海外派遣助成報告書 根岸剛文(NIBB)

今回、岡田節人基金派遣助成のご支援のもと、中国・西安で開催された「2015年アジア太平洋発生生物学会議」に参加しました。初めての中国ということもあり、渡航前は若干不安がありました。実際西安到着後、事前にメールのやり取りで行っていたホテルの予約について行き違いがあり、スムーズに会議参加というわけにはいきませんでした。しかしながら、現地の学生スタッフの方が手厚くサポートしてくださり、特に大きなトラブルに発展することなく、現地にて手続きできました。また滞在したホテルにおいてもスタッフの方も、会話による意思疎通はできませんでしたが、漢字などを使って、親身にお世話してくださり、とても快適に過ごすことができました。出された料理も自分の口に合っており美味しく、朝・昼・晩の食事がとても楽しみでした。特に、会場でお昼ご飯として配られるお弁当が暖めてあったのが、驚きと同時に嬉しかったです。初めての中国でしたが、とても好印象でまた是非訪れたいと思っています。

 会議では、自分の研究テーマである「カタユウレイボヤの表皮細胞における新奇膜構造と細胞分裂」について発表しました。当初はポスター発表のみでしたが、ショートトークに選ばれ、多くの参加者の方に自分の研究について、聞いて頂けました。発表後もいくつか質問や提案を頂き、とても有意義なものになりました。特に最終日には、ホヤを使って研究してみたいという中国人研究者の方とも話すことができました。もし、自分の発表がきっかけとなってホヤを扱う研究者の数が増えることになればとても嬉しいです。

会議全体では、口頭発表される研究者は、ハイインパクトな雑誌に載せている方々が多く、中国の研究の活発さを垣間みました。また、ゼブラフィッシュを用いた研究が多く、発生から病気のモデルまで幅広く利用されていました。会議の中で、最近できた巨大なゼブラフィッシュリソースセンターの紹介も行われ、その発表の中で、世界で報告されるゼブラフィッシュ論文の15%以上が中国所属機関からのものということにとても驚きました。

 ポスター発表の多くは、学生の方達によって行われていました。私が話を聞いた皆さん、とても熱心に上手な英語でそれぞれの研究を紹介していました。途中、聴衆との議論が活発になると、時折中国語が混じってくる等、中国の学生さんと話していると同じ非英語圏の研究する者として、共感できる部分がたくさんありました。

 このように、今回、この会議に出席することで、自分の研究を紹介し、フィードバックを得るだけでなく、様々な貴重な経験をすることができました。また、今回の会議の参加者には2016年に熊本で開かれる日本発生学会に参加を予定されている方もいて、再会するのが楽しみです。このような素晴らしい経験を支援して頂き、岡田先生、そして日本発生生物学会ならびに関係者の皆様に感謝致します。本当にありがとうございました。
2015.06.30

岡田節人基金 海外研究者招聘助成報告書 西田宏記(大阪大学)

2015年6月に筑波で行われた発生生物学会のシンポジウムの演者としてユタ大学からMike Shapiro氏を招聘しました。前会長の阿形さんから、発生学会で動物植物合同のセッションを行いたいとの依頼があり、東京大学の塚谷裕一さんと私でセッション(Topics in plant and animal development:http://www2.jsdb.jp/kaisai/jsdb2015/program-e.php#S05)をオルガナイズすることになりました。動物植物合同のセッションの意図は、植物関係の研究者にももっと発生学会に参加して欲しく、動物研究者にももっと植物のことを知ってもらいたいということです。動物関係の演者は3人としました。雌雄同体のホヤで自家受精が妨げられるしくみを研究しておられる名古屋大学の澤田均さん、ハトの品種多様性の遺伝的背景を研究しておられるMike Shapiroさん、金魚の品種多様性の遺伝的背景を研究しておられる台湾Academia Sinicaの太田欽也さんをお呼びしました。自家受精が妨げられるしくみや品種多様性を選んだのは、植物関係の発生研究者にもなじみやすいと考えたからです。このうちMike Shapiroさんの招聘を岡田節人基金にサポートしていただきました。
 Shapiroさん(http://biologylabs.utah.edu/shapiro/Shapiro_Lab/Index.html)の講演はハトの品種(350品種くらいあるらしい)における変異遺伝子の同定で、例えば、足に羽毛が生える変な品種ではTbx5やPitx1の転写調節領域に変異が起こっているとか、羽毛で首のところに襟ができる品種では、EphB2に変異があり神経堤細胞の移動に異常があることがわかったという話でした。品種多様性の遺伝的背景に関しては、海外では犬やペチュニアなどを用いて研究が進んでいるのですが、日本ではあまりそのようなアプローチは行われていません。日本の若い研究者にこのようなおもしろい研究もあるということを知っていただくという意味でも意義があったと思います。おかげさまで、シンポジウムには200人ほどの方に来ていただき、また、当日のみ参加された植物研究者もおられたようでした。
 岡田節人基金はグローバルな視野に富む研究者の育成を目的として、特に若手の研究者の育成に主眼をおいて岡田先生により設立されたものです。Shapiroさんには懇親会において、日本の若手研究者向けにスピーチをお願いしました。また、ポスター賞授賞式にて受賞者に賞状を渡していただきました。写真はその時のものです。
 以下に、大会後にShapiroさんに書いていただいた、大会参加の印象と若手に向けてのメーセージを添付致します。

