永友 寛一郎 ○藤原 滋樹
高知大・理・物質
レチノイン酸は, 中枢神経系の前後軸に沿った分化や鰓裂の形成などの脊索動物(脊椎動物とナメクジウ オ, ホヤ)特有の形質, また神経冠細胞の分化や四肢の形成などといった脊椎動物特有の(ホヤやナメクジウオに はない)形質の発現に影響を与える.レチノイン酸受容体(RAR)やレチノイン酸合 成酵素(Raldh2), レチノイン酸分解酵素(Cyp26)などのノックアウト, ビタミン A 欠損動物などの研究から, 内在性のレチノイン酸がこれらの過程に関わっていることが示されている. 我々は, カタユウレイボヤにおいて RAR, Raldh2, Cyp26 などの cDNA を同定し, 正常胚やレチノイン酸処理胚における発現を調べた.これらの遺伝子のいずれもが, 脊索動物以外からは見つかっていないので, レチノイン酸合成経路とシグナル伝達経路の獲得が脊索動物の, そして脊椎動物の進化の鍵を握っていると考えられる.特に, Raldh2 と Cyp26 の発現パターンは脊椎動物のものとよく似ており, 脊索動物のボディープランは, その進化の始まりからレチノイン酸によって制御されていたことを伺わせる. RAR 遺伝子の獲得が脊索動物の進化のきっかけであると考えるならば, RAR が標的遺伝子のレパートリーを増やしていく過程が原索動物から脊椎動物への形態進化と 関連しているかどうかも興味深い問題である.我々は, マイクロアレイ解析による標的遺伝子の大規模スクリーニング(本大会・石橋らの発表)の 一方で, 脊椎動物においてレチノイン酸の機能に関連することが知られている発生制御遺伝子に ついても, 正常胚とレチノイン酸処理胚における発現パターンを調べた.今回は, 標的遺伝子の発現パターンとレチノイン酸による影響を脊椎動物のものと比較し、脊索動 物の進化と関連づけて議論したい。
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