[2P008]

Wntとβcatenin による細胞極性と非対称分裂の制御


竹下 久子1  澤 斉1,2

理研・CDB・細胞運命1,神戸大・院自然科学・生命科学2


非対称分裂は、生物の発生において細胞の多様性を生み出す基本的な機構である。C.elegan sにおいて尻尾にあるT細胞などの非対称分裂は、lin-44/wnt lin- 17/frizzledによって制御 されている。LIN- 44は、T細胞よりも後方で発現している。そのことから、T細胞のLIN- 44シグナルを受けた側(後側)でのみ受容体 LIN- 17が活性化され、細胞内に極性が生み出され、細胞が非対称に分裂するというモデルが提唱されている。今 回我々は、このモデルを検証するために、異所的に LIN- 44を発現させ、非対称分裂に対する効果を調べた。
T細胞の非対称分裂では、野生型では前側の娘細胞からは表皮系細胞が作られ、後側からは神経系細胞が作 られる。しかし、lin- 44変異体では野生型とは逆に、前側の娘細胞からは神経系細胞が作られ、後側からは表皮系細胞が多く 作られる(この機構は不明)。つまり、野生型に対して分裂の極性が逆転した表現型を示すものが多い(約80 %)。lin-44変異体においてT細胞の前側で lin-44 を発現させた。その結果、分裂の極性がほとんど逆転した(97%)。さらに、野生型においてもlin- 44をT細胞の前側で発現させた場合、極性の逆転が14%観察された。このことから、LIN-44 シグナルの向きにより細胞内の極性が決定されることが明らかになった。
LIN- 17/Frizzledの下流にはPOP- 1/TCFが関与していることが示されているがβcateninの関与は明らかではなかった。われわれは、wrm- 1/βcateninの変異体でlin- 17変異体と同様、T細胞の非対称分裂に異常があることを明らかにした。βcateninを介したcanonicalなWn tシグナル経路によって細胞極性が制御されていると考えられる。


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