[2P064]

神経堤細胞の形成過程におけるSlug遺伝子の発現制御メカニズム


酒井 大輔1,3  遠藤 幸徳2  大隅 典子2  若松 義雄1,3

東北大・院医・器官構築1,東北大・院医・形態形成解析2,PRESTO・JST 3


表皮外胚葉と神経板との境界部に生じる神経堤細胞は、胚体内の様々な領域に移動し、多くの 異なる細胞種、例えば末梢神経系のニューロンやグリア、色素細胞、また頭部では間葉系組織へと分化する。 このような神経堤細胞が持つ移動能と多分化能という特徴から、神経堤細胞は「第4の胚葉」とも呼ばれる。 本研究では、神経堤細胞の形成メカニズムを解明する目的で、神経堤細胞特異的に発現し、神経堤の形成や 移動に重要であるSlug遺伝子の転写制御機構の解析をおこなった。まず、Slug遺伝子を含むゲ ノム断片を単離し、Slug上流領域の塩基配列を決定した。Slugの上流にはLEF/TCFとSmadの結 合配列モチーフが存在していた。これら結合配列を含む領域を用いてルシフェラーゼアッセイをおこない、Sl ug上流領域による転写がWntおよびBMPシグナルにより活性化されることが示された。このSlugの 上流領域とEGFPをつないだレポーター遺伝子を電気穿孔法によりウズラ胚に導入したところ、EGFPの発現 は神経堤特異的ではなく、神経堤を含む胚の広範囲で確認された。同様にBMPシグナルが広範囲に活性化さ れていることが抗リン酸化Smad1抗体を用いた免疫染色によって示された。一方、複数のLEF/TCF結合配列を EGFPの上流に持つレポーター遺伝子をウズラ胚に導入し、胚におけるWntシグナルの活性化領域を検出した ところ、神経堤が誘導される時期に頭部神経褶でのWnt- LEF/TCFシグナルの活性化は検出されなかった。また、頭部神経板の外植体に対してBMP4を作用させた場 合にはSlugの発現が誘導されたが、Wnt6や活性化型β- cateninを導入した場合にはSlugの発現は誘導されなかった。これらの結果から、頭部神経堤の誘導に はWntよりもBMPシグナルが中心的な役割を果たしていると考えられた。


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