○中林 潤 佐々木 晃 巌佐 庸
九大、院理、生物、発生生物学
発生過程において細胞は周囲からのシグナルによって、その運命を決定する。細胞は細胞膜に より外部の環境から隔てられているが、周囲の細胞からのシグナルは、細胞膜に存在する受容体で感知され 、その情報が特異的な細胞内情報伝達経路によって核内へと伝えられる。細胞内の情報伝達機構には様々な 様式のものが存在する。その中にはMAPK経路のように、タンパク質の化学的変化が連鎖的に起こることによ って情報が伝達されるものがある。一方、細胞内情報伝達経路の中にはよりシンプルなものもある。例えばSM AD経路においては転写因子であるSMADタンパクが直接レセプターによりリン酸化される。この経路では階層 的な化学反応の連鎖は見られない。連鎖反応によって構成される情報伝達経路は、一つの刺激に対して複数 の酵素を準備しておかなければならず、一見より冗長で複雑なシステムに見える。細胞内情報伝達に関与す る遺伝子が次々に単離され、分子生物学的に機能の解明が進んでいる。現存する細胞が備えているシステム は、よりプリミティブな機構から複雑な機構へと進化の過程で変化してきたと考えられる。システムの構成が変 化することにより系全体の振る舞いがどのように変化するかについてはの研究は未だに少ない。今回我々は 、階層的な化学変化の連鎖によって構成される細胞内情報伝達機構の数理学的モデルを構築した。このモデ ルを解析することにより、階層的な連鎖反応が発達するときの条件について検討することができた。このモデ ルにおいて、細胞内情報伝達の速度はシグナル分子と細胞内の酵素濃度をパラメータに持つ関数として表現 され、これらのパラメータが満たす条件によって、連鎖的な反応の階層が発達していくかどうかが解析できる。 ポスターではまずモデルの詳細について説明し、階層的な連鎖反応から構成される細胞内情報伝達機構の発 達する条件についてについて検討する。
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