○森 元 上村 伊佐緒
都立大・院理・生物
血液を輸送するポンプとしての心臓が胚発生のどの時点から機能しだすかについて、研究はこれ まであまり多くない。 心臓の活動状態を示す指標として普通に用いられる拍動数が胚心臓機能発現としての血流発生や循環の状 況変化を確実に反映するか、についての検討は必ずしも充分ではない。 胚心臓の機能的発達を循環という面から解明するための材料として、胚と卵黄とが透明で心臓血管系の活動 をリアルタイムで容易に観察できるメダカが選ばれた。 メダカ胚循環に対する卵黄静脈の関与を考慮し, 一つ一つの卵について胚心臓血管系と卵黄静脈の活動をビデオカメラで連続的に記録、必要に応じて静止画 像に変換し解析した。 メダカの卵黄静脈は胚胴部に分布する血管と心臓とを接続する2本の胚体側卵黄静脈、胚尾部に分布する血 管と心臓とを接続する1本の胚頭側卵黄静脈、に分類できる。 メダカ胚循環の開始は、拍動開始後に心臓壁から離脱した数個の細胞が心臓から胚血管系を経て胚体側卵黄 静脈を輸送されて心臓へ戻ることで確認される。 続いて胚尾部の血管から放出された大量の血球が胚頭側卵黄静脈を輸送されて心臓に入り、そこから放出さ れた後血管系を経て胚体側卵黄静脈、または胚頭側卵黄静脈のいずれかを経由して再び心臓へ戻ってくる;こ れで胚全域にわたる循環が成立する。 偶発的に発生した卵黄静脈欠損メダ卵の場合、胚心臓は正常に形成、拍動も連続的でさらに心内腔で少数の 細胞が往復運動を行っていたが、血球の放出はなく循環が成立しなかった。 この観察例も併せ考えると、メダカ胚循環の開始と成立には卵黄静脈の存在が不可欠と考えてよい。 ゼブラフィッシュでは胚循環の起こらない突然変異が知られているが、これの卵黄静脈について報告はない。 しかし、胚循環の開始と成立とを総合的に理解するには、卵黄静脈の構造が限定されているメダカの方が適 当な材料と考える。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.