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マボヤ幼生の脳誘導に関する研究


赤沼 啓志  西田 宏記

東工大・生命理工・生体システム


ホヤ幼生の脳は体幹部の背側に位置し、前側の中枢神経系を構成している。脳の内部には平衡 器や眼点などの感覚器、神経細胞が集中して存在しており、文字通り神経系の中核を担っている。今回、我々 はこの脳の形成に注目した。ホヤ幼生の脳は動物半球前側のa系列の割球に由来する。この系列の細胞は単 独では表皮を形成するが、植物半球の割球との相互作用により、神経の運命を獲得することがわかっている。 しかし、脳系列の細胞が神経への自律的な分化能を獲得する時期については未だ不明のままである。そこで 、ホヤ幼生の脳の形成機構を理解するうえで重要となる自律的分化能の獲得時期を特定するため、脳の運命 を含む割球由来の単離胚における神経マーカー遺伝子(Hroth, HrETR-1, HrTBB2, β-arrestin)、および表皮マーカー遺伝子(HrEpiC)の発現をin situ hybridization法を用いて調べた。割球単離は動物半球と植物半球とに割球が分かれる8細胞期から、神経誘導 が完了していると考えられている110細胞期まで行った。その結果、32細胞期以降の予定脳割球由来の単離胚 で、神経マーカー遺伝子の発現が観察された。また、表皮マーカー遺伝子は64細胞期以降の単離胚で発現が 減少した。したがって、神経(脳)誘導は32細胞期頃に始まると考えられる。この時期は、すでに報告されている 神経マーカー遺伝子Hrothの発現開始時期や神経誘導を抑えるMEK阻害剤の感受性時期とも一致する 。さらに、表皮の形成を抑えるためには64細胞期までの相互作用が必要であることが示唆された。また、110細 胞期以降にも神経形成を維持、または促進する作用が働いている可能性が示された。つまり、ホヤ幼生の脳 誘導は胚発生過程において漸進的に行われていると推測された。


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