○荒木 芳規 清水 英樹 石田 賢太郎 漆原 秀子
筑波大・生物
細胞性粘菌Dictyostelium discoideumはバクテリアを餌として2分裂で増殖するが、周囲の環境条件によって2つの異なる発生過程が誘 導される。無性的発生過程では、飢餓を引き金として細胞が集合し、胞子と柄細胞からなる子実体を形成する 。有性的発生過程では、水分過剰の暗条件下で性的に成熟して相補的な細胞と融合し、最終的にマクロシスト と呼ばれる休眠構造体を形成する。このマクロシスト形成過程は、有性生殖における配偶子形成および細胞 間相互作用を解明するための優れたモデル系である。我々は以前にマクロシストを形成できない挿入突然変 異体を単離し、その原因遺伝子候補としてmacAと名付けた遺伝子について報告した。macA産物(MacAタンパ ク)は約2000アミノ酸からなり、両末端に疎水性領域を持つことから細胞膜に局在すると予測されている。また 、妊娠関連タンパク質(PAPP)や、IIa型Usher症候群の原因タンパク質に見られる機能未知のドメイン、LamGL をもっている。本研究では、macAが実際に細胞融合に関わっていることを示すためにいくつかの変異株を作 製した。まず、一連の相同性組換えによって、macA遺伝子の様々な部分を欠失させた。いずれの欠損株でも マクロシスト形成能が失われたことから、隣接して存在している遺伝子が変異の原因遺伝子である可能性は 排除された。次に、macA遺伝子を完全に欠失した破壊株を作製し、その破壊株にmacAの完全長cDNAを導入 して過剰発現させた。その結果、破壊株で失われていたマクロシスト形成能が回復した。以上により、macAは D. discoideumの有性生殖に必須な役割を果たしていることが明らかとなった。しかし、意外にも過剰発現株で細 胞融合能の欠失は完全に回復しなかった。そこで、現在、この原因の解明と、MacAタンパクの解析に向けての 準備を行なっている。
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