○一條 裕之1 前田 信明2
筑波大・基礎医・解剖学1,東京都神経研・分子発生生物学2
網膜神経節細胞の軸索は間脳の軟膜直下を伸長し、視蓋へ投射するが、前方にある終脳へは侵 入しない。これまでに網膜神経節細胞の軸索路形成に及ぼす終脳の役割を検討した。ニワトリ胚の網膜組織 片を終脳細胞と共培養すると網膜軸索の伸長は終脳細胞の突起が作る細胞性基質によって選択的に抑制さ れた。さらに終脳細胞条件づけ培地に含まれる因子が網膜軸索伸長を選択的に抑制し、同様の効果が終脳由 来の膜表在性分子の分画に観察された。この軸索伸長抑制活性はchondroitinase ABCによって完全に破壊されたので、終脳由来の分泌型 chondroitin sulfate proteoglycans (CSPGs)の糖鎖、chondrotin sulfate glycosaminoglycans (CS-GAGs)によると考えられた。終脳由来CS- GAGsの網膜軸索路形成における役割を調べるために、chondrotinase ABCを胚の側脳室に注入し、内在性のCS- GAGsを広く破壊した。網膜軸索は間脳の表面を扇状に拡がって後背側に伸長するが、chondrotinase ABC処理胚においては網膜軸索路が前方に拡大した。終脳由来拡散性CS- GAGsは網膜神経節細胞の軸索伸長を抑制し、終脳へ侵入することを妨げ、軸索路形成に寄与すると考えられ た。本研究ではCS- GAGsタイプの終脳への網膜軸索の侵入阻止における役割を議論する。第一に軸索路形成期胚においてCS- GAGs各タイプの分布を免疫組織化学的に検討している。CS- GAGsにはAからEの5種類の構造が区別され、E7胚の中枢神経系でCS-Aは一様に分布し、CS- Cは殆ど観察されなかったが、CS-Dは終脳間脳境界部に帯状に分布した。第二に外来性のCS- GAGs各タイプが網膜軸索伸長に及ぼす影響を培養実験下で検討している。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.