○岡山 文 佐川 和徳 志賀 靖弘 山形 秀夫
東薬大・生命
ミジンコの属する甲殻類では種によって体節数や付属肢の形態や数が大きく異なっており、付属 肢形態の多様性が甲殻類生物の進化過程においてどのように生じてきたのかは非常に興味深い。付属肢の 遠近軸形成にはDistal- less(Dll)遺伝子の発現が必須である。中期胚のミジンコ胸脚原基ではdecapentaplegic(dpp)は前後 軸に垂直に原基と原基の境界に沿って、wingless(wg)は原基の前部区画で中央部分を直線状に、DLL は胸脚原基の内側と外側の2ケ所で発現している。この原基両端でのDLLの発現誘導はdppとwgの発現が重なった領域におけるもので、ショウジョウバエと同じモデルで説明できる。しかし発生が進むと胸 脚原基中央部でのwgの発現の一部が消失し点線状となり、消失した領域を埋め合わすように後部区画 でDLLが発現し、その領域が伸長することによって中間肢が形成される。この部分ではdppは発現して いないにも関わらず、dppを含むTGF-β/BMPファミリー(TGF- β)に属するタンパク質のシグナル下流で機能する活性化型のMadタンパク質(p- MAD)が存在していた。このことはミジンコ中間肢形成におけるDLL誘導にはdpp以外のTGF- βに属する遺伝子が関与していることを強く示唆する。本研究ではdppと同じくTGF-βの一つgrass bottom boat(gbb/60A)に着目しwhole mount in situ hybridization及び免疫染色によりgbbの発現領域を解析した。その結果、発生中期の胸脚原基における gbb発現は、後部区画全体で認められ、後期になると伸長する各肢の先端へ収束することが明らかに なった。これらの発現領域はDLL及びp- MADの発現誘導パターンと大きく重なっていることから『ミジンコ中間肢形成においてはwg発現が分断 される部分近傍のgbbの発現領域内でDLLが誘導される』という可能性が示唆された。
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