Dr. Shapiro氏からのメッセージ

I had the pleasure of attending the Japanese Society of Development Biologists (JSDB) meeting for the first time this year. I am grateful to Hiroki Nishida and Hirokazu Tsukaya for inviting me to the meeting, and for assembling an outstanding symposium on Topics in Plant and Animal Development. I enjoyed the meeting very much, in part because of the excellent science and collegiality, and also because of the hospitality and welcoming spirit I encountered virtually everywhere during my visit. At the meeting itself, I found two things especially notable. First, the creativity of Japanese developmental biologists continues to impress me. I saw many presentations that used non-traditional model organisms to address fundamental topics in development and cell biology. These organisms might not have been the easiest choice (e.g., fewer developmental and genetic tools), but they can offer important new insights that are difficult to glean from more widely used species. In particular, I was inspired by the diversity of marine organisms being studied in Japanese labs, and how some of these organisms were being developed as true experimental systems. Second, I admired the bravery of the rising generation of scientists ? the graduate students and postdocs ? who gave excellent talks in their non-native language. For better or worse, the global scientific community communicates primarily in English, including most of the top journals in our field. For this reason, I am glad to see that the JSDB meeting is held primarily in English. With such creative work being done by some of the youngest investigators, developmental biology in Japan will continue to make key contributions to the field in the future, and training the next generations of scientists to disseminate their research as broadly and effectively as possible should remain a high priority. Finally, I wish to thank the Okada Fund for their generous support that enabled me to attend the meeting.

Mike Shapiro
大阪大学・理学研究科・生物科学専攻 西田宏記
2014.11.28

日本-スペイン合同シンポジウム 参加報告書 萩原奈津美(関西学院大)

関西学院大学大学院
理工学研究科 生命科学専攻
萩原 奈津美
今回、日本発生生物学会の旅費支援をいただき、スペインで行われたSpanish Society for Developmental Biologyと日本発生生物学会の合同大会に参加いたしました。参加を決めた当初は一人での海外渡航と、自らの英語力に大きな不安を抱えていました。実際、現地到着時間が夜中だったために、タクシーでホテルに向かった際、高額な料金を請求され数十分値段を交渉するといったハプニングもありました。その夜は無事に発表して日本に帰れるのだろうかと不安がつのりましたが、せっかくここまで来たのだから、いろんな人との出会いを楽しもう、と自分に言い聞かせ、次の日を迎えました。幸運にも2日目には、以前、他学会の特別企画に参加した際、お世話になった研究者の方と再会することができ、知り合いの人がいるということに張りつめていた緊張の糸がほぐれました。
 そして迎えたポスター発表の日。私は「膜反転に伴って新たな機能を発揮する膜蛋白質が幹細胞分化を誘導する」というテーマで発表を行いました。緊張の面持ちで立っていましたが、はじめはなかなか質問してくれる人が来ず、焦る気持ちもありました。そこで、少しでも足を止めてくれた人がいたら、勇気を出してこちらから声をかけてみることにしました。その結果、専門が異なる方もいらっしゃいましたが、慣れない英語での説明にも関わらず、複数の人に興味を持っていただくことができ、有意義なディスカッションに発展させることができました。
 また、最終日の懇親会では、10名ほどだった日本人発表者の方全員とお話しすることができました。世界の第一線を走る研究者の方や、遠く離れた大学の同じ悩みを抱える博士課程の学生さん達と日本のアカデミック研究の現状といった真面目な話から、もし宇宙人が攻めて来たら研究者として地球防衛軍に参加しよう、というくだけた話まで本当に楽しい時間を共有することができました。国際学会という特別な環境で国内外問わず多くの方に出会えたことが私にとって大きな財産となりました。この経験を通して、たとえ不安や心配があったとしても、まず行動してみることの大切さを身に染みて感じました。今後も出会えた方々とのご縁を大切に、研究者として、人として、精進していこうと思います。
 最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった、日本発生生物学会並びに関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 石橋朋樹(大阪大学)

大阪大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
細胞生物学研究室 博士前期課程1年
石橋朋樹
"なんだか面白そうなことにはひとまず首を突っ込んでみる"という性質ですので,今回,浅虫臨海実験所にて行われる夏季シンポジウムの話を聞いたときには,直ちに参加申し込みをしました. 浅虫の気持ちのよい気候のなか,想像以上の楽しい時間を過ごすことができました.

