○梅嶋 宏樹 河路 光介 平野 丈夫 見学 美根子
京大・院理・生物物理,CREST
脊椎動物の脳の複雑な細胞構築は、発生中のニューロンの正確な移動メカニズムによって形成 されている。脊椎動物の小脳皮質は分子層、プルキンエ細胞層、顆粒層の3つの層から成る。小脳層構造の 形成過程において、顆粒層を形成している小脳顆粒細胞は異なった2相性の移動を行う。軟膜直下で最終分 裂を終えた顆粒細胞は、まず層構造に対して接線方向に双極性の突起を伸ばし、一方を先導突起として移動 する(接線移動)。その後、双極性の突起に直交した第3の突起を小脳内層に向けて伸ばし、その突起を新たな 先導突起として、前述の接線移動に対して90°回転した移動を行う(放射移動)。放射移動はプルキンエ細胞 層直下まで行われ、そこで顆粒細胞は顆粒層を形成する。生後数日のマウス小脳微小片培養系において、顆 粒細胞は方向軸を規定する周囲の環境が無い状態でもこの2相性の移動を行う。我々はこの系を用いて、顆粒 細胞の移動に関する内在的なメカニズムの解明を試みた。これまで、接線移動の際に形成される先導突起は 顆粒細胞の軸索に分化することがわかっていたが、放射移動の際の先導突起が何になるかは明らかではなか った。GFPを強制発現させた顆粒細胞の形態観察から、この突起が樹状突起様の性質を有し、将来において 樹状突起へと分化することが明らかになった。また、タイムラプス共焦点顕微鏡を用いて接線移動と放射移動 の移動様式を長時間、経時的に観察した結果、これらの移動が各々異なるダイナミクスにより駆動されること がわかった。以上の結果から、顆粒細胞の接線移動と放射移動が性質の異なる先導突起に導かれ、少なくとも 一部異なる分子メカニズムにより制御されることが示唆された。
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