○白土 治己1 久保田 美佐江1 豊田 雅士2 竹内 隆1
三菱化学生命研1,国立成育医療センタ-2
個体の正常な形態形成には、発生過程における細胞増殖の亢進・抑制の精緻な調節がなされて
いる。しかし、このような増殖制御機構の詳細はほとんど明らかにされていない。
jumonji(jmj)遺伝子はjmjファミリーに属し、ARIDおよびZn-
fingerタイプの2つのDNA結合ドメインを有する転写因子で、様々な組織で増殖抑制・停止期に発現が見られる
。jmj変異体マウス胚の心室では心筋細胞の異常な増殖が認められ、細胞周期のG1期の進行を促すサ
イクリンD1遺伝子の発現が亢進していた。逆に、jmj強制発現マウス胚の心室では、サイクリンD1の発
現が抑制された。また、株細胞を用いたルシフェラーゼアッセイの解析により、jmjがサイクリンD1遺伝
子のプロモーター活性を強く抑制することが判明した。これらの結果から、心筋の増殖抑制に寄与するjmj-
サイクリンD1カスケードの存在が示唆されたが、このカスケードが両者の直接的な相互作用により機能するも
のなのかについては明らかでなかった。今回この疑問に答えるために、Jmj蛋白が サイクリンD1
プロモーターに結合するか否か、また、Jmj蛋白内に転写抑制ドメインが有るか無いかについて検討した。
その結果、クロマチン免疫沈降 (ChIP) 法
により、Jmj蛋白が細胞内でサイクリンD1プロモーターに結合することが明らかとなった。哺乳類ワンハイブリ
ッド法を用いた解析から、Jmj蛋白のN末側に転写抑制ドメインが存在することを見出した。これらの結果から、
Jmj蛋白はサイクリンD1の転写を直接抑制することによって細胞周期をコントロールし、発生過程における心
筋細胞の増殖抑制を行うと考えられる。
現在、Jmj蛋白が認識するDNAモチーフ配列の同定および、部分欠失させた蛋白を用いた解析を行い、jmj-サイクリン D1カスケードの転写抑制機構のより詳細な理解を目指している。
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