今回の私の発表では,懇親会で話の種にして頂けるほどに多くのコメントを頂戴しました.頂いたコメントは,今後どのような実験の計画を立て,どのような哲学を持っていくべきかという示唆に富むものであると共に,自分の考察の浅さを実感させるものでもありました.怒涛のごときディスカッションに対して,的確な返答をできなかったことはとても口惜しい思いをしましたが,もっと実験をして考察を重ねて,いつかあっと驚かせる結果を持参してやる,と研究に対しての気持ちを新たにするモチベーションにもなりました.

また,夏季シンポジウムでの口頭発表が,私にとって大学外初の口頭発表でしたので,自分の発表への"批評のストック"を持っていなかった私としては,数多く頂いた鋭いご指摘のすべてが,今後の自分の発表を改善していく良い指針となりました.

単純なディスカッションだけでなく,志の高い参加者の方々や,普段なかなか話すことのできないパネリストの先生方と垣根なく交流できたことも,大変に有意義な経験となりました.発表内容はもちろん,発生学の面白さについて濃厚な議論をさせて頂いたことは,自分自身の現在,将来を見直す良い契機となりました.

最後になりましたが,今回の企画を運営して下さった先生がた,および浅虫臨海実験所の職員の皆さまに心より感謝を申し上げます.シンポジウム最終日に,まだ自分は修士1年だから少なくともあと2回は参加できるな...と皮算用するほどに楽しいシンポジウムでした.本当にありがとうございました.また,参加にあたり,旅費支援を頂きました.こちらも,重ねてお礼申し上げます.
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 守野孔明(筑波大学)

筑波大学大学院 生命環境科学研究科
生物科学専攻(筑波大・院生命環境)
D2 守野孔明
9/1-9/3に東北大学付属の浅虫海洋生物学教育研究センターで行われた夏期シンポジウムに参加してきました。実は前回下田臨海実験センターで行われた時にも参加するかどうかかなり迷ったのですが、どうも敷居が高く、抜き身で切り合う恐ろしい所のようなイメージがあり、参加を見合わせてしまっていました。非モデル生物を使い、発生というより進化色のかなり強い研究している自分が参加していいものか、今回もかなり躊躇いがあったのですが、前回参加者の研究室の先輩やオーガナイザーの方からの強い勧めもあり、思い切って参加してみる事にしました。

不安を抱えての参加でしたが、発表時間が40分と長く、じっくりと背景を説明出来た事もあってか、聴衆の方々としっかり実のある議論が出来たように思います。今までと異なった視点からの意見をたくさんいただき、今後の研究の方向性を考える素晴らしい機会になりました。また、分野がかなり異なる他の参加者やPIの方々の研究に関しても、時間がしっかり確保されていたお陰で、よく理解し議論を交わす事が出来ました。

なにより、今まで交流の少なかった縦横の人の繋がりを持つ事が出来た事が今回の一番の収穫です。オーガナイザーの方々のお陰で、毎晩交流会の準備ができておりましたし、地引き網のようなレクリエーションもあり、研究発表以外の時間も楽しむ事ができました。会場となった浅虫のまわりは景色もよく、何がなくとも来てもいいような場所でした。そういう面でも、青森まで来た甲斐がありました。

次回以降もこのような企画が続いて欲しいと思いますし、参加を迷っている学生の方が居るのであれば、参加する事をお勧めしたいです。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 冨永斉(基生研)

基礎生物学研究所形態形成研究部門
冨永 斉
今回の浅虫でのワークショップでは、研究者同士のよい交流の機会を得ることができたと思う。 研究発表を通して、自分に近い世代の研究者がどのような研究をしているかを知ることができたが、胚の遺伝子発現や、胚操作による機能解析、個々の細胞の挙動に着目したもの、メカノバイオロジーに至るまで、分野は多岐に渡っていた。また、研究手法やアイディアも独創的なものが多く、オリジナリティがあって面白い研究をするための参考になるものばかりで、今後の自分の研究に活かしていきたいと思った。 また、今回のワークショップは質疑応答の時間が長めに取られていたので、ディスカッションを通してそれぞれの研究を深く知ることができた。

