○加藤 史子 青山 裕彦
広島大・院・医歯薬・解剖学および発生生物学
肋骨の形態形成は、それが胸部を特徴づけるという点で、脊椎動物中軸骨格の部域化機構研究 の良いモデル系といえる。椎骨や肋骨の原基である体節は椎板と皮筋板とに分化するが、我々は、ニワトリ- ウズラ移植実験から、遠位肋骨原基が皮筋板そのものあるいはそれに非常に近接した組織であることを示し た(Kato&Aoyama、1998)。ところがHuangら(2000)は、同様の実験の結果、椎板は肋骨を、皮筋板は肋間筋の みを生み出した、と報告した。肋骨の由来に関する相反する結果を検討した結果、我々は、遠位肋骨の原基は 皮筋板と椎板の移行部付近に存在し、操作の違いがこの部分を移植皮筋板に含めたり含めなかったりしたた めに結果に矛盾が生じたのではないかと考えた。 32体節期前後のニワトリ胚で、椎板との移行部を含まないようその辺縁部を胚に残して皮筋板を除去した場合 には肋骨・肋間筋ともに欠損は見られなかった。移行部を含んだ皮筋板を除去した場合には肋骨および体壁 筋が欠損した。辺縁部を取り除いたウズラ胚皮筋板をニワトリ胚へ移植すると、移植皮筋板は肋間筋のみを形 成し、肋骨は宿主細胞からのみ形成された。Huangらの実験もこのようなものであったと推測される。以上のこ とから遠位肋骨原基は皮筋板辺縁部から椎板にかけて存在することがわかった。 Huangらは、移植した椎板が肋骨を形成したことから、椎板を肋骨の原基としたが、この結果は必ずしも、移植 した椎板と同等のものが正常発生における肋骨原基であることを意味しない。我々は、椎体を作るはずの内 側椎板でも皮筋板直下に移植すると肋骨を形成し、このとき、この移植椎板のPax1の発現パターンは、それ本 来のものではなく、移植された場所に応じて変化することを見た。肋骨原基は仮に椎板であるとしても皮筋板 辺縁の直下にあって、その周囲組織の影響下で肋骨原基になったものなのである。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.