○安井 金也1 池永 薫1 Guorong Li1 相沢 慎一2 Peijun Zhang3
熊大・発医研セ・系統発生1,理研神戸・発生再生研・ボディプラン2,中 国科学院・海洋研・開放実験室3
頭索動物ナメクジウオ類は脊椎動物に似た解剖学的特徴を示す。しかし、体の前方部では、この 動物独自の形質が目立つ。この特異性は原腸胚から認められ、脊椎動物には無い原腸前端部でのbmp2/4 の発現が明らかにされている。今回は、BMP2/4シグナルが機能している可能性を確かめるために、その 細胞内因子であるリン酸化Smad1(P- Smad1)を免疫組織学的に確認した。また、若い原腸の発生学的役割を知るために、前期原腸胚の原腸切除実 験を行い、その後の発生を遺伝子マーカーで調べた。P- Smad1は前期原腸胚の原口縁内面で核内に認められ、発生とともに原腸前端の核内分布が強くなった。これ はbmp2/4の発現と同所的であり、同所的分布は少なくとも中期神経胚まで認められた。この結果は、ナ メクジウオBMP2/4が原腸前端で機能することを示唆する。原腸を切除された前期原腸胚は再度、原腸陥入様 の発生動態を示した。処理胚を中期原腸胚状と初期幼生の各ステージで固定し、前者でbrachyury(b r), wnt8, goosecoid(gsc), otxの発現パターンを調べ、後者ではptx (Pitx)の発現および連続セクションによる組織・形態学的観察を行った。後方ではgscの発現によ り背側の分化が明らかになり、陥入した原腸では前端までbr, wnt8が発現し、otxの発現が消失した。原腸摘出個体では、原腸前端領域が消失したことを示唆す る。初期幼生に対応する処理個体では、脊索は前端まで伸長するが、前端ではその位置が背腹の中央か、や や腹側を占めた。また、脊索の周囲には神経組織が拡大して、一部嚢胞状の構造が認められた。形態的には 背腹軸が不明である。それより後方では、内胚葉組織が萎縮し、神経索・脊索が拡大した。処理胚ではptxの発現が失われることから、初期原腸の切除により、左側の属性が失われると考えられる。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.