自分の研究発表に対しても、問題点の指摘や、これからの研究の方針に関するアドバイスなど、有意義な意見を数多く得ることができ、研究の方針を見直す良い契機が得られたのではないかと思う。今回得られたこれらの意見を、今後の研究を考える上で参考にしていきたいと考えている。 懇親会でも、パネリストの先生方や他の発表者と、お互いの研究発表や、これからの研究などについて、発表後の質疑応答ではできなかったような、より詳しい意見交換をすることができた。このような議論を通して、多様な研究分野を持つ学生や若手研究者同士の知り合いと交流を深めることができたので、今後ともディスカッション等を通して交流を深めていけたらと思う。

会場は、海に近い場所で、景色もよく、今回の様な小規模なワークショップを開くには良い場所だと思った。最終日の地引網実習では、種同定の作業を通して、普段関わることのない分類学の世界にも触れることができた。また浅虫の海から、自然界に生息する動物の多様性を再確認することができ、改めて生物学の面白さと、これからの発展性を感じた。
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 大沼耕平(首都大学東京)

今回参加した夏季ワークショップには、パネリスト・ポスドクから修士課程の学生まで、研究材料やテーマが異なる幅広い年代の研究者が集まった。そういう人たちと議論・交流することは、普段中々できないので、非常に有意義であった。また、研究の考え方や発表の仕方など反省点・改善点が見えてきたので、来て良かったと感じた。研究とは離れるが、地引網体験や採った魚の種同定は初めての経験だったので、新鮮で楽しかった。全体を通して、刺激的なワークショップであったと思う。

シンポジウムでは、質疑応答の時間が約20分あり、普段の学会よりも長かった。そのため、自分と他の人の発表の両方で、いつもより長く様々な質問に触れることができた。その中で、自分も思いついた質問もあれば、思いつかなかったものもあった。自分が思いつかなかった質問を聞くことができ、こういう考えもあるのだと勉強になった。同時に自分の勉強不足を感じたので、改善していきたい。

また今回思いがけず、どうすればわかりやすく自分の発表を伝えられるかを学ぶことができた。シンポジウムで様々な発表を見聞きし、どういう発表がいいか、悪いかを比較して判断することができた。プレゼンテーションの優秀賞をとった方々の発表は、とても参考になり、良いところを真似していきたい。

地引網で魚を採った後、その種の同定を試みた。同定は、魚をよく観察してその形態の特徴を同定本に書かれているものと照らし合わせて行った。普段慣れていないせいか、観察で魚の特徴を捉えるのが中々難しく、何回か種を間違ってしまった。体験ということで行われた地引網・魚の種同定だったが、ただの体験に留まらず、よく観察することの大事さを改めて感じる良い機会となった。「よく観る」ことは、研究の遂行・発展に大事なので、今回の体験をきっかけに、そのスキルを伸ばしていきたい。

 今回のワークショップから色々学ぶことができ、参加して良かったと感じている。ここでの経験を今後の研究に活かしたい。
首都大学東京 理工学研究科 生命科学専攻 
発生プログラム研究室
大沼耕平
2014.10.27

夏季WS2014 参加報告書 亀水千鶴(基生研)

基礎生物学研究所 初期発生研究
総合研究大学院大学 博士後期課程 2年 
亀水 千鶴
夏季ワークショップ参加にあたって、旅費を支援していただきとても感謝しています。

はじめ、青森で開催ということで金銭的、距離的な問題もあり参加しようか迷いましたが、先生方や同世代の学生と短い期間でしたが濃密な時間を過ごすことができ、本当に参加してよかったと思っています。

 昨年から新たな研究課題に取り組んで1年たち、ちょうど結果も出始め不安と緊張の中参加をしました。発表がはじまると、みんな堂々と発表をして、先生方からの厳しい質問にもしっかりと答えており、同世代の学生なのにすごいなと感心しました。
自分の発表になるとやはりものすごく緊張しましたが、なんとか発表を終えることができました。しかし先生方からの質問に対してはうまく答えられない点がいくつかありました。
発表を通して自分のまだまだ甘い点がわかったこと。自分では考えていなかった点への指摘を受けてさらに検証すべき点がわかりました。今回は学生だけではなく、先生方の講演もありました。すごい先生方のおもしろい話や教訓的な話を聞けて良い経験になりました。

始めの頃はほとんど会話がありませんでしたが、会が進むにつれて学生や先生方とも話せるようになり、自分の研究や相手の研究、日頃の悩み等について夜遅くまではなせるようになりました。2日目の夜には、外でバーベキューをしながらお酒をのみ、青森のおいしいホタテを食べながら、先生や学生とさらに親睦を深めることができました。

 今回シンポジウムに参加することで、刺激を受けて色々なことを考えるきっかけになり、さらに研究をがんばろうという気持ちになれました。このようなシンポジウムがこれからも続いていけばいいなと思いました。