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大脳皮質抑制性ニューロンにプログラムされた長い移動期間と遅い軸索形成


林 謙介  平井 里香

群馬大・生体調節研・細胞構造


大脳皮質の発生過程で興奮性ニューロンと抑制性ニューロンは、移動性、突起の形成様式など において著しく異なる行動を取る。それぞれのニューロンに細胞外から作用して発生行動を制御する因子が数 多く同定されているが、両者のニューロンが自律的に持つ運動性を比較した研究はない。そこでこれを比較す るため、胎生ラット大脳皮質の細胞を無血清低密度培養してその行動を観察した。培養直後にどちらの細胞も 複数の突起を形成し、そのうちの1本が伸長を続けて軸索マーカーで陽性になった。ほとんど(88%)の興奮性 ニューロンでは3日以内に軸索が発生したが、抑制性ニューロンは3日目に8%、6日経っても半分ほど(55%) しか軸索を形成しなかった。軸索形成前の抑制性ニューロンは移動細胞に特徴的な双極性の形態をとり、2本 の突起の先端に交互に成長円錐が発生していた。ポリリジン処理基質上であるにも関わらず、発生した成長 円錐に向かって核が移動する場面が見られた。自由に細胞を移動させるためニューロンをグリア細胞上に培 養すると、抑制性ニューロンは興奮性ニューロンよりも活発に移動した。突起と細胞内小器官との力学的な関 係の違いが両ニューロンの移動能の差を生みだしていると考えらたため、核と中心体の動きを観察した。興奮 性ニューロンでは伸び出した軸索と中心体の位置は無関係であったが、抑制性ニューロンでは成長円錐をも つ突起の方向へ中心体が引き寄せられる現象が見られた。以上のことから、抑制性ニューロンの細胞発生過 程には数日間にわたる移動のステップがプログラムされており、その間軸索の形成が遅れること、また、興奮 性ニューロンとは細胞骨格系に違いがあることが示唆された。


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